国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2018年11月30日(金) ~12月2日(日)
国際シンポジウム「世界の捕鯨と捕鯨問題」

イヌピアットの捕鯨(2010年5月アラスカ州バロー近郊)

  • 日 時:2018年11月30日(金)~12月2日(日)
    • 11月30日(金)10:30~17:20
      一般公開国際シンポジウム「世界の捕鯨と捕鯨問題」
      [第4セミナー室/英語のみ、同時通訳無し]
    • 12月1日(土)10:30~17:20
      一般公開国際シンポジウム「世界の捕鯨と捕鯨問題」
      [第4セミナー室/英語のみ、同時通訳無し]
    • 12月2日(日)10:30~17:15
      一般公開講演会「世界の捕鯨を考える」
      [第4セミナー室/日本語のみ、同時通訳無し]
  • 場 所:国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 使用言語:英語(第1日目・第2日目)および日本語(第3日目)
  • 一般公開(参加無料/申込不要)
  • 全体テーマ 「世界の捕鯨と捕鯨問題」
  • お問い合わせ:共同研究会 inuit●idc.minpaku.ac.jp(●を@に置き換えてください)
 

シンポジウムの趣旨

鯨類とは、体長1.5メートルのネズミイルカから体長20メートルにもおよぶシロナガスクジラまで多様な80数種のクジラからなる。人類は遅くとも5000年前には小型鯨類を捕獲し、利用していた。そして世界各地で大型鯨類の捕獲が始まったのは今から1000年ぐらい前のことである。このように人類と鯨類の関係は歴史的に長い。この関係は、人類が鯨類を資源として利用するという事実に基づいていたが、徐々に変化し始めた。
第2次世界大戦後には、競争的な商業捕鯨の結果、大型鯨種の頭数が激減するに従い、多くの国々が商業捕鯨から撤退して行った。そして1972年にストックホルムで開催された国連人間環境会議では米国が商業捕鯨の10年間のモラトリアムを提案した。この提案は採択されなかったが、1982年には国際捕鯨委員会(International Whaling Commission)総会において捕鯨をめぐるモラトリアム提案は承認され、ホッキョククジラを含む13種類の大型鯨類の商業捕鯨が中断されることになり、現在もその中断は継続中である。また、この動きの背後では、多くの環境保護団体や動物愛護団体が反捕鯨活動を、メディアを利用してグローバルに展開してきた。このような経緯を経て、人類と鯨類の関係は20世紀後半ごろから、資源としての利用から保護の対象へとその関係が大きく変わってきた。
一方、国際捕鯨委員会は、ロシアや米国、グリーンランド、ベクウェイ島の先住民の捕鯨を条件付で認めているし、国際捕鯨委員会に加盟していないカナダ政府はイヌイットの捕鯨を条件付で認めている。また、国際捕鯨委員会はイルカ漁などを管轄外にしている。しかし、WWFやGreen Peaceなど国際的な環境保護団体や動物保護団体が反捕鯨運動を展開し、多くの政府や一般市民に大きな影響を与えることによって、商業捕鯨の再開は困難になるとともに、世界各地の先住民生業捕鯨や地域漁民に小型鯨類捕獲などの存続にも影響が出始めている。
このシンポジウムでは、現在の捕鯨をIWCの管理下にあるものとそうでないものに大別し、世界各地の捕鯨の現状と問題点を報告し、検討を加える。また、それらに関係する国際政治、環境団体や動物愛護団体の反捕鯨運動の動き、捕鯨をめぐる倫理問題を取り上げ、現在の捕鯨および捕鯨問題を多面的に検討する。このシンポジウムを通して多くの方が人類と鯨類の関係や捕鯨について理解し、学際的に再考することを期待したい。
このシンポジウムは、最初の二日間は英語による国際シンポジウムとし、最終日は日本語による一般公開シンポジウムとする。
なお、このシンポジウムは、国立民族学博物館共同研究「捕鯨と環境倫理」および科研基盤研究 (A)「グローバル化時代の捕鯨文化に関する人類学的研究」(課題番号15H02617)の研究成果の発表である。

