国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

石毛直道館長・栗田靖之教授・杉田繁治教授 退官記念講演会

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2002年3月19日開催

栗田靖之教授 退官記念講演会

経歴ご紹介 中牧弘允

講演風景 それでは、栗田靖之教授の紹介をさせていただきます。

栗田靖之教授は、昭和42年、京都大学文学部を卒業後、京都大学の大学院で心理学を専攻され、そしてその後昭和48年に大阪女子大学に就任いたしまして、助教授を経て、昭和51年10月に国立民族学博物館助教授として民博に来られました。その後、平成3年に教授に昇進し、平成元年からは総研大教授も併任されておられます。また、平成6年から平成12年までは情報管理施設長を併任されておられます。平成12年からは博物館民族学研究部長を併任されて、今回定年退官となっておられます。

先ほど私は、栗田教授は京都大学文学部の卒業と申しましたけれども、実は山岳部の卒業であります。かの有名な京大山岳部の出身ということで、特にヒマラヤのブータンの研究の先覚者といいますか、先鞭をつけてこられまして、「ブータン、ヒマラヤの生業形態の多様性」という論文をはじめといたしまして、数多くの論文、エッセーを執筆されました。さらに、放送大学の教科書にも「ブータンにおける開発と自然保護」という論文を発表され、後進の教育活動にも従事するようになりました。

また、ブータン王国のパロにありますブータンの国立博物館に対する日本政府からの文化無償援助にも積極的にかかわってこられまして、特にその改修計画に貢献されたことは大変功績が大でございます。

ブータン王国というのはご存じのように緩やかな近代化といいますか、グローバリゼーションが進む中でゆっくり独自の道を歩んでいる、そういう国の性格をよく理解され、広く世界にブータンを紹介されてきた功績は多大なものがあると思います。

栗田教授は、ブータン研究のみならず現代日本文化の諸相についても研究をおこなってこられまして、1970年代におきましては、現代日本の家庭生活、特に生活材の悉皆調査という手法をとりまして、いくつかの論文を執筆されておられますけれども、そういった一連の業績に対しまして、昭和54年には日本生活学会から第5回の今和次郎賞を受賞されておられます。

また、民博が主催するところの特別研究、共同研究、シンポジウムにも積極的にかかわってこられまして、特に日本人の贈答に関する研究につきましては、「日本人の贈答」という本を伊藤幹治先生と共編で出されておられますし、また共同研究におきましては、アッサム地域の民族史研究を通して「北東インド諸民族の基礎資料」という民博の別冊を刊行されておられます。さらにまた、特別研究「日本文化における伝統と変容」では、「日本人の人間関係」というテーマのシンポジウムを実行委員長として主催され、文明学部門におきましては、「知と教養の文明学」というシンポジウムの実行委員長を務められ、これは日本語と英語でも刊行されておられます。

また、博物館活動におきましては、標本資料の収集のみならず、特別展「大インド展」の実行委員長を務めるとともに、情報展示のプロジェクトリーダーといたしまして、民博電子ガイドシステムの開発とか、あるいはものの広場、映像の広場の開設に尽力されました。

同時に情報管理施設長として、並々ならぬ努力を傾注されました。また、平成12年からは博物館運営委員会の委員長として、博物館活動の推進役の役割を担ってまいりました。

私などが間近で栗田教授のそういった姿を見ておりますと、学術研究の面におきましては、特に科学研究費でカリフォルニアの調査をしたときにご一緒させていただいたり、あるいはNIRAのプロジェクトで「文化首都の研究」のときに同行させていただいたりいたしまして、その学恩に触れることもございました。

また、博物館活動におきましては、様々な組織運営の妙といいますか、そういうことを学ばせていただきました。非常に穏やかに人に対する接し方、メンバーを仲間として遇するということ、そして人の意見をよく聞いて、しかしながらある決断をするというのは、これが山岳部の方の持っておられる特質かと思いますけれども、先例にならったり、あるいは一般論、特に栗田先生の場合には心理学的なうんちくを傾けた一般的な基準に基づいて判断をされたり、あるいは大局的な見地から状況を読み取るというような、そういう判断が民博のいろんな危機を救ったと私は思っております。特に、連帯感の非常に強い山岳部の伝統を引いておられるんでしょうか、指揮命令系統をきちんとするとともに、山に登ったら同じ仲間だという、そういう意識というものが伝わってくるような組織運営のされ方をしておられたように思います。

このように、数々の研究業績並びに博物館活動を中心とした民博への貢献というのは、私どもにとって、先輩として学ぶべきところが非常に多かったと思います。惜しんでも余りある教授の、いよいよ退官記念講演のときを迎えましたけれども、きょうはゆっくりとブータンのペースで皆さんとともに最後の講演を拝聴したいと思います。

それでは栗田先生、よろしくお願いいたします。(拍手)