国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究集会名:第53回国際アメリカニスト会議

齋藤晃

2009年7月19日~2009年7月24日 (メキシコ)

セッション:スペイン領アメリカにおけるミッションとフロンティア

申請者が参加したシンポジウムは、「Missions and Frontiers in Spanish America」(スペイン領アメリカにおけるミッションとフロンティア)と題されており、米国南西部、メキシコ北部、ボリビア東部、パラグアイ南部、アルゼンチン北東部など、スペイン領アメリカの辺境地域にフランシスコ会やイエズス会が建設したミッションの政治的・経済的・文化的役割を比較史的視点から考察することを目的としていた。本シンポの主催者および主要メンバーは、米国の歴史学者と考古学者であり、報告もおもに英語で行われた。米国のミッション研究のおもな特徴としては、ミッションの遺跡の考古学調査の成果を活用すること、生態系への適応という問題への関心が強いこと、人口変動や出生率の変化(伝染病の影響など)を解明するため人口統計学的手法を多用すること、などである。今回のシンポでも、その特徴が十分出ていた。

「Social Integration and Identity Formation in the Resettlement Towns of the Moxos Mission」(モホス地方のミッションの集住区における社会統合とアイデンティティ形成」と題した申請者の報告は、人口変動についても論じているが、基本的には人類学的アプローチを取り入れた社会史的研究である。南米のミッション研究は概して人類学的性格が強いが、その理由は、ボリビアやパラグアイなどの国にはいまでも在来の民族集団が残っているからだろう。たとえば、ボリビアのミッションでは、生態学的適応が成功し、先住民共同体が存続している。スペイン人との混血が進み、民族集団の多くが消滅した米国やメキシコとの大きな違いである。

いずれにせよ、今回のシンポジウムは、スペイン領アメリカにおけるミッションの地域的多様性を踏まえながら、より総合的なアプローチを練り上げていく上で、大きな刺激となった。