国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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アジア・オセアニアにおける海域ネットワーク社会の人類史的研究――資源利用と物質文化の時空間比較

研究期間:2012.10-2016.3 代表者 小野林太郎

研究プロジェクト一覧

キーワード

海域ネットワーク、資源利用、物質文化

目的

アフリカ大陸で誕生した現生人類は、約5万年前頃までにはアジアやオセアニアの島嶼海域に移住・拡散した。島嶼海域に進出した人類は、自然資源や加工生産物を交換するために海を渡る移動を繰り返し、その過程で広範囲に及ぶネットワークを形成してきた。アジア・オセアニアには、そうした海域ネットワークを生活基盤とする社会が各地にみられる。
本研究の目的は、この海域ネットワーク社会の普遍性と地域性を、物質文化と資源利用の様式ならびにその分布に関する時間と空間双方の面での比較を通じて、人類史的な視点から検討することにある。このうち時間面では、5万年程度の幅の考古学的時間(ただし約4000年前の新石器時代以降に主眼をおく)と約100年程度の幅の民族誌的時間を、空間面では、日本を含む東アジア、東南アジア、オセアニアの海域を、それぞれ比較の準拠枠とする。本研究では、考古学と文化人類学を主とする分野横断的な研究メンバーが、時間・空間軸に従いながら比較検討を行うことにより、アジア・オセアニアにおける人類の海洋生態への適応過程に関する時代別・地域別のモデル構築に挑戦し、さらにこれらの成果を相互比較することで、『海域ネットワーク社会の人類史』(仮題)をまとめることを目的としている。

2015年度

最終年度となる本年度は国立民族学博物館を会場として、3回の研究会を開催する予定である。このうち2回の研究会ではそれぞれ、考古学的時間軸および民族誌的時間軸を視点として海域ネットワーク社会の普遍性と地域性について総合的に検討する。また必要に応じて特別講師を招き、新たな情報提供をして頂いた上で、より多角的な議論を展開したい。また本年度は最終年度となるため、最終回となる3回目の研究会においては、これまでの成果報告に関する出版計画の詳細についても検討する予定であり、これまで成果を学術的なレベルと一般社会向けの内容とに整理して公表する予定である。

【館内研究員】 印東道子、飯田卓
【館外研究員】 赤嶺淳、秋道智彌、片桐千亜紀、島袋綾野、鈴木佑記、田中和彦、長津一史、玉城毅、橋村修、深田淳太郎、山形眞理子、山極海嗣、山口徹
研究会
2015年6月21日(日)13:00~19:00(国立民族学博物館 第2演習室)
小野林太郎・長津一史「今年度研究会の方向性について」
秋道智彌「トビウオ漁から見た琉球の位置:アジア・太平洋的視点から」
総合討論1
赤嶺淳「ナマコ利用の多様化と可能性:マレーシアの事例から」(仮題)
総合討論2
次年度の出版計画に関する打ち合わせ
2015年9月15日(火)14:00~16:30(国立民族学博物館 第2演習室)
長沼さやか「漁民の移動と定住:中国珠江デルタの水上居民からの考察」
総合討論
2015年10月26日(月)13:00~19:00(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎・長津一史「今回のテーマと課題」
飯田卓「マダガスカル島の対大陸ネットワークと沿岸ネットワーク」(仮題)
総合討論1
竹川大介「メラネシアの海産資源をめぐるネットワークと資源利用」(仮題)
総合討論2
山口徹「プカプカ環礁の植民地期におけるネットワーク」(仮題)
出版計画に関する打ち合わせ

2014年度

本年度も沖縄を中心とする東アジア、東南アジア、オセアニアを枠組みとし、時間軸による比較では先史時代までを含む考古学的な時間軸と同時代を中心とする民族誌的時間軸を枠組みとし、海域ネットワーク社会を物質文化と資源利用という二つのテーマから、各研究事例を比較・検討する計画である。計画している研究会は計3回であり、このうち2回は国立民族学博物館で開催し、1回は本共同研究と東南アジア考古学会の共同開催という形で、東京を会場に毎年11月に開催されている東南アジア考古学会の大会で本共同研究のテーマに関わるセッションを企画し、本研究会のメンバーを中心に研究成果の発表を計画している。この東南アジア考古学会での大会は11月の開催予定であり、国立民族学博物館で開催する2回の研究会は6~7月、1~2月を予定している。

【館内研究員】 印東道子、飯田卓
【館外研究員】 赤嶺淳、秋道智彌、片桐千亜紀、島袋綾野、鈴木佑記、田中和彦、長津一史、玉城毅、橋村修、山形眞理子、山極海嗣、山口徹
研究会
2014年7月6日(日)13:00~16:00(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎「本年度の計画」
瀬木志央「フィリピン中央ビサヤ地域の小規模漁業と商業漁業を巡る海域ネットワーク」
総合討論
2014年10月19日(日)10:30~16:00(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎・長津一史「第2回研究会の趣旨と発表者の紹介」
深田淳太郎「ムシロガイ交易の地域史:ニューブリテン島-ブーゲンビル島-ソロモン諸島西部地域を結ぶ海域ネットワークの歴史的変遷」
総合討論1
玉城毅「沖縄・糸満漁民を生み出した力学:漁業町形成過程における政治経済と文化」
総合討論2
次回研究会の打合せ
2014年11月16日(日)10:00~18:00(上智大学2号館5階508教室)
秋道智彌(総合地球環境学研究所)「海のエスノ・ネットワーク論からみた東南アジア・オセアニア・琉球」
印東道子(国立民族学博物館) 「ミクロネシアの海域ネットワーク:その起源に関する一考察」
山口徹(慶応義塾大学)「海域ネットワークが生み出したリモートオセアニアの環礁景観」
島袋綾野(石垣市教育委員会) 「更新世期以降における八重山列島の人類移住と海域ネットワーク:これまでの成果と課題」
山極海嗣(琉球大学)「下田原期~無土器時代における先史宮古・八重山諸島と海域ネットワーク」
小野林太郎(東海大学)「新石器~金属器時代におけるウォーラシア海域の人類移住と海域ネットワーク」
田中和彦(上智大学)「新石器~金属器時代におけるフィリピンとその周辺地域における人類移住と海域ネットワーク:土器、甕棺、副葬品から」
深山絵実梨(早稲田大学)「鉄器時代の南シナ海における海域ネットワーク:耳飾の分布と年代からの復元の試み」
山形眞理子(金沢大学)「鉄器時代の南シナ海における海域ネットワークと人類の移住:ベトナムの甕棺墓に残された証拠から」
総合討論

