国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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鵜飼文化のこれから

(2)繁殖技術の確立 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2017年9月14日刊行

卯田宗平(国立民族学博物館准教授)


孵卵器のなかで管理されているウミウの卵=2017年4月、京都府宇治市で著者撮影

今年4月27日、わたしは京都府宇治市にある宇治市観光センターにいた。宇治川鵜飼のウミウが産み落とした卵の発育を確認するためだ。宇治市観光センターは鵜匠たちがウミウの繁殖作業をおこなう場所である。

センターの2階に設けられた飼育部屋では今年産まれた20個の卵が孵卵器のなかに入れられていた。この日はそのなかで13個の卵を検卵し、うち8個が有精卵であることを確認した。これで宇治川鵜飼の鵜匠たちは2014年から4年連続でウミウの有精卵を確保したことになる。

日本の鵜飼は1300年以上の歴史がある。現在の鵜飼では野生のウミウが使用されているが、かつてはカワウも使用されていたという。ただ、日本の鵜飼においてウミウやカワウが産卵し、鵜飼で利用したという記録がなかった。

こうしたなか、14年5月に宇治川鵜飼でウミウが産卵したのである。その後、鵜匠たちは前例のない状況で卵を孵化させ、雛を育て、鵜飼にデビューさせた。翌年以降もウミウを産卵させ、雛を育てている。

この4年間の鵜匠たちの努力により、ウミウの繁殖技術は安定した水準にまで達したといえる。ウミウの人工繁殖を続けるのは世界でも宇治川鵜飼だけである。鵜匠たちがもつウミウの繁殖技術は、日本の鵜飼文化を維持していくうえで一つの重要な技術になるだろう。

シリーズの他のコラムを読む
(1)中国との文化交流
(2)繁殖技術の確立
(3)捕獲技術の継承
(4)鵜飼サミット