国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2012年5月26日(土)
《機関研究成果公開》国際シンポジウム「アートと博物館は社会の再生に貢献しうるか?」

チラシダウンロード[PDF:276KB]
  • 日時:2012年5月26日(土) 16:00~18:00
  • 場所:国立民族学博物館 講堂
  • 使用言語:日本語・英語 ※同時通訳あり
  • 参加申し込み:日本アフリカ学会会員でない方も参加いただけます(無料)。定員に限りがありますので、事前に、お名前、連絡先を明記の上、メールで事務局までお申し込みください。
[日本アフリカ学会国際シンポジウム事務局]
mail:jaas49★idc.minpaku.ac.jp※★を@に置き換えて送信ください。
担当:小川さやか(内線8284)、飯田卓(内線8277)
   国立民族学博物館 Tel:06-6876-2151(代表)
 

趣旨

内戦を経験したアフリカのいくつかの地域で、いま、紛争を乗り越え、社会の平和を構築しようという動きが活発化しています。なかでも、モザンビークの動きには注目すべきものがあります。
モザンビークでは、1975 年の独立後1992 年まで続いた内戦の結果、戦争終結後も大量の銃器が民間に残されました。現在、この銃器を農具と交換することで回収し、武装解除を進めるとともに、回収された銃器を用いてアートの作品を生み出し、社会の安定化に貢献しようという、TAE(Transformação de Armas em Enxadas/Transforming Arms into Plowshares)「武器を農具に」というプロジェクトがすすめられ、内戦後の平和構築のモデルとして注目を集めています。アーティストたちの手で制作された作品は、いち早く大英博物館によって収集され、民博でも今年度の収集を計画しています。
今回のシンポジウムでは、このTAE のプロジェクトを創始された、モザンビーク聖公会のディニス・セングラーネ司教を基調講演者に招聘し、その活動についてご報告いただくとともに、多彩なパネリストの間で、アートと博物館という装置が平和構築や社会の安定にいかに貢献できるのかを議論したいと思います。
多数のご参加をお待ちしております。

大会実行委員長 吉田憲司

プログラム

16:00~16:10 趣旨説明 吉田憲司(国立民族学博物館)
16:10~16:40 基調講演 「TAE の活動の成立・展開・そして今後」 (仮題)
ディニス・セングラーネ司教 (モザンビーク聖公会)
16:40~18:00 パネル・ディスカッション 司会: 吉田憲司
パネリスト:
ディニス・セングラーネ司教
クリス・スプリング (大英博物館)
栗本英世 (大阪大学)
小田博志 (北海道大学)

パネリスト紹介

ディニス・セングラーネ司教 The Right Revd Dinis Salomão Sengulane DD, Bishop of Lebombo, Anglican Church of Southern Africa

モザンビーク聖公会レボンボ教区・司教
1989 年以降、政府とモザンビーク民族抵抗運動(RENAMO)の平和交渉に尽力し、内戦を終結に導いた。また、内戦終結後は、聖書にある「剣をクワに」という章句にヒントを得て、民間に大量に残された武器を農具や自転車と交換し、さらにはその回収された武器を用いてアートの作品を制作するというTAE(Transformação de Armas em Enxadas/Transforming Arms into Plowshares)「武器を農具に」というプロジェクトを創始し、活動を続けてきた。
一連の功績により、全アフリカ・キリスト教教会協議会平和賞、DIAKONIA平和賞など、多数の賞を受賞。

クリストファー・スプリング Christopher Spring

大英博物館・、アフリカ・オセアニア・アメリカ部門キュレイター、アーティスト
北アフリカ、東アフリカ、南部アフリカ等でフィールドワークを継続する一方、2002 年に、TAE のプロジェクトによって生み出された作品「武器の玉座」(Throne of Weapons)に目をとめ、大英博物館に収集。さらにTAE のアーティストたちとの意見交換を通じて新たに制作された「生命の木」(Tree of Life)を2004 年以降、大英博物館で展示。著書に、African Art in Detail (2009), Angaza Africa: African Art Now (2008) など。

栗本英世 Eisei Kurimoto

大阪大学大学院人間科学研究科教授 社会人類学専攻
エチオピア、南スーダンのナイル系諸民族集団に関する民族誌的研究に従事する一方、集団間の紛争や難民問題についての政治人類学的・歴史人類学的研究を進める。著書に『民族紛争を生きる人びと―現代アフリカの国家とマイノリティ』 (1996)、『紛争後の国と社会における人間の安全保障』(編著、2009)など。
今回のパネルでは、大英博物館で「生命の木」(Tree of Life)を目にし、自国での将来の平和構築に大きな示唆を得たという南スーダン文化省次官、ロヨラ・メリーマウント大学(米国)教授のジョク・マドゥット・ジョク(Jok Madut Jok)氏からのメッセージを栗本氏にご紹介いただきます。

小田博志 Hiroshi Oda

北海道大学大学院文学研究科准教授 文化人類学専攻
平和をテーマとして、ドイツにおける市民による歴史和解と平和構築についてエスノグラフィーの手法に基づいて研究する一方、それらの知見を日本や東アジアの文脈にどう応用できるか、さらには平和をいかに博物館展示の中で表象するかを実践的に追究している。著書に『エスノグラフィー入門 〈現場〉を質的研究する』(2010)、『質的研究の方法 いのちの〈現場〉を読みとく』(共著、2010)など。

吉田憲司 Kenji Yoshida

国立民族学博物館教授 博物館人類学専攻
南部アフリカを中心に、仮面や儀礼、キリスト教独立教会のフィールドワークを続ける一方、博物館・美術館における文化の表象のあり方を研究を進めている。著書に、『文化の発見』(1999)、『博物館概論』(2011)など。