国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

運動の現場における知の再編

研究期間:2004.4-2008.3 / 研究領域:社会と文化の多元性 代表者 宇田川妙子(先端人類科学研究部)

研究プロジェクト一覧


研究の目的
近年、先住民運動、女性運動、市民運動などの様々な運動が、世界的に活性化しつつある。この動きは、特にマイノリティの人々が承認を求めながら社会を再編し、共生を模索する動きとしても捉えることができる。本研究は、そうした観点から具体的な運動について実態調査を行うと同時に、従来、様々な学問分野に細分化されてきた運動論を総合し、新たな運動論の地平を立ち上げることによって、多元的共生社会への可能性をより具体的かつ積極的に論じていくことをねらいとする。
また、こうした運動の現場は、言い換えるならば、既成の「知」が挑戦を受け再編を余儀なくされている場でもある。したがって、これら運動の現場で生成された「知」(臨床の知、市民的専門性、民知)が既成の「知」をどう再編(変革、流用、葛藤、接合等々)させていくのか、あるいは、その際、専門家や研究者の「知」といかなる役割をもっているのか、という問いも本研究の重要な課題である。これは、学問の社会的な責任や倫理という問題にもつながっていくが、特にポストコロニアルの時代における人類学にとっては、今後の展開を具体的に示唆する興味深い研究事例のひとつとなるに違いない。


研究の内容
本研究は、グローバル化し激変する現代社会の状況を積極的に解明するために、これまで主に社会学の領域で論じられ、しかも専門分化されてきた運動論を総合しつつ発展的に再編していく試みでもある。その際、とくに人類学のミクロな視点の導入が非常に有効であると考える。
ゆえに具体的な研究内容としては、様々な運動が起きている現場について、人類学・社会学それぞれの視点を生かしながら共同しつつ現地調査を行うとともに、研究会を頻繁に開催することによって互いに刺激しあい、様々な事例の比較、論点の整理等々を進めていく。その際、いくつかの具体的な事例にかんして重点的に調査をおこない、モデルケースとして議論を重ねていくことも有効である。さらには、政治学・経済学などの関連分野や市民活動家・行政等との協働のネットワークも模索しながら、研究体制を充実させていく。
そして、国内・国際シンポジウムなどの場を設けて、その成果を積極的に公表する。


研究成果の概要
本機関研究は、日本学術振興会の人文社会科学振興プロジェクト研究「多元的共生社会の構築・運動の現場における知の再編」(平成15年度から平成19年度)と関連して組織されたものであり、本研究の実践も、そのプロジェクト研究と密接にかかわる形で行なわれた。
 まず、全体に共通する問題関心として日本社会の現状との比較という視点をすえ、・日本におけるコミュニティ活動の現状と歴史、・先進国における現状(特に社会的排除という問題)、・マイノリティの活動と多元的共生という問題、・グローバル化のなかでの共生という課題、の4点に注目することにした。そして、上記プロジェクト研究の支援を受けながら、とくに日本や韓国のコミュニティ作り運動や市民運動、イタリアやイギリスの社会的企業、先住民運動、フェア・トレードの事例などにかんして調査研究を進めつつ、下記のようなシンポジウムなどを開催し、成果の中間報告をするとともに議論を深めた。
本研究の出発点は、近年、様々な地域で盛んになっている様々な種類の運動を、世界的な「市民」領域の活性化・再編として論じていくことはできないか、という問題関心であったが、その研究過程ですぐにあらわになってきたのは、運動の種類による差異はもちろんのこと、先進国と発展途上国とでの差異、マイノリティや格差という論点であった。これらは十分に予想されたことではあった。しかし同時に、グローバル化が急速に進む中、ローカルなレベルでもグローバルなレベルでも、そうした差異を超えてどう連携を作っていくのか、という課題が大きくなっていることも浮かび上がってきた。その連携とは、地域のみならず、テーマの違ういわば異種間の運動の連携も意味する。すなわち運動自体が、いまや多元的共生という問題を抱えているのであり、それゆえこの視点は、現在の運動をめぐる情況を、社会全体の再編という問題として見直すことにもつながる。また、こうした連携(共生)という課題は、個々の運動自体の持続的な発展や蓄積という観点からも重要になっている。連携(共生)という課題および概念は、今後、現代における市民運動・活動の実践的および理論的な方向性を探る上でますます重要な論点の一つになると思われる。
このことを受けて、特に最終年度は、運動をめぐる様々な差異を、実践の次元だけでなく理論的にもいかに連携・共生に結びつけた議論につなげていくか、そこに新たな社会像の萌芽を具体的に見出すことができるか、という議論の試行錯誤を行い、その一端は下記のシンポジウム等を通して公表してきた。むろん、その試みは端緒についたばかりである。今後、本研究の終了後も、それぞれのグループがさらに研究会等を組織することによって、より具体的な議論・実践を行っていく予定である。

