国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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日本の文化展示場関連資料の情報公開プロジェクト

研究期間:2016.4-2018.3/ 強化型プロジェクト(2年以内) 代表者 日高真吾

研究プロジェクト一覧

プロジェクトの概要

プロジェクトの目的

 平成24年度から平成25年度にかけて新構築した日本の文化展示場は、北海道から沖縄県までの多様な自然環境のなかで隣接する諸文化と影響しあいながら育んできたさまざまな地域文化と近年、日本人の隣人として見られる多くの外国人に着目して、「祭りと芸能」、「日々のくらし」、「沖縄のくらし」、「多みんぞくニホン」という4つの角度から、日本文化の様相を展示している。本展示は、多様な展示資料を中心に最小限のキャプション情報と解説文で構成しているものの、それぞれの資料にまつわる背景情報までには踏み込めていない。そこで、本プロジェクトでは、民博の所蔵資料の詳細情報についてデータベース上で閲覧できる仕組みを整える。

プロジェクトの内容

 本プロジェクトでは、日本の文化展示場で展示している標本資料について既存の目録情報に研究詳細情報を加えることで、より詳細な研究情報をデータベース(以下、日本の文化展示資料情報DB)で公開することを目指すものである。
 これまでの民博の標本資料情報の公開用データベースには目録情報データベースがあり、そこには資料の一般名称を示す「標本資料名」と標本資料1点ごとに付与されている「標本番号」、資料の収集地や製作地を示す「地域」、資料に関連する人びとを示す「民族」、資料の補足的な情報を示す「注記」、資料の幅(W)×奥行(D)×高さ(H)と重量を示す「寸法・重量」、資料を民博に受け入れた西暦年度の「受け入れ年度」、資料のななめ上、正面、側面、背面方向から撮影した「画像」、そしてそれらのデータを作成した「日付」が示されており、民博所蔵資料の全容を紹介するには、ある一定の役割を果たしていると評価できる。しかし、本データベースでは、収集時に研究者によって付与された研究詳細情報が館内公開のみにとどまっており、その点において、これらの資料情報は死蔵された状況となっている。そこで、本プロジェクトでは、展示資料の研究詳細データベースと資料カードについて、再精査し、公開に耐えうる情報の整理を試みる。また、日本関連資料については、民俗資料の分類まで踏み込んだ情報提供がなされてない。そこで、本プロジェクトでは、文化庁文化財保護部監修、祝宮静・関敬吾・宮本馨太郎編集の『日本民俗資料事典』(1969年刊行)が提示している民俗資料の大分類項目、中分類項目に準じながら、資料分類をおこない、その結果を提示する。このことによって、研究資料としての情報検索をより容易に実現でき、研究活用がしやすくなる環境を整えることができる。このことによって、大学生、大学院生の利用しやすい学業支援としてのデータベースの側面を持つことができ、フォーラム型情報提供のモデルの一つを提示できるものとなる。
 あわせて、本プロジェクトでは、東日本大震災以降、民博内に設置された大規模災害復興委員会において制作を進めてきた津波碑・寺社DBを完成させ、WEB上で公開するとともに、日本の文化展示場内で展示公開を実現する。日本の文化展示場では、今回の新構築の際、東北地方のくらしセクションにおいて、民博が進めてきた東日本大震災の支援活動を紹介するコーナーを設けている。本コーナーは、東日本大震災の復興宣言が発令されるまで、民博が震災を忘れないという姿勢を示すために設けたコーナーであり、2012年以降、本格的におこなってきた支援活動の情報コンテンツを作成、提供している。このコーナーに津波碑・寺社DBを設置することで、震災前に残されていた防災の記憶に焦点を当て、これらの記憶を継承することの重要性について展示場で示すこととする。

期待される成果

 日の本文化展示場資料情報DBは、標本目録情報と研究詳細情報の内容を含むものであり、より学術的な詳細データが提供できるものとなる。また、日本の文化展示場の資料を対象とすることにより、より展示の文脈に基づいた情報提供がおこなえる。このことは、ある資料群を強制的にまとめることになり、一方通行の情報提供という側面は孕みつつも、展示に興味を持った来館者には利便性の高いデータベースになると考える。さらに、資料に関連する書籍情報なども閲覧できる仕組みを目指すことで、より詳細な研究情報をデータベース上で展開できるものとなる。
 加えて、このプロジェクトのもう一つの柱とした津波碑・寺社DBはWEB上で公開するとともに、新しいデータを書き込みできる機能を持ち合わせており、DB公開後、DBの利用者とDBを制作した民博側の相互において情報交流ができ、より広範囲なフォーラム型ネットワークを形成できることが期待される。

 

