国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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民博所蔵「ジョージ・ブラウン・コレクション」の総合的データベースの構築

研究期間:2014.6-2016.3 / 強化型プロジェクト(2年以内) 代表者 林勲男

研究プロジェクト一覧

プロジェクトの目的

民博が所蔵するジョージ・ ブラウン・コレクション(以下、G.B.コレクション)は、宣教師であり神学博士でもあるジョージ・ブラウンが、南太平洋諸島での伝道活動のかたわら、半世紀にわたって収集した歴史的・文化的にも重要なものである。そして、当時の南太平洋でのキリスト教宣教師の活動や人びとの生活の様子を今に伝え、民族誌学や博物誌学の歴史の上で重要なだけでなく、収集地の人びとが自分たちの祖先を、これらの資料をつうじで洞察できるという意味でも、貴重な文化遺産といえる。本プロジェクトは、G.B.コレクションの収集地にある博物館等の研究機関や、同地域に関わる日本国内外の多分野の研究者の協力を得て、標本資料に関する基礎データの充実を図ると共に、英国に留め置かれた資料や、ブラウン自身の撮影による写真、書簡、日誌等との関連付けをおこなうことで、G.B.コレクションに関する総合的な情報を提供するデータベースを構築する。

プロジェクトの内容

ジョージ・ブラウン・コレクションを構成する約3,000点の民族誌資料は、パプアニューギニア1,532点(トロブリアンド諸島287点、ビスマルク諸島615点を含む)、ソロモン諸島652点、フィジー138点、サモア240点が主なものであり、これらだけで2,564点を数える。これら4カ国の博物館等の研究機関と協力し、G.B.コレクションの個別標本資料の基本情報の確度の向上と拡充化を図るための調査を、現地の博物館や他の研究機関との協力のもとに実施する。各博物館の館長もしくは上級クラスの研究員には、民博がすでにウェブ上で公開しているG.B.コレクションの英語データベースの閲覧を依頼し、その後、民博に招聘して関係する標本資料の熟覧とソースコミュニティーからの情報収集体制の構築に向けた検討を日本側研究者とおこなう。
ジョージ・ブラウンの収集活動並びにコレクションの社会的・歴史的背景については、彼の著作物や書簡、日誌などの文献調査を行い、さらに研究協力者から情報を収集していく。ブラウンによる著書2冊と論文(マイクロフィルム10巻)は、すでに民博の図書室に入っており、日誌と手紙はシドニーのミッチェル図書館(ニューサウスウェールズ州立図書館の専門図書館の一つ)に所在を確認しているため、日本とオーストラリアの研究者が、これら文献の調査を実施する。また、ブラウン自身が撮影した写真(約900枚のガラス乾板)を所蔵するオーストラリア博物館の研究者と、コレクションに関わる写真の選定作業と被写体に関する情報を共同調査すると同時に、写真使用に関する協議をおこなっていく。
ブラウンが活躍した19世紀末から20世紀初頭にかけての南太平洋における、キリスト教宣教師の活動と彼らの生活に関しては、研究協力者であるヘレン・ガードナーとマーガレット・リーソンの研究成果と彼女らからの追加情報から、G.B.コレクションと関連する情報を精査していく。
ジョージ・ブラウンの弟の直系筋にあたるマイケル・ブラウンは、ニューキャッスルに住みながらジョージ・ブラウンの足跡をたどる調査をおこなっている。G.B.コレクション閲覧の目的で民博を訪れており、その後も連絡を取り合っている。2012年度に、クリストファー・マキューは、「G.B.コレクションの再文脈化に関する実践的研究」のため、AHRC IPSで民博の外来研究員の立場にあり、英国に帰国後もジョージ・ブラウンや彼のコレクションについての調査を継続している。ブラウン一族への調査や、民博がコレクションを購入した際に含まれなかった一部の標本資料に関する調査を実施し、そのデータの共有をおこなう。
以上のようにして収集したデータを総合的に閲覧し、研究上の利活用することを可能にするのみならず、標本資料収集地の人びとやデータ提供者にとっても、このデータベースを利用することによって、それぞれの文化や歴史への洞察を深めるのに役立つものにする。

期待される成果

G.B.コレクションに関する英語データベースは、すでに一般公開しているが、個々の標本資料についての基本情報をより確度の高いものにし、さらに関連情報を拡充する。そのためには、ソースコミュニティーと研究者コミュニティーの双方からデータを収集し、他の博物館や図書館などが所蔵する関連資料も閲覧可能な機能を持たせたものにする。関連資料としては、ブラウン自身の日誌や書簡類、そして彼が撮影した写真などの資料と、彼が宣教師として活躍し、またコレクションを収集した背景となる時代と地域に関する情報などである。これらを一つのデータベースで閲覧できるものとする。

