国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

文化資源研究センター

文化資源研究センターは、文化資源の体系的な管理と情報化、およびその共同利用や社会還元に向けて調査や研究開発をおこなうとともに、実際に事業を推進する際の企画・調整をおこなうことを目的として、平成16年4月に設置されました。

スタッフ

センター長
野林厚志[民族考古学・台湾研究]
教授
信田敏宏[社会人類学・東南アジア研究]
吉田憲司[博物館人類学・アフリカ研究]
准教授
伊藤敦規[社会人類学・アメリカ先住民研究]
上羽陽子[民族芸術学・染織研究・手工芸研究]
林勲男[社会人類学・オセアニア研究]
日高真吾[保存科学・保存修復]
福岡正太[民族音楽学・東南アジア研究]
山本泰則[博物館情報学]
助教
川瀬慈[映像人類学]
寺村裕史[文化情報学・情報考古学]

 

活動報告

[表紙img]文化資源研究センター活動報告2015[PDF:23.1MB]

 
 

目的

文化資源には、人間の文化にかかわるさまざまな有形のモノやそれについての情報のほか、身体化された知識・技法・ノウハウ、制度化さ れた人的・組織的ネットワークや知的財産など、社会での活用が可能な資源とみなされるものが広く含まれます。こうした文化資源を人類共有の財産とすることで、グローバル化する世界で人びとが異なる文化への理解を深め、互いに共生していくための基盤を作り出そうというのが、文化資源研究センターのめざすところです。

文化資源は、調査・収集されることでその価値が顕在化され、体系的な資源管理と情報化を経て、共同利用や社会還元に供することが可能となります。これらの各ステップはまた、社会連携や国際貢献の枠組みのなかで推進されます。このような一連のステップは、下図のようなフローの形で表現できます。

文化資源の収集から社会還元へのフロー

各ステップは、それぞれ、諸問題を理論的に解明する「基礎研究」、それにもとづいて方式・体系・技術の開発やそのための予備調査などをおこなう「開発研究」の段階を経て、実際の「事業」として展開されます。
文化資源研究センターは、上記の各ステップに関わる先進的な基礎研究・開発研究と事業推進する際の企画・調整をおこないます。

なお、現在、民博では、文化資源研究センターが中心となり、全館的な取組みとして、本館常設展示の刷新の作業を進めています。開 館以来30年が経ち、世界の状況や学問のありかた、さらには観客が民博に期待するものも、大きく変化しました。こうした変化に対応し大学共同利用機関としての機能を最大限に活用して、国内外の大学や博物館と共同しつつ、最新の研究成果を広く社会と共有するための展示を新たに構築しようというのが、そのねらいです。
新たな展示は、展示に関わる三者、つまり展示の作り手としての研究者、展示の対象となる文化の担い手、そして展示を見る側としての来 館者のあいだの、相互の交流と啓発の場、すなわちフォーラムとなることをめざしています。また、今回の改修では、これまでの個々の地域文化の特徴を示す展示から、それぞれの地域と世界とのつながりを示す展示へと更新し、グローバル化の進展にともなう世界の動態を 映し出す展示の実現をはかります。 すでに、そのさきがけとして、平成19年4月には、本館展示全体の導入部となるイントロダクション展示を更新しました。今後も、利用者 の多様な要求にこたえるべく、順次、各地域展示、通文化(クロス・カルチュラル)展示を更新していく予定です。

 

プロジェクト方式の導入

文化資源に関する開発研究や事業は、「文化資源プロジェクト」として運営されます。そのねらいは、目的、計画、経費、責任を明確にし、それぞれのプロジェクトの成果を的確に評価して、さらなるプロジェクトの発展を図ることにあります。文化資源プロジェクトは館内外の研究者の運営のもとで遂行されますが、文化資源研究センターや情報管理施設の専門的スタッフの支援・協力を受けて、効率的かつ機動的に推進されています。
開発研究や事業と、それを推進する体制との関係は、次のように整理できます。

プロジェクト方式の導入
 

文化資源プロジェクト

文化資源に関する各ステップに対応して、文化資源プロジェクトは、(1)フィールドなどにおいて標本資料、映像音響資料や文字資料の収集および各種の情報収集をおこなう調査・収集分野、(2)文化資源の保存と管理を目的とする資料管理分野、(3)各種資料の情報化やマルチメディア・コンテンツ作成をおこなう情報化分野、(4)国立民族学博物館内外での展示企画と運営をおこなう展示分野、(5)国内外の研究機関や博物館、教育機関、地域社会、産業界などとのネットワーク形成とそれによる文化資源の開発と利用を図る社会連携分野に大別されます。各プロジェクトは、本館の研究教育職員を中心としながら、それぞれ相互に連携して推進されます。

各分野プロジェクト相互の関係
各分野プロジェクト相互の関係

このほかに、文化資源研究センターが中心となっておこなうプロジェクトを、いくつか紹介します。

 
JICA課題別研修: 博物館学コース(Comprehensive Museology)運営
このコースは、博物館の運営に必要な、収集・整理・保存・展示・ 教育に関する実践的技術の研修を実施し、博物館を通じて各国の文化の振興に貢献できる人材を育成す るものです。従来から、JICA集団研修「博物館技術コース」の一環として、本館で約3週間にわたり「博 物館学国際協力セミナー」を実施してきましたが、平成16年度からは、本館が国際協力機構(JICA)から 全面的委託を受け、滋賀県立琵琶湖博物館と共同で、4ヶ月にわたる研修を「博物館学コース」として 実施しています。毎年、10カ国前後の国から計10名の研修生を受け入れています。
 
学習キット「みんぱっく」
学校機関や各種社会教育施設を対象に、本館の研究成果をわかりやすく伝えることを目的として「みんぱっく」の貸出を実施しています。「みんぱっく」は世界の国や地域の衣装や楽器、日常生活で使う道具や子どもたちの学用品などをスーツケースにパックしたもので、平成26年4月現在で13種類21パックを用意しています。
【貸出パック】
  • 極北を生きる─カナダ・イヌイットのアノラックとダッフルコート
  • アンデスの玉手箱─ペルー南高地の祭りと生活
  • ジャワ文化をまとう─サルンとカイン
  • イスラム教とアラブ世界のくらし
  • ブータンの学校生活
  • ソウルスタイル─子どもの一日
  • インドのサリーとクルター
  • ブリコラージュ
  • アラビアンナイトの世界
  • アイヌ文化にであう
  • アイヌ文化にであう2―樹皮からつくる着物
  • モンゴル―草原のかおりをたのしむ
 
博学連携教員研修ワークショップ2007
民博の展示場や所蔵資料を教育活動に活用した具体的な実践例をもとに、博学連携のさまざまな可能性をさぐります。毎年夏休みに行われ、30周年記念事業として行われる今年は3回目です。
 
ボランティア活動
みんぱくミュージアムパートナーズ(MMP)は、本館の博物館活動の企画や運営をサポートする自律的な組織として平成16年9月に発足した団体であり、館内で視覚障害者の展示場案内、休日、祝日等のイベント企画、運営といった多岐に広が る活動を本館との協働で進めています。
地球おはなし村は、平成15年に本館で開催した特別展「西アフリカおはなし村」を契機とし、平成17年10月に発足した団体です。館内でアフリカの音楽活動や昔話の語り活動等を行っており、国際児童文学館や近隣の児童センター、小学校および児童福祉施設などでも広く活動を行っています。