成果報告

2017年度成果
1. 今年度の研究実施状況

 研究最終年度となる平成29年度は、文化庁による民俗資料分類をもとに、民博の展示内容に準じた分類項目を作成し、全展示資料の分類を完了した。そして各分類項目については、研究者、大学生、日本文化に関心をもつ市民を射程に、簡単な解説を加えることとし、さらにこれらの解説、資料情報をすべて英訳し、英語ページを作成し、国際的にも利用できるDBへと成長させた。また、ここで試みた資料分類をもとにした台湾の民俗資料への展開の可能性と、国内に多数存在する学校所在の民具の資料整理を試みる準備を整え、学校教育で利用できるDBの制作と教育ツールとしてのアウトプットの方法論の策定へと展開する準備を整えた。
 次に2017年度に公開予定のパノラマムービーをもとにしたバーチャルミュージアムDB(仮称)とリンクづけをおこなうことで、展示資料の関連映像も提供できるDB環境を整備するとともに、本DBに全国の県立博物館のDBのリンクづけを呼びかけ、協力いただける博物館のDBをリンクづけする準備を整えた。

2. 研究成果の概要(研究目的の達成)

 本プロジェクトの研究成果としては、文化庁の民俗資料分類をもとにした、民博版の資料分類項目を設け、本DBの対象資料の分類を完了した。これらの作業では、国立歴史民俗博物館、東北学院大学、京都造形芸術大学、東北歴史博物館と連携するとともに、地域コミュニティとして研究代表者がフィールドとしている気仙沼の市民の方々と分類項目の内容や資料情報の示し方について意見交換をおこない、内容を整理し、まさにフォーラムの研究環境のもと、DBの制作を実現できた。その結果、本DBにおいて検討した民俗資料分類において、従来おこなわれている一資料一分類という排他的分類法では、資料の持っている文化情報を伝えるには不十分であり、生活文化を軸とした資料分類では、一資料に複数の資料分類をもたせる重複的分類法が適切であることの可能性を新たな学術的知見として発見した。

3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

 10月21日、22日に別府大学において、国際フォーラム「地域文化の再発見―大学・博物館の視点から」を開催し、趣旨解説の中で本事業を紹介するとともに、日本と台湾の事例を比較しながら日本の文化展示資料が表象する地域文化を発見するための大学機関の役割について議論を進めた。また、日本民具学会の学会誌である『民具研究』に査読論文「国立民族学博物館「日本の文化展示場」の展示資料をデータベース化する試み」を投稿し、掲載が認められた。論文は、今年度中に「民具研究」157号に掲載されることとなっている。

2016年度成果
1. 今年度の研究実施状況

 本プロジェクトでは、日本の文化展示場で展示している資料について、既存の標本資料目録情報よりも、より詳細な研究情報をデータベースで公開することを目指すものである。また、日本の文化展示場に関連する書籍等についても調査し、それらを参考文献リストとして公開し、大学生、あるいは大学院生が展示から文化人類学、民俗学を学ぶ上で、有益な情報を得ることのできるシステムを整えることも到達目標のひとつとするものである。
 本年の研究では、WEB上で展開されている地方博物館のDBの現状について調査をおこなった。その結果、現状の地域博物館においては、まだDBを公開できる環境にないことが明らかになった。その理由として、日進月歩で開発の進むWEBサービスに対応できるPCの更新が追い付いていないことが大きな要因となっていることが明らかになり、地方博物館所蔵の日本関連資料のDBの相互乗り入れは厳しい環境であることが明らかになるとともに、民博で展開しようといている本DBの検索項目についての注目の高さについて改めて認識した次第である。また、本プロジェクトでは動画の導入も視野に入れ、フォーラム型情報ミュージアム事務局と検討を重ねたが、本格的な動画を導入するにあたっての肖像権の問題、サーバーへの負荷などを考慮し、今回のプロジェクトでは一旦中断し、次の課題として取り扱うことを確認した。

2. 研究成果の概要(研究目的の達成)

 今年度の研究成果としては、WEB上で展開されている地方博物館のDBの現状について調査をおこなった。その結果、地域博物館においては、現状、WEB上でDBを公開できる環境にないことが明らかになった。その理由として、日進月歩で開発の進むWEBサービスに対応できるPCの更新が追い付いていないことが大きな要因となっていることが明らかになった。この点は、想定するユーザー側のPCの動作環境等についても併せておこなっていく必要があることを示していると考える。
 次に、本DBで掲載する情報項目について、外部団体として協力いただいている国立歴史民俗博物館、東北歴史博物館、東北学院大学、枚方市旧田中家鋳物資料館のメンバーと改めて、検索項目について意見交換をおこなった。その結果、DBで掲載する基本情報として、「展示資料名」、「標本資料名」「標本番号」、資料の収集地や製作地を示す「地域」(現在の都道府県市町村まで)、資料の幅(W)×奥行(D)×高さ(H)と重量を示す「寸法・重量」、資料を民博に受け入れた西暦年度の「受け入れ年度」、資料の写真情報を示し、さらに研究詳細DBに記述されている研究情報、これまで論文等で紹介された場合の書誌情報について紹介することとした。さらに、本プロジェクトでは、文化庁文化財保護部監修、祝宮静・関敬吾・宮本馨太郎編集の『日本民俗資料事典』(1969年刊行)が提示している民俗資料の大分類項目に準じながら、資料分類をおこない、基本的な分類項目とすることを確認した。

3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

2016.日髙真吾「日本の文化展示場における資料情報の活用に向けて」『民博通信№155』P12-13 2016年12月26日 国立民族学博物館