国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

異形・異相の訪問者

(3)「メンドン」は天下御免 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年6月22日刊行

笹原亮二(国立民族学博物館教授)


硫黄島の見物人とメンドン=鹿児島県三島村の硫黄島で2010年、筆者撮影

鹿児島県三島村の硫黄島では、旧暦8月の熊野神社の祭りに「メンドン」が現れる。祭りで恒例の「八朔太鼓踊り」が始まりしばらくすると、渦巻き模様の大きな耳、格子縞の大きな鼻、瓢箪型の目、球形の頬、眉間の一本角の異相で萱の蓑を着たメンドンが続々と現れる。

この日メンドンは「天下御免」で何をしても許される。踊りを邪魔したり、見物席を土足で歩き回ったり、木の枝で見物人を叩いたり、したい放題である。となると、異形・異相の訪問者にありがちな子供たちの受難が想起されるが、ここでは様子が少々異なる。メンドンには男の子も扮し、学校の先生を見つけると、教室の仕返しとばかりに木の枝で勢いよく叩く。天下御免にふるまう男の子は、受難を与える側である。

受難なのは女性たち。メンドンに覆い被さられたり、追い回されたり、抱きかかえられたりする。かつてメンドンは、祭りの間は四六時中集落内を暴れ回り、若い女性は踊りを見にいくこともできなかったという。

メンドンに絡まれる先生も女性たちもたまったものではないだろうが、絡まれるのが厄払いになるといわれると無碍に抗えない。そんなメンドンをそのまま許容し受容する感覚は、メンドンとともに長年暮らしてきた島の人々でなければわからないのかも知れない。

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