国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

南太平洋に住む客家

(4)ニューカレドニアへの再移住  2020年2月22日刊行

河合洋尚(国立民族学博物館准教授)


ヌーメアのアジア人街。アジア人街とその付近には客家が経営する店舗がある=2018年9月、筆者撮影

タヒチと同じく、ニューカレドニアも観光やハネムーンで有名な南国の「楽園」である。中心都市ヌーメアでは日本人のカップルやグループが歩く姿をよくみかける。ヌーメアで店を開いている人々もアジア系が多い。その多くはベトナム人である。

ニューカレドニアのアジア系移民のなかでは、ベトナム人やインドネシア人が相対的に多い。ここでは、中国人はアジア系移民のなかでも少数者だ。

ニューカレドニアでは、1940年代まで中国系移民がほとんど住んでいなかった。だが、60年前後にタヒチから客家が集団で移住した。今は中国本土から移住した客家や雲南人などがいる。注目に値するのは、ニューカレドニアでは、ベトナムから再移住した中国系移民が少なくないことである。

60歳代のHさんは、ヌーメアに住むベトナム系の客家である。彼の祖父が中国広東省からベトナム南部へ移住したことから、ホーチミンで生まれ育った。だが、ベトナムで中国人排斥の運動が高まったため、80年代に両親や弟、妹たちとニューカレドニアへ再移住した。Hさんの妻もベトナム出身の中国系移民である。Hさん一家は、ベトナムと中国の双方の文化に親しんだニューカレドニア人として生きている。

シリーズの他のコラムを読む
(1)客家の故郷・中国広東省
(2)タヒチの春節と元宵節
(3)タヒチ客家の「中国人」意識
(4)ニューカレドニアへの再移住
(5)ニューカレドニアの「客家文化」