国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2006年5月27日(土)
公開共同研究会「開発とNGO」

  • 日時:2006年5月27日(土) 13:00~18:30
  • 場所:国立民族学博物館 第5セミナー室
  • オーガナイザー:滝村卓司(JICA)
 

趣旨説明

国立民族学博物館の研究ブログラム「先住民と開発」の趣旨に従い、文化や規範といった可視化できないものを、開発援助のもう一つの実践者であるNGO(Non-Governmental-Organization)がどのように捉え、関与しているのかについて議論する。具体的には、開発協力の領域において重要なアクター(行為主体/行為遂行者)となっているNGOの活動に焦点をあて、NGO側からの報告と、それに基づく議論を行う。

NGOが担う開発協力プロジェクトは、政府開発援助(ODA)のそれに比して、小規模ながらも対象住民への直接的な裨益効果という点で高く評価されてきた。特に、90年代以降に積極的に取り入れた参加型(participatory)で且つボトムアップ(bottom-up)の手法は、草の根レベルのきめの細かい活動の展開を理論的にも可能にするものであった。しかし、参加型、ボトムアップという手法は、対象社会の文化/規範といったものに直接/間接的に関わるものでもあった。そして、昨今のNGOは自らを「ファシリテーター」「カタリスト」と称し、プロジェクトの形成、計画、実施、評価の各プロセスにおける住民の主体性を重視し、住民の主体的学び/気づきに留意して協力活動を展開してきたと言える。

他方、ジェンダー平等や権利的アプローチ(Rights Based Aproach)等、「民主的社会」が構築してきた価値の領域においては、開発プロジェクトが持ち込もうとする考え方や方法が、対象社会の文化的、社会的、規範的価値観等と衝突し、場合によっては強い軋轢を惹起する可能性を孕んでいる。

草の根レベルで、住民の目線に立った活動を旨とするNGOの開発協力活動はこのような問題群をどのように認識し、どのように対処しているのか。また、人類学は社会的装置としての行政による開発行動ではなく、自発的な「草の根レベル」「市民レベル」の開発協力活動にどのように貢献できるのか。NGO活動の現場からの報告と問題の提起(あるいは課題の提出)を行い、人類学研究者からのコメントに基づき、議論を行なう。そして、人類学、NGO活動、(場合によってはODA)が今後どのような恊働の可能性があるのかを議論する。

コーディネーターとしては、双方にとって有意味な相互学習の場になることを期待したい。(滝村卓司)

プログラム

2006年5月27日(土)
13:00~13:40 滝村卓司(JICA)
 「JICAとNGO活動の連携-人間の安全保障の観点から」
13:45~13:55 質疑応答
14:00~14:45 秋吉恵(HANDS)
 「住民を信頼するということ;ブラジルアマゾン地域保健強化プロジェクト」(仮題)
14:45~14:55 まとめとディスカッション
14:55~15:20 休憩
15:20~16:00 金丸智昭(PWJ)
 「コーヒーという接点を通して」(仮題)
16:00~16:15 質疑応答
16:20~17:00 永岡宏昌(CanDo)
 「ケニア=ムインギ県コミュニティーエンパワーメントプロジェクト保健教育活動の経験から」(仮題)
17:00~17:15 質疑応答
17:15~17:30 休憩
17:30~18:30 滝村卓司(JICA)
 総合討論