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「2006年クイーンズランド言語学会における文法変化に関する理論および記述言語学に関するワークショップ」への出席
菊澤律子
2006年7月1日~2006年7月10日 (オーストラリア)今回のLINQ 2006 Linguistics in Queensland (クイーンズランド言語集会)では、言語学関係の次の五つの主要学会が開催された。
- 太平洋第二言語習得研究フォーラム(PacSLRF 2006 The 5th Pacific Second Language Research Forum)
- オーストラリア辞書編纂法学会(AUSTRALEX 2006 Australasian Association for Lexicography)
- オーストラリア応用言語学会(ALAA 2006 Annual Conference of the Applied Linguistics Association of Australia)
- オーストラリア言語学会(ALS 2006 Annual Conference of the Australian Linguistic Society)
- オーストラリア言語学インスティトゥート(ALI 2006 Australian Linguistics Institute)
オーストラリアは主要都市が広大な土地に散らばっており、国内であっても学会出席などのためにたびたび行き来するのは大変である。今回のように言語学における一連の行事を一箇所で同時期に開催することは、より多くの研究者や学生の出席を可能にし、参加を奨励するという意味があると思われる。二つの学会が並行して行われた日には、招待講演者による講義が両学会共通となっていて、どちらの学会の参加者も聴講することができ、同時開催のメリットのひとつであると感じた。
海外の言語学会ではよく、主催者以外からコーディネーターを募り、特定の研究テーマに焦点をあてたワークショップが組まれることがあるが、今回のオーストラリア言語学会でもいくつかが並行して開催された。この中でも、日本の科研費にあたるARC(Australian Research Council)の研究費による国際共同研究の成果報告を兼ねて企画された「複合述語構文」に関するワークショップでは、トロント大学(カナダ)、エジンバラ大学(英国)、その他、研究メンバーになっている各国からの専門家を含む研究発表が続き、非常に内容の濃いワークショップとなった。少し話はそれるが、日本言語学会主催の学生を主なターゲットとした夏季言語学講座(上のリストのなかの ALI にあたる)を、もしオーストラリアやアメリカのように研究者一般を対象とした講座に移行しようと考えるならば、このような形でいくつかテーマ講義として組めば、予算や研究者の負担をあまり増やさずにかつレベルの高い講座を提供できるのではないかと思った。
「文法変化」に焦点をあてたセッションは、「言語変化に関する研究センター」(オーストラリア国立大学)とイギリスのマンチェスター大学の共同主催であり、国内のみならずニュージーランドや合衆国などからの出席者もみられた。菊澤はこのワークショップでオーストロネシア諸語における適用態(Applicative)の史的変遷をテーマに発表した。比較言語学にはヨーロッパ言語や中国語・朝鮮語などを対象とした主として文献に基づいて行う研究方法と、文字による記録のない言語の先史を対象とした再建を中心とした研究方法がある。オーストラリアの言語もオーストロネシア諸語も、比較言語学的研究は後者のアプローチになる。今回のワークショップでは、オーストラリア言語の専門家の比率の多さを反映して再建に基づく研究発表の割合が高くなったのが一般的な比較言語学会と異なってユニークであった。言語再建はまだまだ手法の発展の余地がある分野であり、自分が普段対象としている言語以外の分野での最新の研究成果を聞く機会をもつことができたことは非常に有意義であった。
(写真上 ブリスベンの「冬」は秋口のような気持ちのよい気候。ランチやティーはすべて中庭で提供され議論の合間のよい気分転換となった。)
(写真下 文法変化に関するセッションの口火を切ったラポーラによる招待講演の風景。)







