国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国際会議「モンゴルの文化遺産:サンクトペテルブルグおよびウランバートルにおける史料とアーカイブズコレクション」

小長谷有紀

2013年4月19日~2013年4月20日 (ロシア)

ロシア人研究者の関心がもっぱら古典的なチベット仏教学の観点に偏っており、チベット語・モンゴル語の言語学的な検討に集中しているのに対して、他の地域からの研究者は、さまざまな資料の利用の可能性を示した。たとえば、ハンガリーのシャルコジは、チベット仏教の研究の一貫として「地獄絵」をとりあげつつ、その描写が民族誌として利用できることを明示した。

日本から参加したのは、東京外国語大学AA研の中見立夫氏と小長谷であり、中見氏は日本におけるモンゴル学関係の資料を概説し、小長谷はモンゴル文化財の海外流出に関してレポートした。小長谷の発表は、文献資料ではないために、ひとり異質ではあったが、学術資料の国際的な公開という点で、本会議の意図に沿っており、今後の国際協力が期待された。とくに、ポーランドの研究者の発表が、ポーランド人の研究者がモンゴルから持ち帰った資料を利用するものでありながら、モンゴル人による研究成果を非難し、あたかも自国だけの宝物であるかのようにふるまう傾向にあったため批判が寄せられ、ひとたび流出した在外資料が誰のものか?という問題をなげかけることとなった。資料を現在所有する側と、資料の発祥地である側との二項対立ではなく、資料を利用するという第三者の立場のかかわりがあることによって、対立を避ける「円卓化」が可能になることがあきらかとなったことは、意義深い。