国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

バザールの風景

(4)材木市場  2018年6月30日刊行

寺村裕史(国立民族学博物館准教授)


注文した通りに薄い木の板を切断してくれる店の人=2016年9月、ウズベキスタン・サマルカンドで筆者撮影

ウズベキスタンのサマルカンド市街地の中心部にあるバザールから車で10~15分ほど離れた場所に、木材を扱うことを専門にした店が集まる、材木市場がある。乾燥したステップ気候で森林面積が狭く、背の高い樹木が少ない同国では、産業用に生産される木材は、それほど多くはない。そのため、建築用の木材などは主にロシアからの輸入に頼っているという。

材木市場には、そうした建築の部材となる木柱や、合板を売る店、のこぎりやくぎ、巻き尺といった木工・建築用の道具類を揃えた店などが軒を連ねている。筆者は、現地での調査で縦40センチ×横30センチくらいの木板が10枚ほど必要になったため、それを調達しようと材木市場を訪れた。

市場では、普段そういった小さな単位で購入する客など珍しいためか、どの店でも最初はなかなか話が進まなかった。しかし最終的には、ある店の職人が、大きな1枚の合板からこちらの注文通りの大きさの板を、2人がかりで一枚一枚のこぎりを使って切り出すという結構大変な作業を黙々とこなしてくれた。

電動のこぎりくらい店にあるだろうと軽く考えていたので、手作業での注文対応は驚くと同時にありがたいような申し訳ないような複雑な気分であった。

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