国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ジェンダー/セクシュアリティと多文化主義

共同研究 代表者 宇田川妙子

研究プロジェクト一覧

2003年度

グローバル化と多元化が急速に進行する現代社会においては、さまざまな差異がいっそう表面化し主張されるようになってきているが、その一方で、それらの差異間には激しい葛藤が起こっており、互いの「共約可能性」の模索が深刻な課題となっている。こうした問題が世界各地で最も先鋭的な形であらわれているのが、性差すなわちジェンダー/セクシュアリティをめぐる状況である。本共同研究では、その複雑な性差問題の実態を個々の事例に沿って分析・考察し、その背景にある多様な差異と権力関係の構造を研究することによって、多元的な現代社会を人類学的な視点から分析し、共生社会に向けたモデルを構築するための試みとしたい。具体的には、(1)差異の多様性に関する記述とジェンダー/セクシュアリティ概念の再検討、(2)性差をとりまく他の差異や権力構造の把握とモデル化、(3)性差の再構成課程で生ずる新たな差異化と共約可能性に向けた模索の現状に関する分析とモデル化、を議論していく。

【館内研究員】 石井正子、石森秀三、韓敏、野林厚志、林勲男、森明子
【館外研究員】 大津留智恵子、川橋範子、窪田幸子、砂川秀樹、谷口佳子、中谷文美、速水洋子、村上隆則、八木祐子
研究会
2003年6月28日(土)13:00~(第3演習室)
「成果発表に向けた準備(1)─地域性という視点(発表:全員)」
2004年1月31日(土)13:00~(第3演習室)
川橋範子「沖縄・日本のジェンダーと宗教研究の概観」
今村薫「南部アフリカ地域のジェンダー研究概要」
笹川あゆみ、加賀谷真梨「コメント」
2004年2月21日(土)13:00~(第3演習室)
谷口佳子「スリランカの開発とジェンダー研究」
富永智津子「アフリカ社会のジェンダー(史)研究の動向と『ザンジバル保護領判例集』の資料的意義」
中山紀子「トルコにおける女性研究―農村女性からみた「近代化」分析の観点から―」
今村薫「コメント」
研究成果

2003年度は、前2年間の研究会での討議を受けて、その成果を出版するための準備として3回の研究会を開催した。その主たるテーマは、ジェンダー/セクシュアリティ研究における人類学的視点の意義を積極的に再評価していこうとするものであり、現在その主旨のもとで、様々な地域の個々具体的なフィールドに即して、人類学がいかなる研究貢献をしてきたか、そこでの問題は何か等々について、成果出版としてまとめる作業に入っている。なお、その議論の一部は、すでに『民族学研究』68巻3号(2003年)の特集「ジェンダーの人類学:その困難からの展開」(責任編集:宇田川)として公開されている。

2002年度

グローバル化と多元化が急速に進行する現代社会においては、さまざまな差異がいっそう表面化し主張されるようになってきているが、その一方で、それらの差異間には激しい葛藤が起こっており、互いの「共約可能性」の模索が深刻な課題となっている。こうした問題が世界各地で最も先鋭的な形であらわれているのが、性差すなわちジェンダー/セクシュアリティをめぐる状況である。本共同研究では、その複雑な性差問題の実態を個々の事例に沿って分析・考察し、その背景にある多様な差異と権力関係の構造を研究することによって、多元的な現代社会を人類学的な視点から分析し、共生社会に向けたモデルを構築するための試みとしたい。具体的には、(1)差異の多様性に関する記述とジェンダー/セクシュアリティ概念の再検討、(2)性差をとりまく他の差異や権力構造の把握とモデル化、(3)性差の再構成課程で生ずる新たな差異化と共約可能性に向けた模索の現状に関する分析とモデル化、を議論していく。

