国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

被災地からのメッセージ

(3)復興への交流 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年8月17日刊行

林勲男(国立民族学博物館教授)


手刈りした稲をハザに掛ける=新潟県長岡市荒谷にて2010年、筆者撮影

2004年10月に発生した新潟県中越地震では、過疎・高齢化が進む地域に大きな被害が出た。集落間を結び、町場に通じる道路が寸断され、一時は61もの集落が孤立した。そして、いたるところで棚田が崩落し、錦鯉を育てる養殖池も亀裂や決壊によって用を成さなくなった。しかし、3年が経過した頃から棚田を修復し、稲作体験をはじめとする交流事業の試みがいくつかの集落で始まった。

私も、今は長岡市の一部となった旧川口町の荒谷という小さな集落に約10年間通い続けた。交流事業開催の情報は口コミやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で広がり、新潟県内だけでなく東京都や神奈川県などから参加する人もあった。二十歳前後の大学生や子供連れの家族、現役を引退した世代の人たちが、それぞれに四季の変化の中での山里の暮らしを体験、交流し、別れ際に次の再開を約束するという光景を繰り返してきた。

荒谷集落のこの交流事業も、今春の山菜採りが最後となった。当然ながら、終了を惜しむ参加者の声は少なくなかった。しかし、以前からの過疎・高齢化が、震災によって加速したのも事実である。10年間の活動を振り返りながら、集落の人たちが今後どのような歩みを続けるのか、少数ではあるが若い世代に注目しながら、もうしばらく見守っていきたいと思っている。

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