日本の「近代化」をアジア・アフリカ諸社会との比較で再検討する
キーワード
日本の選択的近代化、脱亜入欧、アジア・アフリカ諸国から見た近代日本
目的
十九世紀なかばの日本における社会や技術の西洋化=「近代化」は、西洋の一国による植民地支配の結果としてではなく、日本人が主体的かつ選択的に、軍事技術も含め、ある事柄について最も適切と思われた西洋の国からエリートを高給で招き、あるいはその西洋の国へ日本のエリートを派遣して、「西洋全体」から、ある意味では非整合的に学びとった結果である。そして当時同じ立場に置かれていたアジア諸社会と協調して外圧に抗するのではなく、近隣アジアを軍事侵略する富国強兵政策によって大国化を計り、その帰結として、世界情勢への適切な対応を欠き、独伊の独裁政権と同盟しつつ、自国中心の「大東亜共栄圏」を構想する破綻への道を進んだ。このような日本の「近代化」の性格を、現在も日本がむずかしい対応を迫られ続けているアジア・アフリカ諸社会がたどった「近代化」の過程と広汎な視野で対比しつつ、根底的に再検討することが、この共同研究の目的である。
2012年度
昨年度に引き続き今年度は4回の研究会を行う。それぞれの研究会では原則として1回に2人の報告者と1人のコメンテーターによる発表を行う。
| 【館内研究員】 | 小長谷有紀、佐々木史郎、田村克己 |
|---|---|
| 【館外研究員】 | 伊藤亜人、臼杵陽、勝俣誠、金子正徳、栗本英世、桑山敬己、清水展、濱下武志、古田元夫、三尾裕子、水島司、宮崎恒二、吉澤誠一郎、 |
研究会
- 2012年6月17日(日)9:00~17:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 全員「研究会の今後の進め方について」
- 三尾裕子(東京外国語大学)「植民地台湾における「近代」:迷信を事例に」
- 濱下武志(龍谷大学)「コメントおよび討論」
- 全員「全体討論」
- 2012年9月17日(月・祝)9:30~17:00(東京大学本郷キャンパス 法文2号館 第3会議室)
- 全体討論「東アジアの近代化をめぐって」(全員)
- 古田元夫「ベトナムにおけるフランス植民地主義の評価をめぐって」
- 伊藤亜人、三尾裕子「コメント及び討論」
- 総括討論(全員)
- 2012年12月2日(日)11:00~19:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 金子正徳「ナショナリズムの扉としての教育と逸脱:インドネシアの事例から」
- 田村克己ほか「東南アジアの居住地社会について」
- コメント(川田順造)および討論(全員)
- 今後の研究会についての意見交換(全員)
- 2013年2月3日(日)13:30~18:30(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 濱下武志「グローバリゼーション下の中国に見るナシォナリズムの多様な形態」
- 吉澤誠一郎「コメント」および全員討論
- 次年度の計画について打ち合わせ
2011年度
昨年度に引き続き今年度は5回の研究会を行う。それぞれの研究会では原則として1回に2人の報告者と1人のコメンテーターによる発表を行う。また研究の進行の過程において、特別講師を招くこともある。研究会は原則として一般公開とする。
| 【館内研究員】 | 小長谷有紀、佐々木史郎、田村克己 |
|---|---|
| 【館外研究員】 | 伊藤亜人、臼杵陽、勝俣誠、金子正徳、栗本英世、桑山敬己、清水展、濱下武志、古田元夫、三尾裕子、水島司、宮崎恒二、吉澤誠一郎 |
研究会
- 2011年10月10日(月)9:00~17:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 全員「研究会の今後の進め方について」
- 伊藤亜人(早稲田大学アジア研究機構)「植民地朝鮮における'近代像'と現代韓国」
- 田村克己(民博)「コメントおよび討論」
- 全員「全体討論」
- 2012年1月29日(日)10:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 全員「研究会の今後の進め方について」
- 桑山敬己(北海道大学)「戦後日本農村の近代化と変貌:岡山市の新池集落を事例に(仮題)」
- 伊藤亜人(早稲田大学)「コメントおよび討論」
- 全員「全体討論」
- 2012年3月4日(日)10:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 研究計画打ち合わせ
- 佐々木史郎(国立民族学博物館)「極東ロシア先住民族の近代化ー帝国主義・社会主義・資本主義」
- 吉澤誠一郎(東京大学)「日露戦争と中国」
- コメント(小長谷有紀・国立民族学博物館)および総合討論
研究成果
第3回研究会の伊藤報告は、「近代」日本に真先に植民地化され、古代から日本が多くの影響を受けながらも、基層文化において日本とは異質な面が多い韓文化の本質を、農民の意識などの具体例によって示した。コメントの田村は、「近代的」自我の位置づけをより広い視野で問題にする必要を述べた。これを受けた第4回研究会で、日本農村の長期調査を行った桑山は、日本農民の individuality の強さという桑山の調査結果がアメリカで関心を呼び、「自分・まわり・ひと・世間」という仮説枠で、日本人の自己概念を論じたことを報告。第5回研究会の佐々木報告とそれに続くコメントや討議では、ロシア、ドイツと明治「近代化」の類似が指摘された。吉澤報告は、義和団鎮圧以後のロシア軍の居座りに、日本への留学生を始めとする反露運動の高まりがあり、日露戦争における日本の勝利と連動して、孫文が東京で中国同盟会を結成、清国では科挙廃止などの動きがあったことを指摘。3回の研究会を通じて「近代」のあり方の多面的な検討がなされた。
2010年度
本年度10月の共同研究開始に先立って、代表者川田が改めて研究課題についてやや詳細な問題提起を行い、それを参加者全員が前以て読んだ上で、第1回研究会では全員の自由な討論を通じて、研究課題を確認する。それに基づいて参加者一人一人が分担すべき具体的なテーマを提示し、原則として1回に2人の報告者と1人のコメンテーターを決め、報告の順番と時期を相談する。
| 【館内研究員】 | 小長谷有紀、佐々木史郎、田村克己 |
|---|---|
| 【館外研究員】 | 伊藤亜人、臼杵陽、勝俣誠、金子正徳、栗本英世、桑山敬己、清水展、濱下武志、古田元夫、三尾裕子、水島司、宮崎恒二、吉澤誠一郎 |
研究会
- 2010年11月21日(日)11:00~17:30(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 問題提起(発表者:川田順造)および自由討論
- 2011年1月30日(日)10:00~17:30(国立民族学博物館 第6セミナー室)
- 臼杵陽(東京外国語大学教授)「大川周明のイスラーム論(仮題)」
研究成果
第1回研究会で、川田がアジア・アフリカ諸国との比較を可能にする前提として、明治以後の日本の「近代化」を、昭和20年8月15日までの「前期近代化」とそれ以後の「後期近代化」に分けたこと、さらに後者のなかに、「第二次後期近代化」として、昭和35年頃の日本の高度成長期以後、ヨーロッパとも連動する生活文化の大幅な機械化時代でかつアフリカの大部分の国の「近代国家」としての独立以降に当たる時期を区別し、それをめぐって多くの議論がなされたことは、本研究のような広汎な比較の視野での共同研究が、手始めにもたらした成果である。
第2回研究会の臼杵報告が、日本とアジアの「近代化」イデオロギーと、大東亜共栄圏思想のなかで大川周明のイスラーム理解が果たした、多くの矛盾を含む役割を位置づけ、アジア・アフリカの専門研究者の討議を生んだことも、本研究の視野による共同研究の意義を明らかにしたといえる。







