国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

韓国文化人類学会創立50周年記念国際学術大会「超競争時代の文化と人類学」

太田心平

2008年11月13日~2008年11月16日 (韓国)

セッション:「日本人類学界における韓国研究――国立民族学博物館を基盤機関とする総合研究大学院大学の研究を中心に」

セッション発表を総括しつつ、近年の日本における韓国研究の全体的動向について、人類学史研究の立場からフル・ペーパーの学会発表をした。

論点となったことは、第一に、近年の日本における韓国研究は、(1)静的な伝統文化への着眼、(2)日本と同時代にある韓国の社会の脱構築的研究、(3)現在進行形の新たな現象を近未来まで見すえて包括、という三段階で急速に変化していることが指摘できた。

第二に、同様の三段階の急速な変化は、研究地域の範囲設定にも見られることが言えた。つまり、(1)閉じられた韓国の本土社会、(2)周縁や植民地時代という外部交渉状況の導入、(3)多国籍的ないし全世界的エージェントの場、という変化である。

第三に、地域文化やサバルタンを取り上げようとする研究が、近年には急速に見られなくなってきたことが挙げられた。研究対象の人びとに対して向けられる視座が愛玩的・救済的なものから脱しつつあるという点は、近年の人類学に共通の研究動向であろうが、日本における韓国研究の変化はそのスピードが速く、特に徹底した変化に見える。

この変化の背景としては、近年の日本の韓国研究者が、研究の主題や方針を定めるより先に、現地の人びとや現象や研究者と密に接していることを指摘した。

近年の日本で韓国研究をする若手の中には、日本の友人や日常や指導教授と韓国のそれらとの間に一線を引くことすらない者が少なくない。地理的・言語的・制度的な相互親和性に支えられ、東アジアにおいて研究に国境がなくなりつつある先駆的な例が、日韓の人類学界なのだと言っても過言ではない。日常的に日本の若手韓国研究者と触れあっている聴衆たちに、そうした若手の登場の意味を再認識していただいたことにより、日韓の新しい研究協力関係の構築に微力ながら一助できたのではないかと考えられる。