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「テリー・クラウリー教授追悼ヴァヌアツ言語学に関するワークショップ」への出席
菊澤律子
2006年11月11日~2006年11月16日 (ニュージーランド)
11月13-14日、昨年1月に急逝した言語学者Terry Crowley(1953-2005)の追悼ワークショップがヴィクトリア大学ウェリントンで行われ、ヴァヌアツ記述言語学の専門家を中心に活発な議論が展開された。
Crowleyはヴァヌアツをフィールドとし、広くオセアニア言語を対象に活躍した比較言語学・記述言語学者である。フィールドワークに基づいた個別言語の記述はもちろんのこと、それらの言語の比較研究、ビスラマ語の文法書や比較言語学の入門書の執筆、言語教育ポリシー、その他と、その業績は多岐にわたる。また、100言語を超すといわれるヴァヌアツの言語の記述に携わる学生を何人も育てたことはよく知られており、今回のワークショップでも、Ph.D.在学中の学生による研究発表も多くみられた。
菊澤は、印東道子(国立民族学博物館)との共著論文である「オセアニア諸語におけるターメリック(Curcuma domestica)を示す語の分布とその先史研究における意味」について発表し、また座長をつとめた。
これまでのオセアニア言語学にもとづく先史研究では、ミクロネシア・ポリネシアにおけるターメリックの文化的重要性はほとんど認識されていなかった。本論文は、民族考古学の分野で初期のオーストロネシア話者によるターメリック利用の可能性を指摘した印東(2005)の成果と、菊澤によるオーストロネシア諸語におけるターメリックを示す語の比較言語学的な分析を合わせて議論したものである。ミクロネシアの言語においてターメリックを示す語が五系統あることを指摘し、それぞれが古い交易網とある種のターメリックの重要性を反映していることを示した。これは、Crowley(2005)におけるカヴァを飲用する習慣の広がりを言語学的に議論した論文と並行する内容であるが、言語学者と民族考古学者による共同研究であるという点で、そこから一歩、先にすすんだ取り組みであるといえる。
なお、ヴァヌアツにおいてはターメリックそのものには文化的重要性はないが、質疑応答の時間には、ヴァヌアツを専門とする研究者たちが「黄色」などターメリックと意味的に関連する語彙を出しあい、植物の名称そのものは失われていても、オセアニア祖語からの派生語が現在でも多くの言語に見られることが認識される、などの場面もみられた。また、若い研究者に対しては、学際的研究の実例としてよい刺激にもなったようだと自負している。







