国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2012年7月28日(土) ~7月29日(日)
手話言語と音声言語のシンポジウム(1)「言語の記述・記録・保存」

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  • 2012年7月28日(土) 
    • 時間:13:00~18:00
    • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
    • 定員:60名
  • 2012年7月29日(日)
    • 時間:9:00~17:30
    • 会場:国立民族学博物館 講堂
    • 定員:350名
  • 参加費 無料
  • 要事前申込 お問い合わせ・申し込みはメールもしくは郵送
  • 申し込み方法:
    • e-mail:
      SSL★minpaku.ac.jp ※★を@に置き換えて送信ください。
      名前(漢字/ローマ字)、住所、電話もしくはFAX番号、メールアドレス、手話使用の有無、希望日を明記のうえ、件名を「手話シンポジウム参加申し込み」として送信
    • 申込書の郵送:
      (宛名:国立民族学博物館 菊澤研究室)
      名前(漢字/ローマ字)、住所、電話もしくはFAX番号、メールアドレス(あれば)、手話使用の有無、希望日を明記し、切手貼付返信用封筒を同封して郵送。
  • 英語/アメリカ手話/日本語/日本手話
  • コーディネーター 菊澤律子(国立民族学博物館)/大杉豊(筑波技術大学)
  • 主催 人間文化研究機構/国立民族学博物館
  • 共催 筑波技術大学
  • 協賛 香港中文大学
  • 後援 日本言語学会
       日本手話学会
       社会福祉法人全国手話研修センター 日本手話研究所
       財団法人 全日本聾唖連盟
 

趣旨

言語の記述・記録・保存に関するラウンドテーブルおよびシンポジウムを開催する。特に、一般に情報量の少ない手話言語に焦点をあて、音声言語の状況との対照から、国内外の研究現場および話者コミュニティーにおける現状を総合的に把握し、今後の方向性を明らかにすることを目的とする。

手話については、音声言語と比べ、フィールドワークによる記述研究が少なく、また、話者自身が記録・保存に取り組む場もほとんどない。その対応の必要性および緊急性は、国際的に強く認識されており、2011年7月にみんぱくで開催された国際ワークショップ「手話の歴史言語学」をうけ、国内外の研究ネットワーク形成の必要性が提案された。今回のシンポジウムは、その具体化に加え、手話研究を音声言語研究と意識的に付き合わせ、言語の総合的な把握を試みる点で、従来の手話に関する取り組みとは異なる。

本シンポジウムは一般公開とする。

プログラム

7月28日(土) 13:00~18:00 国立民族学博物館・第4セミナー室
参加者によるディスカッション「手話言語学に関する国際研究拠点ネットワーク構想の具体化にむけて」
同時通訳(英語/アメリカ手話/日本語/日本手話)付き
13:00~13:10 ごあいさつ
13:10~13:40 「手話言語学研究拠点ネットワーク構想について」
菊澤律子(国立民族学博物館)/大杉豊(筑波技術大学)
講演要旨 Abstract
13:40~13:50 質疑応答
13:50~14:10 「ハワイ大学マノア校における言語の記録と保存活動」
ケネス・L・レイ(ハワイ大学マノア校)
講演要旨 Abstract
14:10~14:20 質疑応答
14:20~14:50 休憩
14:50~15:50 「手話言語の記録と保存における鍵:ろう学生のための手話言語学教育プログラム」
ジェームス・ウッドワード(香港中文大学)
講演要旨 Abstract
「インドネシアの手話言語の保存と記録:アジア太平洋手話言語学研究教育プログラムにおける経験」
ローラ・レスマナ・ウィジャヤ(香港中文大学)
アディ・クスモ・バロト(香港中文大学)
講演要旨 Abstract
15:50~16:05 質疑応答
16:05~16:30 休憩
16:30~16:45 「イギリス手話を記録する:イギリス手話コーパス・プロジェクト」
アダム・シェンブリ(ラ・トローブ大学)他
講演要旨 Abstract
16:45~18:00 ディスカッション
7月29日(日) 9:00~17:30 国立民族学博物館・講堂
手話言語と音声言語のシンポジウム(1)「言語の記述・記録・保存」
同時通訳(英語/アメリカ手話/日本語/日本手話)付き
8:30~9:00 受付
9:00~9:15 開会の辞・ご挨拶