○シンポジウム・ワークショップ
(*は、主として日本学術振興会人文社会科学プロジェクト研究によるもの)
・2005年1月13日/14日/15日10:00~(民博第4、第5セミナー室)
国際シンポジウム「多元社会における先住民運動:カナダのイヌイットと日本のアイヌ」
・2005年1月22日(立教大学)
ワークショップ「コミュニティ形成と『コミュニティ・デザイナー』」
・2006年3月4日/5日(東京グリーンパレス)
*人文・社会科学振興プロジェクト研究事業 シンポジウム「市民の社会を創る _ 社会提言の試み 」
・2005年1月13日/14日/15日10:00~(民博第4、第5セミナー室)
国際シンポジウム「多元社会における先住民運動:カナダのイヌイットと日本のアイヌ」
・2006年12月2日(立教大学)
*国際シンポジウム「社会的企業が拓くサード・セクターの新しい地平:イタリア・トレントの社会的協同組合の経験から」
・2006年12月3日(大阪市立中央会館)
*国際シンポジウム「21世紀の共生型の社会デザインを模索する:非営利・協同セクターによる共生の地域作り」
・006年12月4日(コープイン・京都)
*ワークショップ「ヨーロッパと日本における社会政策と社会的企業」
・2007年1月29日/30日/31日(中京大学)
*ワークショップ「日本と韓国の市民社会の連帯に向けて:韓国における市民運動の現状と課題から」
・2007年11月29日(静岡県三島市)
*サイエンスカフェ「パートナーシップで作る清流のまちづくり」
・2007年1月29日/30日/31日(中京大学)
*ワークショップ「日本と韓国の市民社会の連帯に向けて:韓国における市民運動の現状と課題から」
・2007年12月15日(筑波大学 総合研究棟)
*公開ワークショップ「世界の中の日本の市民、市民の社会」


研究成果公表計画及び今後の展開等
・2008年(刊行予定)『多元的共生社会をもとめて-<市民の社会>をつくる-』東信堂(宇田川編)
・2007年7月 季刊『at(あっと)』8月号特集「フェア・トレード特集」6-121頁。(2007年3月のシンポジウムの成果公表として)
・その他の成果報告書として、2005年1月のシンポジウム「多元社会における先住民運動」の成果報告(編集中)、2006年12月のシンポジウムおよびコミュニティ・デザイン調査をもとにした社会的企業にかんする日伊比較の成果報告(編集中)、2007年1月のワークショップ「日本と韓国の市民社会の連帯に向けて」および韓国での調査をもとにした成果報告(準備中)など。ほかに個々の研究者がそれぞれに論文等のかたちで発表予定。
・フェア・トレード研究のグループが、昨年、主に関西地域の研究者および実践家を含めたフェアトレード研究会を結成したとともに、本年、本館の共同研究会(「フェアトレードの思想と実践」代表・鈴木紀)としても組織された。なお、前者の研究会のレポートは、季刊『at(あっと)』9月号、季刊『at(あっと)』10月号(それぞれ2007年10月、2008年1月)のコラムで連載中(それぞれ84-87頁、70-71頁)。

2007年度成果
●研究実施状況
本年度は、本研究グループの母体となっている人文社会科学振興プロジェクト研究(以下、人社プロと記述)の最終年度として、これまでの個別の調査研究をさらにすすめるともに、最終的なまとめを目指して、以下のような研究会・ワークショップを開催した。
●<研究会およびシンポジウム等>
○研究会
フェア・トレードに関する研究会(2007年6月23日、10月13日、2008年2月9日)
○公開ワークショップ
「世界の中の日本の市民、市民の社会」2007年12月15日(筑波大学 総合研究棟)

