グローバリゼーションの中で変容する南アジア芸能の人類学的研究
キーワード
グローバリゼーション、南アジア芸能、変容
目的
本研究の目的は、グローバリゼーションの中で変容する南アジア芸能の現状を、同地域の政治・経済・社会的変化という文脈に位置づけ、人類学的な観点から明らかにすることである。インドで起こった1990年代の経済自由化を端緒として、2000年代に入り南アジアの社会変化は更に進展した。そして、儀礼、演劇、舞踊、音楽などの南アジア芸能が、多様化する情報メディアの拡大及び人の移動を通じて幅広く受容・消費される状況をもたらした。それに合わせ、芸能の実践形態や実践者の社会経済的な状況に大きな変化が生じていると同時に、海外への芸能の拡散状況や南アジアへの逆輸入という現象がみられる。本研究では、芸能実践者たちが従来の社会関係を越えたネットワークに参入することで生じる、南アジア芸能の再定義と拡張について考察を行う。現代の芸能実践者たちは、様々な観客・消費者の嗜好に応えるため、従来とは異なる美意識とパフォーマンスを身につけ、市場経済原理に合わせたマネジメントとマーケティングを行う必要に迫られている。彼らが新たな需要に応える一方で、既存の芸能形態や社会形態を維持しつつ、南アジア芸能を創発・変容させていく過程を描き出す。
2013年度
| 【館内研究員】 | 杉本良男、寺田吉孝 |
|---|---|
| 【館外研究員】 | 飯田玲子、岩谷彩子、岡田恵美、小尾淳、古賀万由里、小西公大、竹村嘉晃、橘健一、田森雅一、村山和之、山本達也 |
研究会
- 2013年5月18日(土)13:30~18:30(国立民族学博物館 第3演習室)
- 松川恭子(奈良大学)「ICAS 8(The Eighth International Convention of Asian Scholars)分科会発表について」
- 橘健一(立命館大学非常勤講師)「ネパールにおける'民謡'をめぐる景観について」(仮題)
- 全員「全体討論」
- 2013年5月19日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 第3演習室)
- 岡田恵美(琉球大学)「北インドの芸能を支えるハルモニウム:外来楽器の採用と楽器産業の変容にみるインドの楽器観」
- 2013年7月27日(土)13:30~18:30(国立民族学博物館 大演習室)
- 松川恭子(奈良大学)・古賀万由里(立正大学非常勤講師)・小西公大(東京外国語大学)「グローバリゼーションと南アジア芸能に関連する先行研究のレビュー:メディア、舞踊、ワールドミュージック他」
- 全員「全体討論」
- 2013年7月28日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 大演習室)
- 杉本良男(国立民族学博物館)「パチもんの逆襲―<インド>映画の21世紀」
2012年度
初年度の研究会では、芸能の変容を通して、グローバリゼーションの作用が南アジアにおいて働く際の特徴を明らかにする必要性が確認された。平成24年度は、この問題意識を踏まえ、以下3点に焦点を合わせて各地域の具体的事例の検討を行う。研究会を4回開催する予定である。(1)現代南アジア社会における芸能形態の変容・動態と、その歴史的な過程を問い直す。(2)なぜ特定の芸能がグローバル化して流通するのか、流通する芸能形式の違いや消費動向のあり方を明らかにする。(3)多元化するメディア状況がいかにグローバルな社会変化と連動し、かつその中で生きる人々の生活世界を再定義しているのかを考える。
| 【館内研究員】 | 杉本良男、寺田吉孝 |
|---|---|
| 【館外研究員】 | 飯田玲子、岩谷彩子、岡田恵美、小尾淳、古賀万由里、小西公大、竹村嘉晃、橘健一、村山和之、山本達也 |
研究会
- 2012年8月25日(土)14:00~19:00(国立民族学博物館 大演習室)
- 小尾淳(大東文化大学博士後期課程)「「神々の名を唱える」芸能の「環流」状況を考える―ナーマ・サンキールタナの現代的様相」
- 岩谷彩子(広島大学大学院)「環流する「ジプシー」共同体―北西インドの芸能民カルベリアの踊りとコミュニティの生成」
