国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ネパールにおける「包摂」をめぐる言説と社会動態に関する比較民族誌的研究

共同研究 代表者 名和克郎

研究プロジェクト一覧

キーワード

ネパール、言説政治、社会的包摂

目的

本研究は、かつてヒマラヤのヒンドゥー王国であり、現在連邦民主共和制に向けた体制転換期にあるネパールにおいて、多種多様な中間集団の存在を前提として展開される種々の政治的な主張と、そうした中間集団に属するとされる様々な人々の行う実践とが織りなす布置を、近年ネパールにおいて急速に普及した翻訳語サマーベーシーカラン(「包摂」)を鍵概念として明らかにするものである。カースト的秩序から一元的な国民統合路線を経て多民族性、多言語性が認められた1990年以降のネパールにおいて、「先住民族」「ダリト」などグローバルに或いは国境を越えて流通する概念に基づいた様々な権利主張の運動と、マオイストから王党派に至るナショナルな水準での政党の主張、さらには人類学的なフィールドワークによって明らかにされる、必ずしもこうした運動や主張により回収されないローカルな水準での人々の状況、以上三者の間の関係と齟齬を多層的、多元的に検討することから、ネパール社会の歴史と現状に関する統合的理解を提出することが目的である。

2013年度

【館内研究員】 南真木人、宮本万里
【館外研究員】 石井溥、上杉妙子、鹿野勝彦、佐藤斉華、高田洋平、橘健一、田中雅子、外川昌彦、中川加奈子、丹羽充、幅崎麻紀子、藤倉達郎、別所裕介、Maharjan, Keshav Lall、森田剛光、森本泉、安野早己、渡辺和之
研究会
2013年6月23日(日)13:00~18:30(国立民族学博物館 第6セミナー室)
高田洋平(京都大学大学院)「ネパールの都市のストリート空間と生-ストリートチルドレンの『包摂』をめぐって-」
宮本万里(国立民族学博物館)「現代ブータンにおける「デモクラシー」の諸相」
研究打合せ
2013年7月6日(土)13:00~19:00(国立民族学博物館 第3セミナー室)
安念真衣子(京都大学大学院)ネパールにおけるリテラシー実践と「包摂」
藤倉達郎(京都大学大学院)「何に包摂されるのか? タルー人社会活動家たちの履歴から」
研究打合せ

2012年度

昨年度の研究会における問題意識の共有、及び特別講師として招聘したネパール人研究者の方々による多様な問題の指摘を受けて、研究2年度目に当たる本年度は、共同研究メンバーによる個別事例の検討を巡る発表を中心に、5回の研究会を開催する予定である。1回の研究会につき、2人或いは3人のメンバーあるいは特別講師が発表・講演を行う。内容的には、既に本研究課題の目的と合致した内容の現地調査を実施してきた研究者による、それぞれの地域・主題に関する状況の変遷と現状を把握する形の発表が中心となる。また研究会の内1回は、20世紀中葉のネパールに関する資料を多く所蔵する東京大学東洋文化研究所で開催し、資料の内容を確認しつつ、カースト的秩序を前提とした法体系から一元的な国民統合路線へとネパールがシフトした時期について、現在進行中の事態と対比しつつ集中的に検討することとしたい。

【館内研究員】 南真木人、宮本万里
【館外研究員】 石井溥、上杉妙子、鹿野勝彦、佐藤斉華、橘健一、田中雅子、外川昌彦、藤倉達郎、別所(原)裕介、Maharjan, Keshav Lall、森本泉、安野早己、渡辺和之
研究会
2012年7月7日(土)13:00~18:30(国立民族学博物館 大演習室)
2012年7月8日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 大演習室)
《7月7日(土)》
中川加奈子(関西学院大学)「カトマンズにおける民主化・市場化と下からの社会的包摂ー「カドギ」によるカースト・イメージの読み替えー」
森本泉(明治学院大学)「ガンダルバと社会的包摂-新ネパール再構築過程で/を歌う」
(共同討議)「昨今のネパール情勢について」
《7月8日(日)》
佐藤斉華(帝京大学)「彼女たちはいかにして「仕事に満足」か?カトマンズ周辺の建築労働者女性の場合」
2012年11月17日(土)12:30~19:00(国立民族学博物館 第4演習室)
別所裕介「開発と仏教―ネパールの包摂ポリシーにおけるチベット仏教集団の動向」
安野早己「あるブラーマンの死亡事件-人民戦争後の村落社会の変化-」
石井溥 「ネパールとブータン:類似と対照」
2013年1月12日(土)12:30~19:00(国立民族学博物館 第4セミナー室)
森田剛光「ネパール、タカリーの民族範疇に関する考察」
丹羽充「拡がるアイロニーと共同の可能性、もしくは不可能性:カトマンドゥ盆地のプロテスタンティズムを事例に」
渡辺和之「村に残った人々の暮らしはどう変わったか?東ネパール、ルムジャタール村における家畜頭数、耕作地、村落開発委員会における女性とダリットの役割の変化」
2013年3月2日(土)10:00~19:00(広島大学大学院国際協力研究科小会議室(1F))
Khadga K.C. (京都大学/ Tribhuvan University) "Civil Military Relations in Nepal"
(共同討議)「ネパールの平和構築における「包摂」について」
田中雅子(文京学院大学)「人身売買被害者にとっての包摂:村に戻ったサバイバーの暮らしと当事者運動」
全員 「次年度の研究計画について」