●<調査研究>主なものは以下の通り
 ・フェア・トレードに関する実態調査を継続:これに関しては、3月に国内シンポを実施し、フェア・トレードの多様化する現状を整理するとともに、今後の発展に向けて関係者の間の交流を図った。
 ・昨年度1月に行った国際研究集会「日本と韓国の市民社会の連帯に向けて:韓国における市民運動の現状と課題から」での議論を土台にして、韓国での住民投票運動(扶安郡)にかんする追跡調査を行った。


●研究成果概要
本研究プロジェクトは、近年、様々な地域で盛んになっている様々な種類の運動を、世界的な「市民」領域の動きとして論じていくことはできないか、という問題関心から出発した。その過程で、運動の種類による差異はもちろんのこと、先進国と発展途上国とでの差異、マイノリティや格差という問題が浮かび上がってきた。これらは十分に予想されたことではあった。しかし同時に、近年グローバル化が急速に進む中、そのグローバル化に対処するためにも、地域的なレベルでもグローバルなレベルでも、そうした差異を超えてどう連携を作っていくのかという課題が大きくなっていることも浮かび上がってきた。しかもその連携とは、地域を越えるという意味だけでなく、テーマの違う運動の連携の必要性も明らかになってきた。運動自体が、多元的共生という問題を抱えているのである。また、運動の持続的な発展や蓄積という観点からも、地域、次元、種類を超えた連携は重要になっており、この問題は、現代における市民運動・活動の方向性を探る上で大きな課題になると思われる。このことを受けて、本年度は、本プロジェクト研究のまとめとして、運動をめぐる様々な差異を、実践の次元だけでなく理論的にもいかに連携に結びつけた議論につなげていくかという試行錯誤を行い、その一端は出版物等を通して公表してきた。ただし、むろんその議論はようやく端緒についたばかりである。今後、プロジェクトの終了後も、それぞれのグループがさらに研究会等を組織することによって、より具体的な議論・実践を行っていく予定である。


●公表実績
・2007年7月 季刊『at(あっと)』8月号特集「フェア・トレード特集」6-121頁。(昨年度3月のシンポジウムの成果公表として)
・季刊『at(あっと)』9月号、季刊『at(あっと)』10月号(それぞれ2007年10月、2008年1月)のコラムでフェア・トレード研究会報告の連載(それぞれ84-87頁、70-71頁)
・2008年4月(刊行予定)『多元的共生をめざして-<市民の社会>をつくる-』東信堂(宇田川編)
・公開ワークショップ「世界の中の日本の市民、市民の社会」2007年12月15日(筑波大学総合研究棟)


2006年度成果
●研究実施状況
本年度は、本研究グループの母体となっている人文社会科学振興プロジェクト研究(以下、人社プロと記述)が来年度で終了することを念頭に置きながら、これまでの個別の調査研究をさらにすすめるともに、中間的なまとめを目指して、以下のようなシンポジウム等も開催した。
●<研究会およびシンポジウム等>
○研究会(民博共同研究会として)6回
○シンポジウム
・3月10日:公開シンポジウム(人社プロ・民博)「フェア・トレードのめざすもの:その多様化する現状と課題」(京都キャンパスプラザ)
・12月2日国際シンポジウム(人社プロ)「社会的企業が拓くサード・セクターの新しい地平:イタリア・トレントの社会的協同組合の経験から」(立教大学)
・12月3日国際シンポジウム(人社プロ)「21世紀の共生型の社会デザインを模索する:非営利・協同セクターによる共生の地域作り」(大阪市立中央会館)
・12月4日国際シンポジウム(人社プロ)「ヨーロッパと日本における社会政策と社会的企業」(コープイン・京都)
○研究集会
・10月21日:国内研究集会(民博・人社プロ)「先住民概念とその周辺:国際的比較から考える」(白老アイヌ博物館)
近年、国際的にも注目を集めるようになっている先住民概念とそれを取り巻く動きについて、館でおこなってきた共同研究を基礎とし、平成18年10月21日に北海道白老市白老アイヌ博物館等において、日本のアイヌの事例について現地を視察し、その動きにかかわる人々と議論するとともに、ハワイとアフリカ~先住民主張をめぐる国際的な比較事例を紹介し、討論を行った。また、これを通じ、日本の先住民概念と現在うごいている運動をめぐる特徴を明らかにした。
日本の先住民であるアイヌの人々の現状と、先住民概念、先住権をめぐるうごきについて、アイヌの学芸員の方から、具体的な話を伺った。そして、現在うごいている先住民にかかわるプロジェクトの全体と問題についての報告も受け、質疑応答をおこなった。その後、現在行われている、植生再生プロジェクトの現場の視察を行い、現場ではさらに細かい説明を受けた。この集会の基礎となる共同研究会のメンバーがこれらの日本の先住民をめぐる現状についての情報を共有することができ、今後予定している研究の全体のとりまとめに非常に有益であった。
また、アフリカ、ハワイについての事例を中心にそれぞれ報告を受け、コメント、議論を行った。日本の問題との関係に定位し、議論を行ったことは、大変に有意義であった。
参加者のあいだで、日本の現在行われている先住民に関するプロジェクトの実態と問題点を共有することが蚊のうなった。これにより、それぞれの調査地での問題との比較検討の視座を生み、より研究が活発に、行われることになることが期待される。それとともに、北海道の先住民運動を行っているアイヌ人々に、最新の研究成果を伝え、その発展にも寄与した。
研究集会には、日本学術振興会・人文社会科学振興のためのプロジェクト研究「多元的共生社会の構築・運動の現場からの知の再編」(代表・宇田川妙子)の協賛をえた。

