国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

音盤を通してみる声の近代―台湾・上海・日本で発売されたレコードの比較研究を中心に

共同研究 代表者 劉麟玉

研究プロジェクト一覧

キーワード

東アジア、SPレコード、声の近代

目的

本研究は、1945年以前に日本のレコード会社によって台湾と上海で発売されたレコードを取り上げ、両地域におけるレコード産業および音楽の発展の特徴と関連を明らかにすることを目的としている。本研究では、数多く存在する東アジアのレコード音楽から、「声」・「歌」を含む音楽ジャンルのレコードに焦点を当てる。東アジアの在来音楽には語り物が多い上、初期レコードは、演説、映画説明、戯劇など、「音楽」に限定されない多様な音を収録した。そこで、ここでは「声」という概念を用いた。具体的には、次の2点に重点をおいて研究を進める。

  1. 台湾、上海、日本で発売されたレコードを比較し、各地域の音楽嗜好の傾向、共通点、独自性を探求し、更にそれらの関連性を見いだす。
  2. レコード産業の発達と各地域の社会、文化、音楽の間の相互的影響について研究する。

台湾と上海の音楽文化には共通点があり、録音されたレパートリーには重なり合う部分も見られる。一方で、日本の企業が初期からレコード産業を支配した台湾と、欧米のレーベルが産業の基礎を築き、後に日本企業が進出した上海では、レコード制作のあり方は大きく異なっていた。両地域のレコードの比較は、東アジア音楽の近代史においてメディアの発展、日本の支配、そして地域間の相互交流がどのような影響を与えていたかを明らかにするだろう。

2013年度

【館内研究員】 野林厚志、福岡正太
【館外研究員】 今田健太郎、大畑(長嶺)亮子、尾高暁子、垣内幸夫、黄英哲、西村正男、星名宏修、細川周平、三澤真美恵、四方田(垂水)千恵
研究会
2013年6月16日(日)13:00~17:30(国立民族学博物館 第4演習室)
西村正男(関西学院大学)「トルストイ『復活』と中国語映画」
劉麟玉(奈良教育大学)「台湾コロムビア会社の販売過程―注文書の分析を通して―」
綜合討論
2013年8月30日(金)13:00~18:00(コロムビア・アーカイブ 会議室)
斉藤徹(日本コロムビア)・テーマ「日本コロムビア百年の歩みとアーカイブの成立過程」
武沢茂(日本コロムビア)・テーマ「アーカイビング作業の重要性・方法及び実践例」
小林正義(日本コロムビア)・テーマ「コロムビア・アーカイブの史料整理と現状」
質疑応答

2012年度

前年度の研究内容を踏まえて以下のように実施したい。

  1. 第1回から第4回までの研究会では、引き続き研究対象のジャンルについて、実際に博物館内で所蔵されている音源を視聴し、専門分野を異にするそれぞれの研究分担者の視点から、意見を交換し、それらの音楽が発展してきた歴史について帰納的考察を行う。さらに、毎回の研究会では共同研究員がそれぞれの専門分野から、本研究との接点を見つめながら、それぞれの立場から研究を進める。また、海外の研究者、とりわけいままで連携研究の形をとってきた台湾大学音楽研究所のレコード研究チーム(招集者:王桜芬)と共に「レコードの近代」という課題をめぐって話し合う場を設けたい。
  2. 第5回研究会では、日本のレコード歌手、レコード研究の専門家と関係レコード会社の研究員を特別講師として研究会に招き、録音した側と録音された側の経験談、録音技術に関する専門知識の提供を図る。さらに一年間の取りまとめとして、今年度の進捗状況や、研究の方向性についての修正、次年度の研究課題を設定するなどの作業を行う。
【館内研究員】 野林厚志、福岡正太
【館外研究員】 今田健太郎、大畑(長嶺)亮子、尾高暁子、垣内幸夫、黄英哲、西村正男、星名宏修、細川周平、三澤真美恵、四方田(垂水)千恵
研究会
2012年6月9日(土)13:00~18:30(国立民族学博物館 第4演習室)
三澤真美恵「植民地期台湾映画フィルム資料へのアプローチ」
康尹貞“The Formation of Taiwanese Theatrical Theme during 1900s-1930s”
2012年10月8日(月)13:00~17:00(国立民族学博物館 第4演習室)
陳培豊「郷土文学の声と大衆」
今田健太郎「日本における物語の音楽的演出についての試論」
総合討論
2013年1月13日(日)13:00~17:30(国立民族学博物館 第1演習室)
垣内幸夫 「近現代の評弾 ― 調(流派)の確立と伝承」
細川周平「『世界音楽としての民謡』の反省と展望」
総合討論

2011年度

研究会を2回開催する。

  1. 第1回研究会では、台湾、上海、日本の地域別で研究チームを作り、役割分担、研究の方向性を決定する。また、民族学博物館の音声資料の所蔵状況について確認する。
  2. 第2回研究会では、研究対象とする音楽ジャンルの音声資料と目録の照合作業を行う。特に、番号のみのレコードが実在しないものもあるので、台湾、上海の研究者と連携し、実際の音声を聞くことによって欠けた資料を補足する。
【館内研究員】 福岡正太
【館外研究員】 今田健太郎、大畑(長峰)亮子、尾高暁子、垣内幸夫、黄英哲、西村正男、星名宏修、細川周平、三澤真美恵、四方田(垂水)千恵
研究会
2011年11月5日(土)14:00~18:30(国立民族学博物館 第3演習室)
劉麟玉(奈良教育大学)「音盤を通してみる声の近代―台湾・上海・日本で発売されたレコードの比較研究を中心に」「研究分担者の紹介」
福岡正太(国立民族学博物館)「『日本コロムビア外地録音資料』が語るもの」
参加者全員「ディスカッション・タイム」
2012年3月9日(金)13:00~17:30(国立民族学博物館 第4演習室)
2012年3月10日(土)9:00~11:30(国立民族学博物館 第4演習室)
《3月9日(金)》
今田健太郎「民博所蔵金属原盤の収蔵状況について」
朴燦鎬「韓国歌謡史とSPレコード」
総合討論
《3月10日(土)》
長嶺亮子「コロムビアレコード資料からみる1930年代前後の歌仔戯とその周辺の劇音楽」
「SPレコードに聴く『歌曲戯』」
研究成果

この半年間の研究成果としては以下のものを挙げることができる。

  1. 一回目の研究会において、劉は1930年代に台湾で発売されたレコードのジャンル、発売曲数、発売価格を分析し、報告した。その分析から、比較的経済力のあるエリート層が比較的高価で新しい音楽ジャンルの流行歌を好んだということ、つまり経済力の有無と音楽嗜好との間に一定の関連があったことが見いだされた。また福岡は、国立民族学博物館が所蔵しているコロムビアレコードの金属盤を受け入れるに至った経緯とその整理状況、これらの資料に基づいて行われた研究の成果、更に台湾のレコード音楽に見られる日本のレコード音楽の要素についての報告を行った。
  2. 二回目の研究会では、今田が金属盤の上に記載されている番号を整理し、データベースを作成したプロセスについて報告した。また、特別講師として招聘した朴燦鎬氏の研究報告から、日本のレコード音楽、とりわけ日本の大衆音楽が植民地朝鮮でハングル語ヴァージョンのレコードとして発売されていたことが明らかとなった。更に長嶺は、台湾の歌仔戯のレコードの伴奏楽器に焦点を当てて行った調査の結果として、まだ発展段階にあったと考えられる1930年代の歌仔戯の演奏形態が様々な様相を呈していたことを報告した。