- 全体討論
- 2013年1月12日(土)13:00~18:30(国立民族学博物館 第4演習室)
- 古賀万由里(立正大学非常勤講師)「バラタナーティヤムのグローバル化と揺れるジェンダー」
- 村山和之(中央大学非常勤講師)「スーフィー芸能師たちの大衆音楽的世界:カウワーリーと民謡から」
- 全体討論
- 2013年1月13日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 第4演習室)
- 松川恭子(奈良大学)「インド、ゴア社会の演劇ティアトルにみる地域的想像力の展開」
- 2013年2月9日(土)13:30~18:30(国立民族学博物館 第4演習室)
- 飯田玲子(京都大学大学院博士後期課程)「メディアの変化とタマーシャーの変容」
- 竹村嘉晃(国立民族学博物館外来研究員)「20世紀におけるインド芸能の伝播~あるマラヤーリー・シンガポール人のライフヒストリーを事例に」
- 全体討論
- 2013年2月10日(日)10:00~12:00(国立民族学博物館 第4演習室)
- 小西公大(東京外国語大学)「"Folk Music"が生み出されるとき―『レモン唄』にみるタール沙漠世界のモダニティ」
2011年度
初年度である本年度は、2回研究会を開催する。第1回では、趣旨説明の後、グローバリゼーションと南アジア芸能の動態を理解していくため、従来の研究における論点を整理し、本研究の進め方について全体討論を行う。第2回では、第1回の全体討論にもとづき共有された問題について、具体的な事例の検討を開始する。同時に、各メンバーがこれまでに収集してきた資料と文献に関する情報を共有する。
| 【館内研究員】 | 杉本良男、寺田吉孝 |
|---|---|
| 【館外研究員】 | 飯田玲子、岩谷彩子、岡田恵美、小尾淳、古賀万由里、小西公大、竹村嘉晃、橘健一、村山和之、山本達也 |
研究会
- 2011年10月10日(月)13:30~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
- 松川恭子(奈良大学)「共同研究の趣旨と今後の方針について」
- 全員「自己紹介と各自の研究テーマについて」
- 全体「全体討論」
- 2012年3月6日(火)14:00~19:00(国立民族学博物館 第1演習室)
- 山本達也(日本学術振興会特別研究員)「グローバル化時代の音楽変容―現代的チベット音楽と西洋音楽の接触」
- 田森雅一(特別講師・国立民族学博物館外来研究員)「インド音楽の近代化とマスメディア:ラジオ放送が北インド古典音楽と音楽家の生活世界に与えたインパクト」
- 全体討論
研究成果
第1回研究会では、本研究を進めていく上での論点の共有化を図った。特に「グローバリゼーションの作用が南アジアにおいて働くとき、特徴的な現象とは何か」という問いを芸能の民族誌的記述を通じて明らかにすることを確認した。第2回研究会では、インドおよびネパール在住チベット難民ポップ・ミュージシャンの実践と音楽変容に関する報告、ラジオ放送がインド音楽の近代化に与えた影響に関する報告が行われた。最初の報告は、現代的チベット音楽における西洋的リズムの採用に注目し、ポップ・ミュージシャンたちの身体性の変容について指摘を行った。ポップ・ミュージシャンたちが西洋的リズムを志向する一方で、チベット難民の多くはリズムを重視しない伝統的チベット音楽を好んで聴く。また、ポップ・ミュージシャンたちはインドのボリウッド・ミュージックの影響も受けている。技術・知・制度伝達のプロセスとしてのグローバリゼーションは、重層的・複方向的であることが確認された。ふたつめの報告は、全インド・ラジオ放送(AIR)による古典音楽の国民音楽化とそれが音楽家と音楽伝統に与えたインパクトについて論じた。古典音楽の国民音楽化プロセスの中で、音楽家たちは宮廷というパトロンを失い、教師や放送局付き音楽家となった。音楽家たちが現代においてグローバルに広がるネットワークを作り上げていく前段階として、20世紀に起こった変容のプロセスを理解しておくことの重要性を確認することができた。







