国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「第七回ハワイ人文科学国際会議」

市川哲

2009年1月9日~2009年1月12日 (アメリカ)

発表題目は「華人のサブ・エスニシティにとっての宗教と言語の意味:オーストラリアにおけるパプアニューギニア華人」('The Meaning of Religion and Language in Chinese Subethnicity: Papua New Guinean Chinese in Australia')である。当日の発表では、これまで調査してきたパプアニューギニア華人のエスニシティの特徴を宗教と言語に注目することにより分析した。特にパプアニューギニアからオーストラリアへと再移住する華人を取り上げ、オーストラリアに居住する他地域出身の華人との相互交渉について報告した。具体的な発表内容は、華人や中国人のサブ・エスニシティを対象とした先行研究のレビューを行い、華人のサブ・エスニシティが分節リニージ体系のような分節構造を持っていると見なされがちであったことを指摘した。そしてそうしたサブ・エスニシティの分節構造概念が、移住を繰り返したり、移住先で信仰する宗教や使用する言語を変容させるような華人を対象とする場合には、必ずしも合致しないことを指摘した。その上で、パプアニューギニア華人の移住と宗教活動、使用言語を事例として取り上げることにより、サブ・エスニシティの分節構造概念の批判を行った。そしてパプアニューギニア華人のサブ・エスニシティの特徴を理解するためには、中国における出身地の地縁関係のみに依拠した分析を行うのではなく、移住先での生活様式や信仰、言語の変化といった複数の要因を視野に入れた分析をするべきであるという結論を提示した。

研究発表では台湾およびアメリカ合衆国の地理学者や文化人類学者が参加し、質問やコメントを受けることが出来た。参加者からのコメントとして、サブ・エスニシティの分節構造概念にとって地縁のみを強調しているが、中国における方言の使用が重要である点、オセアニア以外の地域の華人社会との比較の必要性等があった。このような外国の研究者との意見交流は今後の研究に大変有益であった。