国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

トランス・ボーダー・コンフリクトの人類学的研究(2002.4-2003.3)

新領域開拓研究プロジェクト 代表者 庄司博史(民族社会研究部)

研究プロジェクト一覧

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第9回研究会

「海外への労働力輸出政策」
   日時 2004年3月4日(木)午後2時~5時30分
   場所 国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)、第6セミナー室(2階)

研究会の趣旨
庄司博史、石井正子

報告1
小ヶ谷千穂(日本学術振興会/一橋大学)
「フィリピンの海外雇用政策に見る、『脱領域化』する国家政策と女性」
代表的な労働者の送り出し国として積極的な海外雇用政策を展開するフィリピンは、海外雇用の進展や海外労働者の構成の変化に伴って、さまざまな政策的対応を行ってきた。報告では、フィリピン政府の過去30年間の海外雇用政策および近年の対在外国民への政策動向を概観しながら、国家政策の「脱領域化」とも呼べる側面と、その中での女性労働者の位置づけについて論じてみたい。

報告2
小高 泰(大東文化大学国際関係学部)
「ベトナムにおける労働力輸出政策とその現状」
社会主義諸国への労働力派遣から資本主義諸国へのそれへと移行したベトナムでは、国策として積極的に労働力輸出政策を推進している。その目的は失業者対策と低所得者層の救済策であるが、未熟な単純労働者の大量派遣をするばかりで、経済・社会問題の根本的な解決に至っていないのが現状である。それどころか、派遣機関による不透明な経営、労働者の渡航前の多額の借金、滞在国での大量失踪等の問題を生んでいる。政府の政策と労働力派遣の現状を報告したい。

コメント
石井正子(民博・地域研究企画交流センター)

質疑応答・討論

第8回研究会

「はざまに生きて:国境の形成と人々」
本発表は、タイ・マレーシア国境という空間を、政治的な概念で認識するのではなく、むしろそこを日常空間として認識しながら、華人という視点を通して国境という空間性を再考する試みである。タイ・マレーシア国境、特にナラティワート・クランタン国境の町に焦点を置き、国境という空間で生み出される様々な「はざま」の中で生きる華人の、そこから生み出される差異を巧みに消費し交渉する、積極的な個の主体性を映し出す。マレー・ムスリム世界として色濃いクランタンに生きる華人が、国の「はざま」、宗教の「はざま」のなかで日々いかに生きているかを見つめる。
   日時 2003年12月15日(月)午後3時~5時30分
   場所 国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)、大演習室(4階、参加無料)

研究会の趣旨
発表
高村加珠恵(東京外国語大学)
「はざまに生きて:タイ-マレーシア国境の形成とそこに生きる華人の視点」
(Living in-between : Formation of the Thai-Malaysian borderland from the local Chinese perspectives)

コメンテーター
新垣嘉啓(日本放送協会)
ブルネイ・マレーシア国境に生きる華人へのインタビュー映像を通して、ブルネイ・マレーシアのはざまで国籍を失った人々の現状を伝える。

コーディネーター
陳天璽(国立民族学博物館)


第7回研究会

ウエールズにおける文化・言語政策─地域語と移民語の共生は可能か
The Cultural and Linguistic Policies in Wales - Regional Minority Languages under Globalisation
現在、ヨーロッパにおいて地域言語・少数言語復権への関心がたかまるなかで、増加し定着しつつある移民言語のあつかいが論議されはじめています。ようやく実をむすびはじめた地域・少数言語話者への保護・支援政策が移民言語にも適用されるのか、ウエールズにおける言語政策から、グローバル時代の地域民族言語や文化保護のかかえる課題をかんがえます。
   日時 2003年10月11日(土) 午後3時~5時30分
   場所 国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)、特別研究室(4階、参加無料)

研究会の趣旨
発表
*コリン・ウイリアムズ(イギリス・ウェールズ大学カージフ校Welsh学科教授)
Professor Colin H. Williams (Department of Welsh Cardiff University)

コメンテーター・コーディネーター
庄司博史

*Professor Colin Williams is a world-renowned authority on linguistic minorities and language planning. He is the author of numerous articles on the sociology of language, e.g. The Community Research Scheme. The place of Welsh in contemporary Wales is the main focus of his research and he is especially interested in agents attempting to ensure the future of the language, e.g. Mentrau Iaith/ Language Initiative Agencies. The other focus of his current research is comparing the linguistic situation in Wales with other parts of the world.