・1月29日~31日:国際研究集会(人社プロ)「日本と韓国の市民社会の連帯に向けて:韓国における市民運動の現状と課題から」(中京大学)

●<調査研究>主なものは以下の通り
・一昨年度から続く日本のコミュニティ作り運動に関する調査にかんしては、最終段階に入り、その調査結果の整理・分析もほぼ終了した。近々、報告書作成の予定。
・フェア・トレードに関する実態調査を継続:これに関しては、3月に国内シンポを実施し、フェア・トレードの多様化する現状を整理するとともに、今後の発展に向けて関係者の間の交流を図った。


●研究成果概要
本年度は、主に昨年度末に課題とした3つの問題点、すなわち、①先進国での「運動」の実態・問題点、②発展途上国での「運動」の実態・問題点、③マイノリティから見た「運動」の実態・問題点の3点に焦点を当てると共に、来年度の人社プロジェクト研究終了に向けて、それぞれに中間的なとりまとめを行うように努力し、上記のようなシンポジウム等を開催した。
その中で今年度とくに明らかになってきたのは、地域やテーマによって、市民運動・活動には違いはあるものの、近年グローバル化が急速に進む中、そのグローバル化に対処するためにも、地域的なレベルでもグローバルなレベルでもどう連携を作っていくのかという点においては共通の問題を抱えているという点であった。しかもその連携とは、地域を越えるという意味だけでなく、テーマの違う運動の連携の必要性も明らかになってきた。運動自体が、多元的共生という問題を抱えているのである。この問題は、現代における市民運動・活動の方向性を探る上で大きな課題になると思われる。
ゆえに来年度は、人文社会科学振興プロジェクト研究の最終年度として、以上の問題点を中心にさらに調査研究を進め、とりまとめを行なっていくことにしたい。

2005年度成果
●研究実施状況
●<研究会およびシンポジウム>
研究会は本館の共同研究会(計4回)として開催し、3月のシンポジウムは、人社プロ主催のもので、本研究チームからは、中村陽一が発表者として、宇田川妙子が総合司会として参画した。このほかに、7月にフェアトレードに関する研究会を、関係者だけで開催した。
*研究会およびシンポジウムの詳細
・6月25日:伊藤亞人「後開発(Post-developmental)状況における市民と活性化:よさこい祭りの行為者志向的(Actor-oriented)・実践志向的(Practice-oriented)視点から」
・7月28日:中村陽一、小玉重夫、李 昤京「市民社会の再検討」
・10月29日:中村陽一、中野民夫、甲斐徹郎「コミュニティ・デザイナー」研究中間報告、大枝奈美、上純江、志塚昌紀「コメント」
・12月10日:林 勲男「防災からのコミュニティづくり ─ 南海地震に備える串本町・自主防災組織の活動」
・3月4日/5日(東京グリーンパレス):人文・社会科学振興プロジェクト研究事業 シンポジウム「市民の社会を創る ─ 社会提言の試み」

