国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

第16回 国際人類学民族学会議

横山廣子

2009年7月27日~2009年7月31日 (中華人民共和国)

昨年夏から1年延期されて昆明で開催された大会の分科会での私の研究報告では、次の1)~4)の諸点を論じ、参加者から質問や関心を寄せる反響があった。

1)雲南省の少数民族地域などでは経済発展が伝統的文化と対立関係をとり、経済発展は現代的知識や技術がもっぱらもたらすものと捉えられる場合が多い。大理ぺー族自治州では伝統的知識や技術が近年の経済発展をもたらした事例があるものの、特に貧困問題をかかえる山地の場合、開発は新しい知識や技術を求める方向に走りがちで成功には結びつかないこともある。

2)日本の徳島県の山地にある人口2000人ほどの上勝町は、過疎と老齢化が深刻な山村であったが、この20年ほどの間に新たな農業の産業化などで著しい変化を遂げ、多くの見学者が訪れる場となっている。日本料理に添える葉や花などの生産は、老齢者の従来の知識や技術を活かして山村の経済を活性化した好例である。

3)上勝の成功の主な要因は、①地域の条件に適合し、産業化が進んでいなかった空白の領域の発見、②新たな農業の産業化を先導し、支えた熱心な人材の存在、③情報技術の導入によって迅速で無駄のない供給を可能にした生産システムの確立にある。

4)上勝と雲南の山地とでは種々の条件が異なるが、雲南の貧困地域の開発において上記の上勝の成功の3つの要因を重視することにより、新たな可能性をひらく余地がある。

また、傍聴した他の分科会の中では、ミャオ・モン族研究やナシ族研究のように、中国に居住する民族集団の研究でまとめられた分科会に興味深いものがあった。特にミャオ・モンの場合、当該民族出身者が難民として欧米各国に居住しており、調査地が中国とその隣接地域にとどまらず多様性に富んでいること、また欧米に移住した人々の中から研究者が育ち、他の地域に居住する自民族集団を調査した報告もあり、調査者・被調査者の関係や視点が多彩に交錯する中で研究が展開している状況が、分科会の研究レベルでの深みと会議の活気を増していた。

多彩に用意された大会展示のうち、中国の諸民族や世界各地の文化の展示は、全体として統一性を欠くとさえ見える構成が、かえって大会のテーマである「人類、発展、文化多様性」について種々考察させる場を提供していた。中国の人類学・民族学あるいは雲南を中心とする人類学・民族学の歴史についての展示は、自身の従来の知識を整理し、さらに理解を深める機会となった。雲南大学人類学博物館や雲南民族博物館の展示は、雲南省の諸民族文化への展望を広げ、展示に関する技術的側面や展示内容について、自身の属する国立民族学博物館の新構築に向けて考えるヒントとなった。