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被災地からのメッセージ

(2)遺構・遺物が伝えること 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年8月10日刊行

林勲男(国立民族学博物館教授)


津波により2キロ以上内陸に運ばれた発電船=インドネシアのバンダアチェにて2010年、筆者撮影

インドネシアのバンダアチェ市には、2004年の大津波災害の経験を後世に伝えるために、大規模な津波博物館や遺構・遺物、モニュメントがある。これらは大惨事を伝える防災教育機能を持つだけでなく、アチェ観光の名所でもある。

この津波災害は、結果的にはインドネシア政府と自由アチェ運動(GAM)の紛争を終結させ、アチェ州に平和をもたらした。しかし、市内だけで16万人以上が亡くなり、遺族たちは悲しみの中で生活の再建や地域の復興に努めなければならなかった。

紛争当時、バンダアチェ市への電力供給は、電線の切断などの妨害を受けることがしばしばあった。対策として沿岸部に大型発電船を停泊させ、そこから市内電力の需要をまかなっていた。津波により内陸に運ばれた発電船は、観光客には津波の威力を伝えるものとして知られているが、実は災害以前の暮らしを語り伝える役割も果たす。

10年12月、災害発生から6周年の記念式典に出席するため、バンダアチェ市を訪れた。式典会場や中心市街の大モスク、そして発電船の周辺に、多くの黄色い花を見かけた。花びら形のカードにメッセージを書き、それを花の形にして人と人とをつないでいく。若いデザイナーたちのNPOが、神戸で始めた「シンサイミライノハナPROJECT」であった。

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