●<調査研究>主なものは以下の通り
・日本のコミュニティ作り運動に関する調査研究を、三島・佐倉・愛知万博の地球市民村等を事例として継続。その結果の一端は、本年度3月の人社プロのシンポにて公開。また、その調査結果を来年度整理して、報告書作成の予定。
・イタリアのコミュニティビジネスや協同組合の実態調査を継続(藤井・宇田川を中心に):これに関しては、来年度10月に国際シンポを予定
・フェア・トレードに関する実態調査を継続(鈴木・辻村を中心):これに関しては、来年度3月に国内シンポを予定

●<その他>
昨年度の国際シンポ「多元社会における先住民運動:カナダのイヌイットと日本のアイヌ」のテープ起こし(岸上を中心に):来年度刊行の予定。
●研究成果概要
本年度のグループ全体の主たる関心は、日本における市民運動・活動の現場における実情とその問題点であり、その中間報告の一端を3月の人社プロのシンポで行った。
その中で、日本における市民社会・市民性の概念の再検討の必要性が明らかになるとともに、多元的な視点の重要性があらためて提起された。特に後者の点は、グローバル化がいっそう進みつつあると同時に格差の拡大が憂慮されている現在だからこそ考慮すべき点であると考える。
ゆえに来年度以降は、その問題点をさらに掘り下げて、日本の現状をいっそう客観的に明らかにするためにも、(1)先進国での「運動」の実態・問題点、(2)発展途上国での「運動」の実態・問題点、(3)マイノリティから見た「運動」の実態・問題点の3点に重点を置きながら、調査研究を進め、相互に議論を交わしていく。


2004年度成果
●研究実施状況
5月29日:「吉野川可動堰建設をめぐる住民運動における市民知とその可能性」
佐野淳也(㈲「環境とまちづくり」)
7月30日:「コーヒーのフードシステムとフェア・トレード:キリマンジャロ・コーヒーを事例として」辻村英之(京都大学)
「フェア・トレードの国際認証基準と日本・アメリカ」兵藤亜沙(京都大学院生)
9月18日:「社会問題と公共性」入江幸男(大阪大学)
「イデオロギーとしての親密性:人類学の/からの再検討」沼崎一郎(東北大学)
11月27日:「身近な環境に関する市民研究と市民のエンパワーメント」
萩原なつ子(武蔵工業大学)「シンポジウム・イヌイットの先住民研究と知の再編について」
岸上伸啓(国立民族学博物館)
1月22日:「コミュニティ形成と「コミュニティ・デザイナー」」中村陽一、甲斐徹郎、中野民夫、渡辺豊博、大野博美
3月26日:「青年海外協力隊員の活動と現場」結城史隆、西山昌宏、加藤麻子

●<調査研究>主なものは以下の通り
・日本のコミュニティ作り運動に関する調査研究を、三島・佐倉・愛知万博の地球市民村等を事例として開始。その中間発表を1月22日に行う。(中村を中心)
・イタリアおよびイギリスのコミュニティビジネスや協同組合の実態調査を開始(藤井・宇田川を中心)
・フェア・トレードに関する実態調査を開始(鈴木・辻村を中心)
・インドネシアにおける住民運動の実態にかんする予備調査の試行(鏡味を中心)
●研究成果概要
本年度は、運動の現場において起きている「知の再編」の実態を、様々な事例から具体的に明らかにしていくことを目的として、研究会を重ねてきた。その結果、グローバル化がいっそう進みつつある現在、住民・市民レベルの動き(知の再編の試み)が、社会システム全体への変化になかなかつながっていない現状が、どの事例においても大きな問題であることが浮かび上がってきた。
ゆえに来年度以降は、その問題点をさらに掘り下げて議論をしていく予定である。具体的には、(1)日本社会における「運動」の実態・問題点とその系譜、(2)先進国での「運動」の実態・問題点、(3)発展途上国での「運動」の実態・問題点、(4)マイノリティから見た「運動」の実態・問題点、(5)グローバル化と「運動」の5点に重点を置きながら、調査研究を進め、相互に議論を交わしていく。