2016年度成果(フェーズ Ⅱ)
  1. 今年度の研究実施状況
    G.B.コレクションを構成する約3,000点の民族誌資料は、パプアニューギニア1,532点(トロブリアンド諸島287点、ビスマルク諸島615点を含む)、ソロモン諸島652点、フィジー138点、サモア240点が主なものであり、これらだけで2,564点を数える。
    平成26年度と27年度の2年間に、フィジーの物質文化研究者、パプアニューギニアの植物研究者、サモア研究者が資料の熟覧をおこない、データベース情報の修正・加筆をおこなったのに続いて、本年度は、予算の追加措置により、これまでの熟覧者から提供された新たな情報を日英両言語で利用できるようにした。
    また、パプアニューギニアに続いて点数の多いソロモン諸島の資料652点に関して、同地域を専門とする考古学者による熟覧、情報提供を依頼した(平成29年3月21日から24日に来館予定)。
    第1期に実施した大英博物館、セインズベリー・センター、ディスカバリー博物館、ボウズ博物館での調査で得たデータをデジタル化し、プロジェクトメンバーで共同作業ができる体制を作った。
    さらに、第1期の英国での調査にて収集した、コレクションの購入・売却、展示、他の博物館との間でおこなわれた資料の交換等に関するデータのデジタル化とその分析、公開に向けての英国の所有者(個人・組織含む)との検討作業をおこなった。
  2. 研究成果の概要(研究目的の達成)
    データベース内のフィールドとして、コアデータ・フィールド、プロジェクトメンバーおよび協力者による追加データ・フィールド、インデックス・フィールドを設け、データを整理した。また、それぞれのフィールドのデータを日英両言語で利用できるようにした。将来的にはインデックスの自動化を考えている。
    データベースの一般公開に向けて、研究協力者からの提供データに関しては、アクセス制限や、引用等のデータ使用の規定の掲載など、検討はしているが結論に至っていない。
    英国やニュージーランドの博物館等が所蔵する資料に関するデータの参照についても、先方と検討中である。
  3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)
    Matthews, Peter (2017) Integrating local plant knowledge into wider knowledge systems: an example of work-in-progress for the George Brown Collection Info-forum Project, paper presented on 14th Feb, for Environmental Knowledge and Material Culture

2015年度成果
  1. 最終年度の研究実施状況
    2014年4月に始まった本プロジェクトでは、海外からソロモン諸島資料に関してリース・リチャーズ氏、メラネシア資料の植物材料に関してロビン・ハイド氏(オーストラリア国立大学名誉教授)、フィジー諸島資料に関しては、ロデリック・エウィン氏(タスマニア大学名誉教授)を、またサモアとトンガの資料の熟覧調査のため、山本真鳥氏(法政大学教授)を招聘した。これによって新たに収集されたデータは、G.B.コレクション・データベースに反映させる作業を始めている。ブラウン自身による収集活動に関わるデータを、彼の著作や書簡から析出し、ウェブサイトに掲載するための作業を開始した。
    海外調査としては、オーストアリア、ニュージーランド、連合王国で調査を実施し、コレクションのこれまでの変遷や関係記録の確認、および民博が購入した際に連合王国外への輸出が認められなかった標本資料の確認をおこなった。同時に、関係機関の研究者に対して本プロジェクトについて説明をおこない、協力を要請した。
  2. 研究成果の概要
    招聘した研究者たちのコレクション資料の熟覧によって、新たなデータが得られた。これらをG.B.コレクション・データベースにいかに反映させるか、データベースおよびウェブサイトのインターフェイスのデザインも含めた検討を開始している。
    ジョージ・ブラウンの収集活動並びにコレクションの社会的・歴史的背景については、彼の著書および書簡の調査を通じて関係情報を収集し、フォーラム型情報ミュージアム上での見せ方について検討を開始している。
    英国での調査によって、大英博物館、ディスカバリー博物館(ハンコック博物館が収蔵していた当時のG.B.コレクションに関するデータを所有)、ボウズ博物館(英国での最初にG.B.コレクションを所蔵し展示をおこなった博物館、ブラウンの生誕の地であるバーナード・キャスルにある)からコレクションの購入・売却、展示、他の博物館との間でおこなわれた資料の交換等に関するデータを入手した。その分析と公開に向けての手続きの検討、および紙媒体からデジタル化する作業を開始している。これらの研究機関の担当者に加えて、ジョージ・ブラウンの弟の直系筋にあたるマイケル・ブラウン氏(ニューキャスル近郊在住)や、2012年度に「G.B.コレクションの再文脈化に関する実践的研究」のため、AHRC IPSで民博の外来研究員と受け入れたクリストファー・マキュー氏らの協力により、情報収集のネットワークが徐々に拡大し、かつてコレクションを所蔵していた機関での管理や展示の様子についても、徐々にデータが集まり始めている。
    すでに、G.B.コレクションの日本語・英語のデータベースは一般公開していたが、G.B.コレクション及びそのデータベースに関する簡単な説明文を、日本語と英語に加えて、メラネシア・ピジン語、サモア語、トンガ語、フィジー語にし、インターフェイスを修正してそれぞれの言語でこの解説を読めるようにした。
  3. 研究成果・データベース公開計画及び今後の展開等
    館内向け公開は、2016年のゴールデンウィーク明け頃を目指している。データベース自体の一般公開は、2016年の初秋を目指しているが、コレクションの遍歴に関する海外の機関から提供されたデータに関しては、公開・非公開について精査していく必要がある。
    また、このプロジェクトの経過とその成果について、英文の論文もしくは研究ノートを2016年度中に執筆する計画である。
    データの収集活動を継続すると共に、データベースの利活用についてユーザー側の利便性を検討していく。2015年度に招聘したDivine Word 大学(パプアニューギニア)のクレイグ・フォーカー教授は、ニューアイルランド島在住であり、G.B.コレクションのソース・コミュニティの住民や出身の大学生たちとともに、G.B.コレクション・データベースの利活用についての検討に参加してもらい、利用しやすいインターフェイルを共に開発していく計画である。

