国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

The 4th Conference of the International Council for Traditional Music (ICTM), “Music and Minorities” Study Group 出席

寺田吉孝

2006年8月23日~2006年8月31日 (ブルガリア)

国際伝統音楽評議会の「音楽とマイノリティ」研究グループは2000年に設立され、隔年に大会を開催している。会を重ねるたびに参加者は増え、今回の第4回大会では約80人が参加し60本の発表が行われた。本研究グループは主にヨーロッパ(特に東欧)の研究者の発案により設立され、これまでの大会はすべて東欧・バルカン地域で開催されてきた。メンバーもヨーロッパ在住研究者が大多数を占めているため、研究対象についてもロマ音楽をはじめとしてヨーロッパの事例の比重が大きい。今回の大会も東欧(ブルガリア)での開催となったが、対象地域・ジャンルを広げる努力がなされ、他地域からの参加者も増えた。発表は4つの研究テーマ(ハイブリディティ、教育、マジョリティとマイノリティの関係、人種・階層・ジェンダー)に沿って行われた。

寺田は、この中の「人種・階層・ジェンダー」のセッションで、大阪市浪速区にある被差別部落の青年たちによって結成された太鼓集団「怒」の活動と、差別撤廃・人権運動との関連にかんする発表をおこなった。この地域では、太鼓つくりの伝統はあるが、演奏伝統はなく、近年太鼓奏者に注目が集まるのに対し、太鼓の作り手にはいまだに差別的まなざしが向けられている。太鼓集団「怒」の活動の背景には、従来の部落解放運動がハード面(法的措置、施設)における改善に大きく寄与したものの、根強く残る差別意識の撤廃には必ずしも効力を発揮していない現状に対する焦燥感が存在する。発表では、浪速の被差別部落の青年たちが、音楽・芸能(太鼓)が持つ情動に訴えかける力を認識していくプロセス、地域に蓄積された差別の記憶、太鼓をテーマにした部落コミュニティの再創造への試みなどを報告した。

(写真上 研究発表の様子 会議はヴァルナ市の郊外にあるホリゾント・ホテルで開催された)
(写真下 会議中に演奏したロマの楽師たち)