国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

NGO活動の現場に関する人類学的研究―グローバル支援の時代における新たな関係性への視座

共同研究 代表者 信田敏宏

研究プロジェクト一覧

キーワード

NGO、グローバル支援、市民社会

目的

グローバルな支援の輪が地球規模で広がっている今日、NGOの活動域は、人類学が伝統的に研究のフィールドとしてきた世界各地の周辺地域にまで及んでいる。人類学が対象とするフィールドの人びとは、NGOによるボランティア活動や支援活動を媒介として、血縁や地縁に基づく従来の関係性を超えて新たな関係性を構築するようになってきており、NGO活動に関わる人びとは、グローバルな社会的ネットワークの中に自らを世界とつながる存在として位置づけるようになってきている。一方、人類学者はフィールドワークの傍らで、ローカルNGOや国際NGOが様々な支援活動を行なっているのを目にするようになり、時には人類学者自身もNGOの活動に深く関わり、場合によっては自らが支援のエージェントとなっている。こうしたNGOと人類学が接近しつつある今日的状況を鑑みて、本研究では、NGO活動の現場における人びとの新たな関係性とグローバル支援のメカニズムを、人類学のミクロな視点を生かしてローカルな現場から解明していくことを目的とする。また、新しい電子メディアを通じて人びとが国境を越えて直接むすびつく「草の根レベルのグローバリゼーション」が進行する中で、国家や世界秩序の変革・再編にNGOをはじめとする市民社会の諸アクターがどのような役割を果たしているのかを探究することも大きな目的となっている。

2013年度

【館内研究員】 宇田川妙子、鈴木紀
【館外研究員】 綾部真雄、小河久志、加藤剛、清水展、杉田映理、内藤直樹、中川理、子島進、福武慎太郎、藤掛洋子、増田和也、三浦敦、渡邊登、関根久雄
研究会
2013年5月18日(土)13:30~19:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
今年度の研究計画
渡邊登「韓国における地域社会のイニシアティブ―韓国全羅北道扶安郡放射性廃棄物建設反対運動を事例として―」
子島進「被災地におけるジャパン・イスラミック・トラストの活動」
総合討論
2013年7月21日(日)13:00~19:00(国立民族学博物館 第3演習室)
信田敏宏 「グローバルとローカル」
増田和也「『まなびあい』という支援:双方向の気づきが生み出す個別の展開」(仮題)
内藤直樹「大学をはみだして地域に関わる:地方大学における人類学的フィールドワーク教育の展開」
総合討論

2012年度

本年度は合計5回の研究会を計画している。アジア、アフリカ、ヨーロッパ、さらには市民運動、国際ボランティア、グローバリゼーションといった形で、対象地域やトピックごとに分けて研究発表と討議を行なう予定である。また、「グローバル支援の時代」という今日的状況を、人類史的視点で議論する機会を設けることも計画している。さらに、必要に応じて、社会運動論や開発学といった隣接分野の研究者や実践者・実務家などを特別講師として招聘する計画もある。なお、年度の最終の研究会(2日間)は、研究ワークショップとして一般公開することを計画している。

【館内研究員】 宇田川妙子、白川千尋、鈴木紀
【館外研究員】 綾部真雄、小河久志、加藤剛、清水展、杉田映理、内藤直樹、中川理、子島進、福武慎太郎、藤掛洋子、増田和也、三浦敦、渡邊登、関根久雄
研究会
2012年6月16日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 第3演習室)
子島進「国際協力を地続きのものとする理念と実践―JFSA西村光夫さんの事例から」
メンバー全員「ディスカッション」
2012年7月21日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
宇田川妙子「イタリアの『第三セクター』の動き」
中川理「コメント」
メンバー全員「ディスカッション」
2012年7月22日(日)10:00~17:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
信田敏宏「問題提起:グローバル支援とは何か?」
加藤剛「人類史からグローバル支援を考える」
鈴木紀「グローバルな互恵性と人類学的支援」
メンバー全員「ディスカッション」
2012年12月16日(日)13:30~18:30(国立民族学博物館 大演習室)
秋保さやか「開発とクメール農民の『革命の時』――NGO-農民関係の変容に着目して」
信田敏宏「<パブリックスケープ>という視座」
メンバー全員「ディスカッション」
2013年3月2日(日)13:00~18:15(国立民族学博物館 大演習室)
《共同研究『実践と感情―開発人類学の新展開』(代表:関根久雄)と合同開催》
藤掛洋子「連帯から分裂へパラグアイ農村部における国際協力活動より(1993-2013)」
質疑応答
上田直子「援助とソーシャル・キャピタル:中米シャーガス病対策でのサシガメをめぐるセンチメント」
質疑応答

2011年度

平成23年度は、合計3回の研究会を実施する計画である。本共同研究会のメンバーの一部は、11月5日に開催予定の国際シンポジウム(機関研究プロジェクト「支援の人類学」主催)に参加する予定であり、そして、本共同研究が採択された場合には、国際シンポジウムの翌日(11月6日)には、代表者の信田が本研究の趣旨を説明し、共同研究員全員で研究内容について議論するため、第1回の研究会を実施する予定である。また、来年の1月28日に開催予定の第2回の研究会では、特別講師等も招聘して、「NGOと人類学」をテーマとする一般公開の研究ワークショップを実施する計画を立てている。3月10日には、共同研究員全員の研究計画を確認する総合討議を含めた第3回の研究会を実施する予定である。

【館内研究員】 宇田川妙子、白川千尋、鈴木紀
【館外研究員】 綾部真雄、小河久志、加藤剛、清水展、杉田映理、内藤直樹、中川理、福武慎太郎、藤掛洋子、増田和也、三浦敦、渡邊登
研究会
2011年12月18日(日)13:30~19:00(国立民族学博物館 第3演習室)
信田敏宏「共同研究会の趣旨説明」
メンバー全員「今後の研究計画」
2012年3月9日(金)13:30~19:00(国立民族学博物館 大演習室)
小河久志「NGOの支援活動と社会変化:タイ南部インド洋津波被災地の事例」
メンバー全員 ディスカッション
研究成果

本年度は、合計2回の研究会を実施した。第1回の研究会では、代表の信田が共同研究会の趣旨を説明する発表を行なった。その後、メンバーの自己紹介を兼ね、今後の研究計画を話し合った。メンバーの加藤より本研究の中心的な概念である「グローバル支援」について問題提起がなされた。「グローバル支援」の概念については、人類史のコンテクストに位置づけながら議論していくことが確認された。第2回の研究会では、メンバーの小河による発表「NGOの支援活動と社会変化:タイ南部インド洋津波被災地の事例」があり、その後のディスカッションでは、タイ国のNGO事情、津波災害における緊急支援のあり方、宗教と支援の関係についてディスカッションが行なわれた。
また、本共同研究に関連する機関研究プロジェクト「支援の人類学」の国際シンポジウムが2011年11月5日に国立民族学博物館第4セミナー室で実施された。このシンポジウムでは、マレーシアからの招待者に加えて、本共同研究のメンバーが発表者、司会、コメンテーター、オブザーバーとして参加した。東南アジア(マレーシア、タイ)におけるNGO活動を実務者と共に議論することができ、共同研究会のスタートとしても、有意義なシンポジウムになった。