国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アフリカ資料の多言語双方向データベースの構築

研究期間:2017.4-2021.3 / 開発型プロジェクト(4年以内) 代表者 飯田卓

研究プロジェクト一覧

プロジェクトの目的

サハラ以南アフリカ各国から収集された民博の資料約19,700点の情報をもとに、英語、フランス語、スワヒリ語、ポルトガル語などアフリカ諸国の公用語に対応した資料データベースを構築する。このデータベースには、アクセス権限を有するユーザーが書きこんだコメントを反映する機能も持たせるようにし、アフリカの研究機関の担当者をとおして個々の資料情報をさらに充実させるようにする。
 こうしたデータベースを用いて国際シンポジウムや現地ワークショップなどの研究交流活動をおこない、あわせてアフリカの研究機関と民博が築きあげた学術提携関係を強固なものとすることで、物質文化を基盤としたアフリカ全般の文化状況とアイデンティティ構築の関わりについてあらたな知見を提出していくことが本プロジェクトの目的である。

プロジェクトの内容

民博の館内で閲覧できる標本資料詳細情報データベースで検索してみると、サハラ以南アフリカ諸国のうちで資料収集点数が多いのは、カメルーン(2,597点)、ケニア(2,575点)、ザイール(現コンゴ民主共和国、1,768点)、セネガル(1,597点)、ナイジェリア(1,234点)、マリ(1,204点)、エチオピア(1,104点)、スーダン(1,073点)、ガーナ(940点)、ボツワナ(627点)などである。そのうち半数は、館員OBが継続的なフィールドワークをおこなうなかで資料収集をした場所である。言いかえれば、創立から40年を経た現在、現役館員には資料収集の状況がわからなくなっている。これは、5名ていどの少人数で大陸全域の研究を担当しなければならない以上、避けられないことである。しかしいっぽうでは、OB世代が築いた研究ネットワークを、現役館員が意識的に継承していかなければならないということをも示している。
民博のアフリカ研究ネットワークは、平成17(2005)年度から平成20(2008)年度にかけて日本学術振興会とともに実施したアジア・アフリカ学術基盤形成事業「アフリカにおける文化遺産の危機と継承――記憶の保存と歴史の創出」によってかなり強固なものとなったが、現役館員のコネクションすべてがこのネットワークに統合されたわけではなく、館員OBのコネクションもじゅうぶんにくみ入れられていない。また、事業から10年が経ち、相手側で人事異動があったり日本側に新しいメンバーが参入したりしたことを考えれば、ネットワークのさらなる拡大・強化が求められているといえる。
このような状態にある民博アフリカ展示プロジェクトチームにとって、民博が現有する資料を多言語かつ双方向的なデータベースとして統合するというフォーラム型情報ミュージアム・プロジェクトは、かならずしも容易に達成できる事業ではない。しかし、ネットワークの拡大・強化とデータベース構築を同調させつつ進めていけば、今後の事業展開はより容易になると期待できる。本プロジェクトの第一の目標はデータベース構築にあるものの、そのために必要なネットワークの拡大・強化を適宜計画に加えていくことで、将来的なデータベースの拡大・強化とネットワークの拡大・強化のための基盤整備をはかることができる。
こうした認識に立って、すべての年度においてデータベース構築とネットワーク構築の双方を進めていく計画である。その詳細は、5-3.および5-4.で述べていく。

期待される成果

初年度末に初期的なデータベース構築をおこない、日本語のほか英語、フランス語、スワヒリ語、ポルトガル語など、アフリカ諸国の公用語に対応したコメント反映機能を有するデータベース(多言語データベース)の試験的運用を開始する。これは、インターネットをとおして公開するものではなく、数名から十数名の研究者がコミュニケーション基盤として用いるものである。項目の見出しと標本資料名は、少なくともこの5言語で参照できるようにし、アフリカに拠点を置く研究者が閲覧できるとともに、必要に応じて資料情報を記入できるようにする。
第2年度と第3年度には複数の国(各年度2ヶ国を予定)でワークショップを開催してデータベースを試用してもらい、同時に資料に関する情報を付加してもらう。このときに付加してもらった詳細な情報を利用して、最終年度(第4年度)にワークショップ開催国ごとに小規模の公開用データベースを構築・公開する。小規模なデータベースは多言語でなく1言語(もしくは日本語を含めた1言語)となる可能性があるが、現地のコンテクストをふまえた詳細なデータベース(詳細データベース)ができあがる予定である。
このほかに、最終年度に日本で国際シンポジウムを開催し、物質文化を基盤としたアフリカ全般の文化状況とアイデンティティ構築の関わりについて議論する。その成果は、SESないしSERのかたちで刊行する予定である。
ネットワーク構築の成果としては、メンバー個々のネットワークが集合的に継承できるようになるほか、若手の研究人脈を拡大することができる。最終年度の国際シンポジウムを学術交流協定にもとづいておこなうことも可能である。