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インド―太平洋先史学連盟(IPPA)第19回大会
印東道子
2009年11月29日~2009年12月5日 (ベトナム)セッションC-16「インド太平洋地域における歴史的生態および海洋資源の利用」
ミクロネシア・ファイス島で2005年に行った発掘調査は、3メートルにもおよぶ深い文化堆積層を確認し、約1800年にわたる人間居住の歴史が明らかになった。自然資源に乏しいファイス島民は、島内で入手できる資源のみならず、近隣の島々から土器などの資源を持ち帰っていたことが明らかになった。
本発表では、大量に出土した魚骨の分析結果について報告、考察した。魚骨の鑑定は、頭骨の5種類、椎骨、尾骨ほかを用いて行い、少なくとも科レベルまで鑑定してMNI(最小個体数)を求めた。他の自然遺物の量と比較して格段に多い魚骨の量は、漁労がファイス島で重要な生業活動であったことを示している。また、その対象となった魚種が時期的に変化していたことも明らかになったので、本発表ではこの魚種の変化にとくに焦点を当てて考察を行った。
ファイスの漁労活動はサメやマグロなどの遠洋魚種と、ハタやブダイ類のリーフ周辺の魚種が圧倒的に多い。その中において、マグロは他の魚種に比べ、時期による著しい増減が認められた。初期の居住者は、ほとんどマグロを捕獲しなかったが、AD400~800にかけて激増する。そして、AD800以降はまた激減するという特徴的なパターンを示した。この顕著な変化を解釈するため、以下のような可能性に関して考察を加えた。
1)人類学的、あるいは文化的な変化による食習慣や漁労技術の変化
2)社会階層が発展し、限られた階層のみ消費したことに伴う変化
3)激減した時期が小氷期と重なるので、気候変動に伴う回遊魚の減少
これらのうち、1)は、他の遺物類には変化が見られない、2)はファイスのような小さなサンゴ島では階層化社会は発達しなかった、などからその可能性は低く、3)のような自然環境の変化、とくにEMSO(エルニーニョ・南方振動)を原因とする海水温の低下が、ファイス周辺に周遊してくるマグロの量そのものを減少させた可能性が高いことを指摘した。







