国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

アンデス開運グッズ

(2)赤い種子  2019年3月9日刊行

八木百合子(国立民族学博物館助教)


ワイルーロのキーホルダー=ペルーで2018年、筆者撮影

ペルーでは小さな赤い種子をあしらったアクセサリーをよく見かける。この種子は、熱帯地域に生育するマメ科の樹木からとれ、「ワイルーロ」という名で呼ばれる。身につけた人を悪いものから守り、幸運をもたらすと信じられている。

とくにワイルーロはお金と一緒にしておくと良いといわれ、財布のなかに小さなサイズのワイルーロを入れ持ち歩いている人もいる。金運に恵まれるからである。鮮やかな赤色をしたこの種子には、オスとメスがあることでも知られ、メスは赤一色であるが、オスには黒い大きな点がついている。両方を一緒にしておくことで、子宝に恵まれるという言い伝えもある。

古くはインカ時代から魔よけのお守りとしても用いられていた。古代の人たちは、悪霊から逃れるためにすり潰して飲むこともあったという。ワイルーロには悪いものを寄せ付けない強い力があると考えられていたのだ。

今でもお守りとして、生まれたばかりの赤ん坊にワイルーロのブレスレットを贈ることがある。邪視によって引き起こされる、災いや病気から子どもを守るためである。そういわれてみれば、ワイルーロのオスはどことなく目のかたちにも似ている。悪意や嫉妬の目で見てくる人をギロリとにらみかえしてくれそうだ。

シリーズの他のコラムを読む
(1)黄色い下着
(2)赤い種子
(3)屋根の上の牛
(4)福を呼ぶ男
(5)ミニチュア雑貨