ミニシンポジウム

オセアニアをめぐるアイデンティティ表象と博物館
オセアニアをめぐるアイデンティティ表象と博物館の関わりについて、先住民の研究者や博物館関係者の方々にお話を伺い、議論をする場を持ちたいと存じます。発表者の方々は、日本オセアニア学会25周年記念シンポジウムにおける発表のために来日されます。様々な視点からのご発表(英語)が期待できると存じますので、多数の方の来聴を歓迎致しております。
   日時 2003年3月22日(土) 午後1時30分~5時まで
   場所 国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)、第4セミナー室(2階、参加無料)
   開会挨拶:コーディネータ(司会:久保正敏)

発表
Epeli Hau’ofa (教授、南太平洋大学・オセアニア芸術文化センター、フィジー)
   「太平洋における新たなアイデンティティ創生」(仮題)
linus digim’Rina(教授、文化人類学・社会学部、パプアニューギニア大学)
   「アイデンティティ表象に見る多様性」(仮題)
Ralph Regenvanu(ディレクター、ヴァヌアツ文化センター、ヴァヌアツ)
   「アイデンティティ表象に見るメラネシアン・ウェイ」(仮題)
Franchesca Cubillo(ディレクター、オーストラリア国立博物館)
   「オーストラリアにおけるアボリジニの文化表象」(仮題)
Djon Mundine(研究員 オーストラリア国立大学 クロスカルチュラルセンター)
   コメント

フリーディスカッション


第6回研究会

『殺りくの台地』上映と同映画監督による講演会のご案内
このたび、国立民族学博物館と凸版印刷株式会社の共同研究プロジェクトでは、ネパールのジャーナリスト・映像作家のドゥルバ・バスネット氏を招へいします。これを機会に、新領域開拓研究プロジェクト「トランス・ボーダー・コンフリクトの人類学的研究(TBC)」では第6回研究会として、同氏が製作したネパール共産党毛沢東主義派(マオイスト)のドキュメンタリー作品『殺りくの台地』を上映し、バスネット氏に取材レポートを講演していただくことにしました。民族誌映画、マオイスト武装闘争、ネパールの政治的・階層的コンフリクトにご関心のある多くの皆さまに、ご参加いただきますようご案内いたします。
   日時 2003年3月20日(木) 午後3時~5時まで
   場所 国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園)、第7セミナー室(2階、参加無料)

上映
講演会の趣旨(司会:南真木人)
   ドキュメンタリー・ビデオ上映 『殺りくの台地("The Killing Terraces")』
   (ネパール/2001年/49分) 製作・監督 Dhurba Basnet
講演と討論  ドゥルバ・バスネット(ジャーナリスト・映像作家)
   「中西部ネパールのロルパ、ルクム、ジャジャルコット郡における取材レポート」

作品について
1996年に武装闘争を開始したマオイストの開放区を26日間かけて取材し、人民軍と武装警察の衝突、マオイストの訓練、監獄、そこに巻き込まれる住民たちの姿を描いたドキュメンタリー。この作品は、南アジア・ドキュメンタリー映画祭(ネパール、2001年)、テルライド山岳映画祭(アメリカ、2002 年)、グローバル・ヴィジョン映画祭(カナダ、2002年)、アース・ヴィジョン地球環境映画祭(東京、2002年)などで上映され、SBSテレビ(オーストラリア)、YLE・フィニシュ放送会社(フィンランド)でもテレビ放映されて、好評を博している。

監督ドゥルバ・バスネット(Dhurba Basnet)氏について
1966年生まれ。1985年からネパール・テレヴィジョンの専属カメラマン。1993年にフリーランスとなり、BBCをはじめとするメディアに映像を提供する。日本の会社ではヴィジュアル・フォークロアのドキュメンタリー作品製作に協力している。


第5回研究会

自分史としての越境―オーラルヒストリーの現場から
   日時 2003年3月18日(火)午後1時~5時00分
   場所 第6セミナー室(2階)

研究会の趣旨

発表
ポール・トンプソン(英国エセックス大学社会学部教授)
   「Gender and Migration as Potential and Patterns in Oral History Research」