 

プログラム

第1日目 プログラム(英語)*報告25分+質疑応答20分
10:30~11:15 「総論――世界の捕鯨の歴史と現状」
発表要旨
 岸上伸啓(国立民族学博物館)
セッション1 「先住民・地域民による捕鯨」
11:15~12:00 「アラスカ北極圏での生存漁労・狩猟経済における北極鯨漁の役割と重要性」
発表要旨
 生田博子(九州大学)
12:00~13:00 昼食
13:00~13:45 「21世紀初頭のチュコト半島の先住民捕鯨」
発表要旨
 Eduard Zdor(米国・アラスカ大学フェアバンクス校)
13:45~14:30 「グリーンランドの捕鯨」
発表要旨
 本多俊和(放送大学)
14:30~15:00 休憩
15:00~15:45 「岩手県のイルカ漁」
発表要旨
 吉村健司(東京大学)
15:45~16:30 「フェロー諸島における現在の捕鯨、その歴史と挑戦」
発表要旨
 Russell Fielding(米国南部大学)
16:30~16:40 休憩
16:40~17:20 コメントと総合討論
懇親会(第3セミナー室)
第2日目 プログラム(英語)*報告25分+質疑応答20分
セッション2 「商業捕鯨の現状」
10:30~11:15 「ノルウェーにおける鯨肉サプライチェーン」
発表要旨
 赤嶺淳(一橋大学)
11:15~12:00 「再興するナガスクジラ捕鯨、衰退するミンククジラ捕鯨―アイスランドにおける商業捕鯨の現況と課題―」
発表要旨
 浜口尚(園田女子学園大学短期大学部)
12:00~13:00 昼食
セッション3 「捕鯨をめぐる国際政治、社会運動、動物倫理」
13:00~13:45 「捕鯨政治とEU:『鯨類の生と死に対する管理』とその政治的含意」
発表要旨
 高橋美野梨(北海道大学)
13:45~14:30 「NGOの反捕鯨運動」
発表要旨
 河島基弘(群馬大学)
14:30~15:00 休憩
15:00~15:45 「捕鯨を実行する上での動物福祉」
発表要旨
 Egil Ole Øen(ノルウェー・野生生物管理サービス)
15:45~16:30 「捕鯨の倫理的ディレンマー現在の主張と位置」
発表要旨
 Jes Lynning Harfeld(デンマーク・オールボー大学)
16:30~17:20 コメントと総合討論
「コメント」伊勢田哲治(京都大学)
第3日目 プログラム
一般公開講演会「世界の捕鯨を考える」(日本語)
10:30~11:15 「世界の捕鯨の歴史と現状」
発表要旨
 岸上伸啓(国立民族学博物館)
11:15~12:15 「アフター・ザ・コーブ ― 逸脱する捕鯨推進と文化人類学の功罪:『ザ・コーブ』の後から見えてきたいくつかの事柄について ― 」
発表要旨
 臼田乃里子
(捕鯨関連民族誌映画放映あり)
12:15~13:30 昼食
13:30~14:00 「日本の小型沿岸捕鯨」
発表要旨
 石川創(下関科学アカデミー)
14:00~14:30 「クジラと鯨の溝をめぐって」
発表要旨
 倉澤七生(イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク)
14:30~14:45 休憩
14:45~15:15 「世界の先住民生存捕鯨―現況と課題―」
発表要旨
 浜口尚(園田女子学園大学短期大学部)
15:15~15:45 「韓国の反捕鯨運動」
発表要旨
 李善愛(宮崎公立大学)
15:45~16:15 「クジラをめぐる国際政治」
発表要旨
 石井敦(東北大学)
16:15~17:15 総合討論(質疑応答)
「コメント」佐久間淳子(ジャーナリスト)

[お問い合わせ]
国立民族学博物館 共同研究会
inuit●idc.minpaku.ac.jp(●を@に置き換えてください)