2011年度

初年度第一回の研究会では、申請者が趣旨説明を兼ねて「社会的包摂」を巡るネパールの状況についての自らの理解を予備的に班員に説明し、参加者の各々がそれぞれの研究とフィールド経験に照らしてそれを批判するという形で、ブレインストーミングを行い、今後の研究計画を確定する。

初年度第二回以降は、各々の研究者が順次自らの研究蓄積に基づき発表を行う。既に本研究の目的に沿った現地調査を実施している研究者による実態把握的発表から始めるが、ネパールに近い他の国・地域での調査経験を豊富に持つ班員には、比較の観点を入れた発表をお願いしている。班員のみでネパールの多様な状況を十分カバーすることは不可能であるため、欠落が見出された領域に関してはその都度柔軟にゲスト・スピーカーを招聘し、議論の視野を広げるよう配慮する。

【館内研究員】 南真木人、宮本万里
【館外研究員】 石井溥、上杉妙子、鹿野勝彦、佐藤斉華、橘健一、田中雅子、外川昌彦、藤倉達郎、別所裕介、Maharjan, Keshav Lall、森本泉、安野早己、渡辺和之
研究会
2011年12月10日(土)13:00~19:30(国立民族学博物館 第6セミナー室)
名和克郎(東京大学東洋文化研究所) 共同研究趣旨説明
Nirmal Man Tuladhar(京都大学ASAFAS) “Dream of Nepali Lay Citizens: Social Inclusion”
全員 今後の共同研究の運営について
2012年2月18日(土)10:00~17:30(国立民族学博物館 第6セミナー室)
2012年2月19日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 第6セミナー室)
《2月18日(土)》
南真木人(国立民族学博物館)「共同研究「マオイスト運動の台頭と変動するネパール」の成果から」
Bhaskar Gautam, “Institutional Pluralism: social inclusion, political pluralism, and the Maoist's predicament”
Jagannath Adhikari, “Social inclusion in access to natural resources in Nepal: Exploring the impact of globalization”
《2月19日(日)》
名和克郎(東京大学東洋文化研究所)「「包摂」の語でネパールについて何を論じ得るか?来年度以降に向けて」
研究成果

研究初年度にあたる本年度は、2回の研究会を開催した。第1回研究会では、研究代表者が本共同研究の企図・目標等を説明した後、参加者それぞれの問題関心及びフィールドの状況を前提として、今後の共同研究の展開についてすりあわせを行った。第2回研究会では、南真木人氏より、本研究に先行して行われたネパール関連の共同研究の成果の総括があり、また研究代表者により、「包括」概念によりネパールの現状を分析すると同時にネパールの現状から「包摂」概念を批判的に再考するという、本共同研究の目標が提示された。さらに、ネパールにおいてこの問題を研究してきたNirmal Man Tuladhar氏(第1回研究会)、Bhaskar Gautam氏、Jagannath Adhikari氏(第2回研究会)を特別講師として招き、それぞれ主に言語的・民族的側面、政治的及び経済的側面から、ネパールにおける「包摂」を巡る問題の広がりとその含意について批判的にお話いただいた。以上より、本共同研究が前提とすべき状況と研究水準が参加者の間で共有され、来年度以降の各共同研究員による個別発表のための準備が整った。