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アイヌの木彫り

(2)伝統的工芸品の指定 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年7月13日刊行

齋藤玲子(国立民族学博物館准教授)


イタを彫る工芸家の貝澤徹さん。伝統を大切にしつつ、個性を出すことを心がけている。=2017年2月、国立民族学博物館提供

経済産業大臣が指定する「伝統的工芸品」をご存じだろうか。素材や技法など五つの要件を満たすことが求められ、およそ100年以上の歴史を有するものとされる。現在、全国で225品目が指定されているが、4年前まで47都道府県で北海道だけ伝統的工芸品が指定されていなかった。

2013年に北海道初の伝統的工芸品に指定されたのはアイヌの民具だ。平取町の二風谷民芸組合が作るイタとアットゥで、イタは木製の盆、アットゥはオヒョウ(ニレ科)の樹皮製の糸で織った布である。イタには渦巻きや鱗のような独特な文様が彫られている。

1878年に来日して「日本奥地紀行」を著したイザベラ・バードは、平取に滞在中、鞘がついた小刀や樹皮製の衣服などを買っている。男たちは「室内のレクリエーション」として木彫りをする、とも書いている。国立民族学博物館にも、明治時代に東京大の研究者らが平取で収集した盆が収蔵されている。明治に入ってアイヌの生活は大きく変化し、木彫りの生活用具も次第に作られなくなっていくが、平取では木彫の技が脈々と受け継がれてきた。

指定後、二風谷の工芸家たちはマスコミ取材や催事等に招かれることが増えた。工芸品をとおして、アイヌ文化にふれてもらう機会もまた増えている。

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