国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Activism and Civil Society in South Asia, with special reference to Nepal and Sri Lanka 出席

南真木人

2005年6月25日~2005年7月5日 (連合王国)

オックスフォード大学の人類学者 David Gellmer が主催した本研究集会は、オックスフォードのMaison Francaiseを会場に開催され、6セッションで24人が論文を報告した。発表形式は口頭発表ではなく、事前に配布したペーパーをペーパーごとに配されたディスカッサントが要約して批評し、報告者がそれに応え、さらにフロアーとの質疑応答をおこなう形が取られた。ディスカッサントを含む全参加者は62名であった。本国際研究集会は次のような6つのセッションから構成された。
 

1.民族とダリット(不可触民)の運動(10ペーパー) 2.民族、政治及びその他の運動(3ペーパー) 3.政治的運動(5ペーパー) 4.社会的運動/NGOs(2ペーパー) 5.運動家によるパネルディスカッション(2口頭発表) 6.まとめ(4ペーパーと7人による最終考察の口頭発表)
 

研究対象の地域別ではネパールに関するものが11ペーパー、以下同様にインド6、スリランカ5、バングラデシュ1、南アジア全体1であった。参加者もネパール、インド、スリランカ、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、日本、イタリアの人類学者と社会学者、ネパールとインドで運動に関わる当事者などが参集し、活発な討論がおこなわれた。
 

何れのセッションも南アジアにおける多様な運動及び運動家に関して具体的な報告がなされ、グローバル化する南アジアにおいて市民社会の成立がいかに重要なテーマとなっているかが明らかにされた。また、運動が地域を越えてトランスナショナルに影響し合い、時には過激化することや、他方で地域固有の歴史を踏まえた問題があることが浮き彫りにされた。セッション名には「女性」、「環境」、「宗教」及びそれに基づく「暴力的紛争」やネパールのマオイスト(共産党毛沢東主義派)問題などに代表される「内乱」といった言葉は挙げられていない。だが、個別の発表ではこれらも取り上げられ、後2者のように早急な解決が求められる課題についても広く議論された。

私がセッション1で発表した論文は、マガールの民族運動が日本においてどのように展開し、それが本国の運動とどのような結びつきをもっているのかを呈示するものであった。幸運なことに、マガール研究をしている、Anne de Sales, Marie Lecomte-Tilouine, Uma Nath Baral が別の角度からマガール人の運動について発表し、互いの情報を交換・共有できたことは大きな成果であった。また、私が注目している、インドのダージリンにおけるネパール系インド人の民族運動とそのネパールとの関係や波及についても、Sara Shneiderman, Mark Turinといった研究者が関心を共有していることがわかり、集会の場を越えて議論する時間をもてた。

集会での議論は必ずしも全体を統合するような理論化やモデル化を目指す方向には進まなかった。だが、少なくとも本研究会の成果として出版される論文集では、南アジアにおいて現在おこっている問題群とそれに向けた人々の運動の実態が網羅される基本文献になることは確かであろう。

(写真上:なごやかな雰囲気ですすめられた集会)(写真下:Maison Francaiseの庭で休憩)