2014年度成果
  1. 今年度の研究実施状況
    2014年度は、本プロジェクトの初年度に当たるため、国内メンバーによる役割の確認と、フォーラム型情報ミュージアムの概念についての共通認識の確立を図るために丸川准教授による説明を聞く会合からスタートした。
    8月に国内共同研究員である友永雄吾が、オーストラリアのメルボルンにて国外共同研究員であるヘレン・ガードナー博士と面会し、プロジェクトの概要を説明し、ジョージ・ブラウンおよび同時代の他の宣教師たちの南太平洋における民族誌資料収集活動について情報をえた。またメルボルン博物館で、収蔵資料管理について情報を得た。シドニーのオーストラリア博物館では、研究協力者のロビン・トレンス博士、シドニー大学マクリー博物館のジュード・フィリップ博士と会い、それぞれに収蔵する関連資料調査を実施した。
    11月に林とマシウスがニュージーランドを訪れ、オークランド博物館でアウトリーチプログラム、歴史部門、デジタル・システム、コレクション・マネージメント、保存科学のそれぞれの担当者と面談し、プロジェクの遂行への協力を依頼した。ウェリントンでは、ニュージーランド国立博物館テ・パパにて、太平洋地域のコレクションのマネージャーと、デジタル・コレクション専門家から収蔵資料とデータ管理、他の機関とのデータベース共有化について情報を得た。また、民博へ招聘予定のリース・リチャーズ氏を訪ね、打ち合わせを行った。
    今年度は、上記のソロモン諸島担当のリチャーズ氏以外に、メラネシア資料の植物材料調査のためロビン・ハイド博士(オーストラリア国立大学名誉教授)、イタリアからトロブリアンド諸島資料調査のためジアンカリオ・スコディティ博士の招聘を予定していたが、スコディティ博士の都合で来日は叶わなかった。
    G.B.コレクション及びそのデータベースに関する簡単な説明文を、日本語と英語に加えて、メラネシア・ピジン語、サモア語、トンガ語、フィジー語にし、インターフェイスを修正してそれぞれの言語でこの解説を読めるようにした。
    さらには、ジョージ・ブラウンの日記と手紙から、民族資料収集の足取りを探る調査を始め、これは来年度に継続される。
  2. 研究成果の概要(研究目的の達成)
    ハイド博士とリチャーズ氏という専門家を招へいしたことによって、G.B.コレクションの個別資料に関する情報の充実化が進んだ。オーストラリアとニュージーランドの博物館の専門部署のスタッフとプロジェクトについて協力を取り付けたことによって、その結果として、その後も情報の提供を得られるようになったことは大きい。
  3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)
    (1)Bunkamuraのザ・ミュージアムで開催されたジョセフ・バンクス展に、G.B.コレクションから標本資料を選定し、この展示の図録に寄稿した。また、マスコミ向けの内覧会では、解説をつとめた。貸し出ししたことで日本においてもその存在の周知を行なうことができた。
    (2)Mchugh, Christopher(海外研究協力者) (in Press) Recontextualizing the George Brown Collection through Creative Ceramics, Journal of Museum Ethnography 26.
    (3)2015年3月29日に開催された『みんぱくウィークエンド・サロン』『パプアニューギニアのタイムカプセル』で、来館者にジョージ・ブラウン・コレクションの紹介を行った。