国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2002年2月7日(木)
みんぱく学術フォーラム「物語から現代世界を解き明かす」

  • 日 時:2002年2月7日(木) 13:00~16:20
  • 場 所:MIDシアター (大阪市中央区城見2-1-61)
  • 主 催:国立民族学博物館 / 産経新聞社・関西2100委員会
  • 参加費:無料
 

プログラム

司会進行 藤井龍彦教授
13:05~13:25 挨拶・講演 「ガリバー旅行記をめぐって」
石毛直道館長
13:25~14:00 講演1 「ある小さな歴史の物語 ─ 琉球人踊りの由緒と現在 ─」
笹原亮二助教授
14:00~14:35 講演2 「世界都市・故郷(ホーム)・異郷(アブロード ─バーネットの描いた世界」
森明子助教授
14:35~14:50 休憩
14:50~15:25 講演3 「中東イメージの原点としてのアラビアンナイト」
西尾哲夫助教授
15:25~16:00 講演4 「『脱近代』をめざした運動─出口王任三郎の『霊界物語』─」
廣瀬浩二郎助手
16:00~16:20 質問タイム
「ガリバー旅行記をめぐって」

講 師:石毛直道(国立民族学博物館館長)
民族学は世界の文化や社会を読み解く学問です。 すぐれた物語は、時間や空間を越えて、現代の私たちに語りかける世界を内包しています。物語の世界から、文明の諸問題を読みとる試みが、今回の公開フォーラムです。私は、民族誌としての「ガリバー旅行記」を紹介いたします。

「ある小さな歴史の物語─琉球人踊りの由緒と現在」

講 師:笹原亮二(国立民族学博物館助教授)
宮崎南部から鹿児島、種子島にかけて、十数カ所で琉球人踊りと呼ばれている民俗芸能がおこなわれています。琉球人踊りとは、各地の人々が琉球人、すなわち江戸時代に江戸登りをおこなった琉球慶賀使に扮して踊りを踊るものです。これらが旧島津藩領に分布していることから、江戸初期の琉球侵攻以降、琉球を支配した薩摩藩と琉球との関係を基に成立したと考えられています。事実各地には、藩主島津氏と琉球国に因んだ琉球人踊りの由緒が伝わっています。こうした由緒譚から、民俗文化として歴史認識や異文化認識の在り方を探ってみましょう。

「世界都市・故郷・異郷─バーネットの描いた世界」

講 師:森 明子(国立民族学博物館助教授)
バーネットは、『小公子』や『小公女』『秘密の花園』の作者です。私たちが子どものころ親しんだこれらのこれらの児童文学は、100年ほど前の西欧で書かれました。当時の西欧は、エンジンをフル回転させて、帝国主義とナショナリズムを推進していた世界でもあります。この人々が子どもたちに描いてみせたのはどんな世界だったのか、現代の大人になった私たちの目で読み直してみましょう。 「グローバル」と呼ばれる現代の私たちの文化を考える手がかりを期待して・・・・。

「中東イメージの原点としてのアラビアンナイト」

講 師:西尾哲夫(国立民族学博物館助教授)
18世紀に西洋社会に紹介されたアラビアンナイトはオリエンタリズムの背景となって、西洋とイスラムという二大文明の狭間に置かれた合わせ鏡に浮かびあがる幻を世界に提示しました。幻が現実を規定し、現実が新たな幻を導いたのです。文明を超えた他者接触は何をもたらしたのでしょう。文化の多様性を維持しつつ、新たな文明の可能性を模索する文化的安全保障こそが人類の未来を切り開くでしょう。アラビアンナイト受容史が教える知恵を検証します。

「『脱近代』をめざした運動─出口王仁三郎の『霊界物語』」

講 師:廣瀬浩二郎(国立民族学博物館助手)
大本教の出口王仁三郎は、日本の新宗教の「大本」に位置する思想家です。今回は彼の主著『霊界物語』を素材として、大本教の芸術・武道・エスペラントなどへの取り組みを紹介し、王仁三郎のライフ・ヒストリーや大本教弾圧事件の意味にも言及しながら、新宗教運動と近代日本史の関係を多角的に論じます。宗教の枠を超えて「脱近代」を志向した王仁三郎の人類愛善主義は、ひとつの人間解放論として評価できるものであり、多くの人々に21世紀文明の課題を読み解くヒントを与えてくれるでしょう。

 

当日の様子

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