【館内研究員】 石森秀三、韓敏、野林厚志、林勲男、森明子
【館外研究員】 大津留智恵子、川橋範子、窪田幸子、砂川秀樹、谷口佳子、中谷文美、速水洋子、村上隆則、八木祐子
研究会
2002年5月18日(土)13:00~(第6演習室)
窪田幸子「沈黙させられた語り:アボリジニ研究におけるジェンダー視点の現在」
速水洋子「他者化される側の性言説・性規模:タイのセクシャティを背景に」
2002年7月20日(土)13:00~(第3演習室)
森明子「ベルリンの、トルコ人の、女性という主体 ─ グローバル都市の人類学にむけて」
八木祐子「北インドにおけるジェンダー問題」
2002年11月2日(土)13:00~(第3演習室)
野林厚志「ジェンダーをテーマとした物質文化研究と考古学について」
石井正子「中東へ出稼ぎに行くフィリピンのムスリム女性:女性性規範の変容を中心に」
2002年12月7日(土)13:00~(第3演習室)
大津留智恵子「アメリカの市民社会再活性化にみるジェンダー」
黒木稚子「日系アメリカ人キリスト教女性のアイデンティティ交渉:ジェンダー・エスニシティ・宗教の交差点で」
2003年3月1日(土)13:00~ / 2日(日)10:00~(第3演習室)
村上薫「トルコのセクシュアリティとジェンダー:ナームス(性的名誉)をめぐる議論を中心として」
中山紀子「コメンテーター」
韓敏「中国のジェンダーに関する研究動向」
研究成果

本年度は、昨年度同様に班員による発表と議論を続けながら、来年度に計画している成果発表準備期間に向けた討議を行った。その中でとくに今年度浮かび上がってきた論点とは、1)ジェンダー問題の地域性、歴史性。ただしこれは、そうした多様性への配慮のみならず、それゆえにこそ、地域を超えた議論の必要性につながる。2)社会学、宗教学、考古学、経済学等の他の学問領域および手法との連携、および人類学的ジェンダー論の「独自性」。3)グローバル化の中で変容するジェンダー/セクシュアリティなどであった。これらの論点をさらに深めることによって、成果の出版へとつなげていくつもりである。

2001年度

グローバル化と多元化が急速に進行する現代社会においては、さまざまな差異がいっそう表面化し主張されるようになってきているが、その一方で、それらの差異間には激しい葛藤がおこっており、互いの「共約可能性」の模索が深刻な課題となっている。こうした問題が世界各地で最も先鋭的な形であらわれているのが、性差すなわちジェンダー/セクシュアリティをめぐる状況である。本共同研究では、その複雑な性差問題の実態を個々の事例に沿って分析・考察し、その背景にある多様な差異と権力関係の構造を研究することによって、多元的な現代社会を人類学的な視点から分析し、共生社会に向けたモデルを構築するための試みとしたい。具体的には、(1)差異の多様性に関する記述とジェンダー/セクシュアリティ概念の再検討(2)性差をとりまく他の差異や権力構造の把握とモデル化(3)性差の再編成過程で生ずる新たな差異化の問題と共約可能性に向けた模索の現状に関する分析とモデル化を議論していく。

【館内研究員】 石森秀三、大津留智恵子、韓敏、野林厚志、林勲男、森明子
【館外研究員】 川橋範子、窪田幸子、砂川秀樹、谷口佳子、中谷文美、速水(三野)洋子、村上隆則、八木祐子
研究会
2001年6月16日
宇田川妙子「ジェンダー/セクシュアリティ研究の現在」
全員「討論」
2001年7月14日
谷口佳子「スリランカにおける労働とジェンダー」
2001年10月20日
川橋範子「実践としてのフェミニストエスノグラフィ──仏教界の女性運動を書く」
川並宏子「Between Representation and Real Experience──仏教女性と禁欲生活」
2001年12月15日
中谷文美「近代家族の多様性──文化人類学の視点から」
2002年2月8日~10日
全員「中間討論」
村上隆則「ゲイの共同性をどう想像するか──同一性の原理の中で語らされる困難」
鶴田幸恵「『女であること』と『女らしさ』の構成──トランスジェンダーの性別の自己呈示をめぐる語りから」
クレア・マリィ「日本語とジェンダーおよびセクシュアリティーネゴシエーション(切り抜ける・交渉・談判・掛け合い)」
砂川秀樹「新宿二丁目の『ゲイ・タウン』化とその背景」
研究成果

現在一層複雑化するジェンダー/セクシュアリティの状況について、スリランカ、タイ、インドネシア、日本、イタリアというさまざまな地域において、労働、宗教、家族、社会運動などのさまざまな場面で展開されている具体例をもとに発表と討論を行った。その中で明らかになってきたのは、ジェンダー/セクシュアリティと他の差異との関連性と、そのことによる権力関係のいっそうの複雑化、ジェンダー/セクシュアリティの概念や分析枠組みの欧米中心性と不備、ジェンダーとセクシュアリティの共犯性・関連性、研究者側のジェンダー/セクシュアリティや認識枠組みの影響問題、フェミニスト視点とは何か等々、の問題である。今後さらに多様な地域の事例をもとに、これらの問題を議論していく。