国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国際伝統音楽評議会(ICTM)「音楽とマイノリティ」研究グループ、第6回国際研究大会における研究発表

寺田吉孝

2010年7月20日~2010年7月25日 (ベトナム)

国際伝統音楽評議会は世界最大規模の音楽・芸能学会であり、傘下にある19の研究グループが各々隔年に国際大会を開催している。「音楽とマイノリティ」研究グループは、立ち上げに関わった研究者がヨーロッパに本拠を置いていたこともあり、これまでの5回の大会はすべてヨーロッパで開催されてきた。今回の大会は、初めてアジアで開催された点、また同評議会の「応用民族音楽学」研究グループと連携し、2つの研究グループの大会が連続するように日程を組んだ点が画期的であった。
 

大会では、計46本の研究発表が行われた。最初の3日間は大会の3つの全体テーマに沿ってセッションが組織され、その内訳は「教育における音楽とマイノリティ」(4)、「マイノリティ・コミュニティの維持における音楽の役割」(15)、「看過されたマイノリティ」(6)であった。大会4日目はホスト国であるベトナムの少数民族音楽研究に当てられ、14本の研究発表が行われた。
 

申請者は大会統一テーマの一つである「マイノリティ・コミュニティの維持における音楽の役割」に沿って、「クリンタン音楽とフィリピン系アメリカ人のアイデンティティ」のタイトルで発表をおこなった。発表では、フィリピンのムスリムが伝承してきたクリンタン音楽が、1960年代に北米に伝えられ、フィリピン系アメリカ人の間で最も頻繁に演奏される音楽ジャンルの一つとなった経緯を、彼らの北米における社会文化的位置との関連から考察した。この発表は、民博共同研究「マイノリティと音楽の複合的関係に関する人類学的研究」(代表:寺田吉孝)の成果の一部に基づくものであり、マイノリティ-マジョリティの関係は一元的ではなく、複数の軸に沿って音楽実践が行われる事例としてクリンタン音楽を取り上げた。