国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

鵜飼文化のこれから

(1)中国との文化交流  2017年9月7日刊行

卯田宗平(国立民族学博物館准教授)


中国雲南省大理白族自治州の洱海で行われている鵜飼=2017年2月、著者撮影

今年2月20日、わたしは中国雲南省大理白族自治州の政府庁舎にいた。岐阜市長を代表とする岐阜市訪問団とともに田江権・大理白族自治州副州長と面談をするためである。この席で双方は、鵜飼文化の国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録を目指し、連携して進んでいくことを約束した。

大理白族自治州には洱海とよばれる淡水湖があり、そこで白族が鵜飼漁を続けている。洱海の鵜飼漁は2000年以上の歴史があるとされる。だが近年、その規模は縮小し、数世帯が細々と続けるという状況であった。こうしたなか、伝統的な漁労技術の消滅を危惧した雲南省は、2009年に雲南省無形文化遺産に登録した。

その後、洱海の鵜飼漁は観光化が進み、年間30万人が訪れる人気の観光資源になった。しかし、洱海では鵜飼がもたらす淡水生態系への影響や遊覧船の安全管理が問題となり、15年から湖での操業が禁止された。現在は湖周辺の限られた水域でのみ操業が許されている。

いま、洱海では生態系の保全と伝統技術の保持との両立が課題になっている。日本の鵜飼もかつて同じような問題に直面していた。今後は、日中の鵜飼関係者たちの交流を進め、日本の経験も伝えながら、両国の鵜飼文化がともに発展する道を探っていきたい。

シリーズの他のコラムを読む
(1)中国との文化交流
(2)繁殖技術の確立
(3)捕獲技術の継承
(4)鵜飼サミット