国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「アメリカにおけるアーミッシュ 新しいアイデンティティおよび多様性に関する国際研究大会」への派遣

鈴木七美

2007年6月5日~2007年6月21日 (アメリカ)

セッション4B 他のグループとの比較

18世紀に宗教的迫害を逃れアメリカに移民した再洗礼派の一教派アーミッシュは、宗教的信条に基づき当時の生活様式を実践しようと試みて、アメリカ社会に様々な波紋を投げかけてきた。今回の国際学会は、2006年秋に、とくに保守的とされるグループ、オールドオーダー・アーミッシュに対する銃撃事件が起きたこともあり注目を集め、文化人類学や社会学領域の研究者のみならず、メディア関連、アーミッシュを含む再洗礼派の人々が集って活発な議論が展開された。
 

私は、数年間にわたり現地調査を続けた成果を、「アーミッシュにおける多様性・変動・コミュニケーション」というタイトルで報告した。伝統的な生活を続ける人々と一面的に捉えられがちなアーミッシュの人々は、実際には宗教的実践の違いによって細分化し続けている。だが、細分化し多様化した様々なグループは再洗礼派メノナイトの人々とも協同し、一般社会にメッセージを送り続けている。第一に教育や軍隊・戦争への姿勢によって一般社会との軋轢を経験し調整が模索されてきたこと、第二に特徴的衣服などによって表現される差異によって主張を表現し続けていること、第三として、近年非暴力による調整の一環として世界各地の援助活動に積極的に加わり始めたことがあげられる。この報告に関して様々のコメントが寄せられ今後の議論や交流への可能性が開かれた。
 

今回の学会では、第一に、アーミッシュを象徴するワンルーム・スクールで起きたNickel Minesの銃撃事件についてコミュニティが犯人を許す("forgiveness")と表明したことで、暴力に対する態度のありかたが議論されていること、第二に"shunning"はコミュニティから葬る実践を伴うが、最近、一生涯忌避され続ける人々(ex-Amish)を支援する活動がアーミッシュ・非アーミッシュの協同作業として構想されつつあることなど情報を得た。
 

信念を貫くために益々細分化したコミュニティに暮らす人々が、互いの問題を調整するため差異をこえて協力する様相は、社会や人間関係の調整の技術として多文化社会において適用できる側面があると考えられる。学会および研究調査で得た知見について検討し考察を深め、順次研究報告をしてゆく予定である。