国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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被災地からのメッセージ

(4)ため池と暮らし 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年8月24日刊行

林勲男(国立民族学博物館教授)


豪雨で一時越水したため池。決壊はまぬがれた=兵庫県佐用町で2009年9月、筆者撮影

1995年1月の阪神・淡路大震災では、淡路島で961ものため池に崩壊や亀裂の被害が生じた。2009年8月の台風9号による豪雨では、兵庫県佐用町で、ため池決壊への不安が住民の避難行動に影響したといわれている。そして11年3月の東日本大震災では、福島県須賀川市の藤沼貯水池が決壊し、8名が死亡・行方不明となった。

ため池は山間地の川をせき止めた谷池と、堤で周りを囲んで底を掘り下げた皿池に大別される。そして貯水だけでなく、上流からの土砂や流木をせき止め、下流への被害を防止・軽減する役割もある。さらに近年では、ため池が持つ多様な生態系も注目されるようになってきた。

灌漑や防災、自然・環境教育などに役立ってきたため池であるが、地震や豪雨による決壊という大きなリスクもはらんでいる。そのリスクには、地震や豪雨の規模にもよるが、ため池自体の老朽化と維持管理の問題が大きく影響している。

全国のため池の約7割が、江戸時代以前に造られたもので、十分な管理が行き届かないほど過疎化・高齢化が進んだ地域にあるものも少なくない。耕作放棄地が増え、ため池の管理組織が消滅してしまったケースもある。災害規模の拡大には、地域社会の在り方が連動している一つの例である。

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