コメンテーター・パネラー
   ブレンダ・コルティ(大英図書館ナショナル音声アーカイブスタッフ)
   酒井順子(エセックス大学社会学部客員研究員)
   山本恵里子(椙山女学園大学文学部教授)
   中尾知代(岡山大学文学部行動科学科助教授)
   高畑幸(学振特別研究員・大阪市大)
   コーディネーター:庄司博史


セミナー

TBCセミナー『ブータン難民問題再考』
ネパール系ブータン人難民は、ネパールの難民キャンプに暮らす人びとに限っても10万400人(2002年1月、 UNHCR)を数えるが、発生から13年を経た現在も帰還あるいは再定住化に向けた解決が進んでいない。問題が長期化するに従い、マス・メディアからも忘れ去られようとしている現在、今一度ブータン難民問題を再考したいと思う。
難民問題は高度に政治的な問題であるが、その背景には難民輩出・受け入れ双方の国家における、歴史、文化(国家・王権観、民族ナショナリズム、宗教)、政治生態(人口動態、資源、政策・法令、開発)などの差異がある。このセミナーでは、主にネパールを対象とする研究者と主にブータンを対象とする研究者とが集い、国家や難民支援団体の主張と過度のヒューマニズムから意識的に距離をおいた研究者としての立場から、難民発生につながった両国ならびにヒマラヤ地域の歴史的・政治的背景、文化的・生態学的基層の違いを討論する。展望として、ブータン難民問題を時間・空間においてより巨視的に把握すること、主体を難民においた研究の可能性を模索することをめざす。
   日時 2003年2月14日(金)午後1時~午後5時15分 / 15日(土)午前10時~午後2時
   場所 第6セミナー室(2階)

2月14日
発表1(PM1300-1400)
   南真木人(民博)「問題提起:ブータン難民問題再考」
発表2(1400-1500)
   山本真弓(山口大学)「近代化のなかの王国-ブータンの歩み」
発表3(1515-1615)
   月原敏博(福井大学)「政治・文化生態の視角からみた『ブータンのネパール人』-とくにインド帝国下の北東インド開発と現代ブータンの土地制度について」
発表4(1615-1715)
   栗田靖之(民博)「難民問題におけるいくつかの背景」懇親会

2月15日
発表5(AM1000-1100)
   三戸雅義(東京大学・院)「移民政策にみるブータンの国民統合の過程(1950-1980)」
発表6(1100-1200)
   井上恭子(アジア経済研究所)「インド北東地方-越境・流入・定住」
昼食 (1200-1300)
総合討論 (1300-1400) 司会 南真木人
討論参加者:関口真理(亜細亜大学・非常勤講師)
   館外オブザーバー:マハラジャン・ケサシャブ・ラル(広島大学)・ 宮本万里(京都大学・院)


第4回研究会

北米における『日本文化』の境界
   日時 2003年2月4日(火)午後2時~5時00分
   場所 大演習室(4階)
   研究会の趣旨(司会:寺田吉孝)

発表
多田幸子(同志社大学大学院)
   「世界都市での文化生成における中心と周縁の力学-ロサンゼルスのスシ・カルチャーを例に」
和泉真澄(同志社大学言語文化教育研究センター 専任講師)
   「日系カナダ人戦後世代の芸術活動-文化・政治・エスニシティの接点に関する一考察」

総合討論


第3回研究会

朝鮮民族と越境
   日時 2003年1月10日(金)午後2時~5時00分
   場所 第6セミナー室(2階)
   研究会の趣旨(司会:朝倉敏夫)

発表
姜信子(作家・熊本学園大学非常勤講師)
   「中央アジア~ロシア極東―ディアスポラの民 高麗人を訪ねて」

討論


第2回研究会

移動する人びとについての再考
   日時 2002年12月11日(水)午後2時~5時00分
   場所 大演習室

研究会の趣旨(司会:南真木人)

発表と討論
樋口直人(徳島大学)
   「国際移民と社会関係の再編成:在日ブラジル人のエスニック・ビジネスの事例を中心に」

総合討論


第1回研究会

EUの東方拡大とボーダーの多様性
   日時 2002年10月17日(木)午後2時~4時30分
   場所 第6セミナー室

研究会の趣旨(庄司博史)

発表
小森宏美
   「ボーダーの変更とその影響に関する予備的考察:エストニアを事例として」
Olga Romanova(Nizhny Novgorod Linguistic University、現在は日本国際問題研究所)
   「Russia and the Baltic States: Problems of the New International Border」

討論