国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「カナダ日本学会国際研究大会 2007」への出席

鈴木七美

2007年8月13日~2007年8月27日 (カナダ)

セッション9-B「人間と環境の相互作用の醸成」にて報告

カナダ日本学会国際研究大会2007のセッション9-B「人間と環境の相互作用の醸成」には、都市化や過疎化などの状況における街づくりに関心を抱く研究者が集まり、高齢化と過疎化の問題を抱える日本の町における産業振興とその展開に関する私の報告にも、多くの質問やコメントが寄せられ、議論することができた。
 

私の報告「循環的共生‐紅葉の葉を摘む暮らしの創造‐」(キーワード:高齢者、環境とライフスタイル、産業振興、循環的共生、多世代間関係、住人と外来者の協同)は、高齢化と過疎化が進行する町において、地域資源を生かし高齢者に適合的な産業振興の経過、高齢者の生活の変化、さらにこの変化が町全体にいかなる影響を与えたのかを検討したものである。
 

高齢者が豊かさを増したという暮らしは、高齢者福祉という観点ではなく、地域の人々の生き残りをかけた産業振興と関連していた。ここでは、高齢者は援助の対象として固定化されることなく、地域の一員として取り組みに参加した結果、「自立」を実感させる要素としての「自由になる金」を得て、「コミュニティに顔の見える存在」という実感を得るようになった。
 

この過程で人々は年齢を問わず「明日」を見据えることが習慣となり、常に変動の相にある新たな相互関係を築くことに参与することになった。外来者を受け入れ、新しい町の「住人」の力を生かすという発想もうまれた。
 

高齢者が充足する社会は、環境をも含め共生社会の構想と切り離しては考えられない。地域に生きる人々が共に豊かな暮らしを実現してゆけるために必要な要素を生みだし醸成するパワーの循環機構を組み立てることが不可欠である。
 

町村の合併が進行する現状において、地域の住人が日常生活のなかで暮らしのデザインに参加する方法やそのヴァリエーションについて情報を蓄積し提示してゆくことの重要性が確認できた。今後は、現場で活動する人々との共同的研究と実践に生かす方法に関し、さらに検討を続けたい。