第一部 手話のフィールド言語学

9:15~10:00 「ギャローデット大学におけるサウジアラビア手話のフィールドワーク・メソッド」
ヴァイオラ・コザック、富田望(ギャローデット大学)他
講演要旨 Abstract
10:00~10:15 コメント: 窪薗晴夫(国立国語研究所)
講演要旨 Abstract
10:15~11:00 <北アメリカ>
「未踏地の調査:イヌイット手話における色彩名称・親族名称・数詞の記録と表記」
ヨーク・スハウト(アムステルダム大学)
講演要旨 Abstract
11:00~11:15 コメント:箕浦勝信(東京外国語大学准教授)
講演要旨 Abstract
  休憩
11:45~12:30 <インドネシア>
「カタ・コロック・コーパス:ろう者と聴者が共生するコミュニティーの手話を記録する」
コニー・ドゥヴォス(マックス・プランク心理言語学研究所)
講演要旨 Abstract
12:30~12:45 「インドネシアでの言語調査で文字のない言葉を文字に起こす」
稲垣和也(京都大学)
講演要旨 Abstract
  休憩
13:45~14:30 <南アジア>
「危機に瀕した「村落手話」の記録における聾フィールドワーク調査者と現地コミュニティー」
ウルリケ・ゼシャン (セントラル・ランカシャー大学)
講演要旨 Abstract
14:30~14:45 コメント:桐生和幸(美作大学)
講演要旨 Abstract
14:45~15:30 <オーストラリア>
「音声言語代替手話:中央オーストラリアで発達した現地手話の記述と記録」
ジェニファー・グリーン(メルボルン大学)
講演要旨 Abstract
15:30~15:45 コメント: トレボー・ジョンストン(マッコーリー大学)
  休憩
16:15~17:15 ディスカッション 司会:ケネス・レイ(ハワイ大学)
17:15~17:30 閉会の辞
7月30・31日 10:00~15:00 フォローアップ・ミーティング

研究成果の概要

本シンポジウムは、手話言語と音声言語の国際シンポジウムシリーズの第1回という位置づけで行った。使用言語は英語、アメリカ手話、香港手話で、内容を一般参加者にも公開するため、日本語、日本手話の同時通訳を加えて行った。参加者数は初日(参加登録は定員で締め切り)は122名、2日目は204名の参加となった。

1日目は、第4セミナー室でのラウンドテーブル会議とし、菊澤(民博)、大杉(筑波技術大学、民博特別客員)より、「手話研究に関する研究拠点ネットワーク構想」の説明を行い、各国から招待した手話言語学や言語の記述・記録・保存に関する専門家からの提案や意見を聴くためのきっかけとした。また、ネットワーク構想参加の同意を得ている香港中文大学およびハワイ大学言語学部から、関連教育課程や研究活動について、また前者の教育過程で学んでいるろうの学生によるプレゼンテーションが行われた。最後に、手話言語に関するコーパス作成に関する紹介があった。各発表後の質疑応答は、時間および通訳の関係で事実関係確認のみに限定したが、ディスカッションの時間には、一般参加者からの質問や意見に対してディスカッサントが自由に回答する形で進めた。一般からの質問等の受付は、質問フォーム(日本語・英語)およびビデオ撮影(日本手話・アメリカ手話)を通して行った。

2日目のシンポジウムでは、手話のフィールドワークの現場からさまざまな報告を受けた。報告は手話に関するものを中心とし、各地の手話の記述・記録に携わる研究者からの報告を依頼、同地域の音声言語の研究者からのコメントを組み合わせることで、手話言語と音声言語の研究者間での情報交換の糸口とした。一日目同様、一般参加者を含むフロアからの質問を受ける形でのパネル・ディスカッションを行い、まとめとした。

本シンポジウムのすべての内容はインターネットで生中継を行った。これは、総合研究大学院大学学融合推進センターのプロジェクト「手話言語学を世界へつなぐ―メディア発信と e-learning 開発に向けて―」(研究代表者 菊澤律子)によるもので、合計アクセス数600、各配信やのアクセス数は常時、12から30を数えた。国内外でのインターネットによる聴講者からも、修了後、さまざまなコメントや感想が届き、配信側にとっても有意義な試みとなった。

次回のシンポジウムは、2013年9月末開催を検討している。