国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

中国の食

(2)元気で長生きのために  2018年7月14日刊行

韓敏(国立民族学博物館教授)


枸杞葉を炒めた料理=中国・広州の中山大学で2018年5月、筆者撮影

元気に長生きするのが、人類共通の願望である。そこからさまざまな養生のアイデアが生まれる。「薬食同源」(日本語では「医食同源」)の考え方はその一つ。すなわち、体によい食材は、薬と同じような働きをするので、それを日常的に食べれば、健康を保つことできるという。

写真にある料理は、学会参加のため訪れた広東省広州で食べた枸杞葉(くこよう)の炒めものである。干した枸杞の実は疲労回復と眼病予防にいいとされているので、よく食べるが、その葉でできた料理は初めてだった。隣に座った広東出身の研究者は「我々は暑い時によく枸杞葉でスープや野菜炒めを作るよ。のぼせをとり、熱を下げてくれるからね。さあ、たくさん食べて」と勧めてくれた。少し苦みはあったが、歯ごたえがあり、おいしかった。5月中旬なのに、気温が既に30度を超える暑い日が続いていた広州にふさわしい料理だった。

枸杞は東アジア原産のナス科の小形の落葉低木である。3世紀に著わされた中国最古の医学書『神農本草経』には、「久しく服すれば筋骨を堅くし、身を軽くし、老いず、寒暑に耐える」とあり、明の本草学者の李時珍も『本草綱目』の中で薬用の枸杞を取り上げた。生命力が強く、手に入りやすい枸杞は、葉っぱから根っこまで余すところなく利用できる、大切な養生の食材である。

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