2013年度

本年度も昨年度に続き、沖縄を中心とする東アジア、東南アジア、オセアニアを枠組みとし、時間軸による比較では先史時代までを含む考古学的な時間軸と同時代を中心とする民族誌的時間軸を枠組みとし、海域ネットワーク社会を物質文化と資源利用という二つのテーマから、各研究事例を比較・検討する計画である。計画している研究会は計3回であり、このうち2回は国立民族学博物館で開催し、1回は本共同研究の研究対象地となっている沖縄の八重山諸島(石垣島)で開催を計画している。また石垣島での開催に際しては、近年、石垣島で発見された更新世後期にさかのぼる考古資料をめぐる検証と議論、地元の一般の方々への研究成果の公表も目的とした公開研究会の実施も計画している。この石垣島での公開研究会は10~11月の開催予定であり、国立民族学博物館で開催する2回の研究会は5~6月、7~8月を予定している。

【館内研究員】 印東道子、飯田卓
【館外研究員】 赤嶺淳、秋道智彌、片桐千亜紀、島袋綾野、鈴木佑記、田中和彦、玉城毅、長津一史、橋村修、山形眞理子、山極海嗣、山口徹
研究会
2013年7月20日(土)12:30~19:00(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎「テーマの趣旨と発表者の紹介」
秋道智彌「海のエスノ・ネットワーク論:南と北の海から」
辻貴志「フィリピン・パラワン島の生業活動、資源利用、民族間関係」(特別講師)
常設展のオセアニア展示を実見しながら人類による海の利用とネットワークについて討議
鈴木佑記「ナマコで歩く:海民モーケンの来し方行く末」
総合討論
2013年11月10日(日)10:00~18:00(沖縄県石垣市大濱信泉記念館・多目的ホール)
公開研究会への打合せと11日の考古遺跡・遺物実見に関する打ち合わせ
小野林太郎「研究会のテーマと趣旨説明」
長津一史「東南アジアの海民サマと海産資源を巡る海域ネットワークの在り方」
飯田卓「あらたな漁法の習得と普及:海域ネットワーク社会の技術的基盤」
玉城毅「糸満漁民の社会と海域ネットワーク性」(特別講師)
総合討論(地元参加者の方々からのコメント・情報提供を含む)
2013年11月11日(月)9:00~18:00(沖縄県石垣市大濱信泉記念館・研修室1)
石垣島における考古遺跡・遺物実見とその検討(案内役:島袋氏・片桐氏)
島袋綾野「石垣島における津波関連遺跡群:津波被害が島民に与える影響の再検討」
片桐千亜紀「白保竿根田原遺跡と旧石器時代以降の八重山における海域ネットワーク」
印東道子「ミクロネシアにおける土器流通と海域ネットワーク:サウェイ交易再考」
山極海嗣「下田原期~無土器時代の先史八重山とオセアニアとの関連性」(特別講師)
総合討論
2014年1月26日(日)13:00~18:00(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎・長津一史「第5回研究会の趣旨とこれまでの総括」
橋村修「アジア・オセアニアにおけるシイラをめぐる利用と文化」
常設展のオセアニア展示を実見しての物質文化比較
小野林太郎「海域ネットワーク社会の諸相と時空間比較」
総合討論
研究成果

平成25年度は沖縄を中心とする東アジア、東南アジア、オセアニアを枠組みとし、時間軸による比較では先史時代までを含む考古学的な時間軸と同時代を中心とする民族誌的時間軸を枠組みとし、海域ネットワーク社会を物質文化と資源利用という二つのテーマから、計3回の研究会を開催できた。このうち2013年7月20日、および2014年1月26日の研究会は国立民族学博物館にて実施し、主にメンバーによる個人発表とそれに対する全体での議論を進めた。これに対し、2013年11月10~11日に沖縄県石垣島で行った研究会は、初日を公開研究会として石垣市大濱信泉記念館の多目的ホールにて開催し、地元の研究者ら多数の参加者を交え、メンバーらによる発表と参加者からのコメントや情報提供を頂き大きな成果があった。またその内容については翌日の八重山毎日新聞朝刊にも掲載された。二日目となる11月11日の研究会はメンバーのみで実施し、石垣市内の重要遺跡・遺物の実見を踏まえた上で、メンバーによる発表と議論を進めた。これらの研究会を通し、25年度は本研究の対象地域の中でもとくに沖縄との比較検討を発展させることができたといえよう。

2012年度

2012年度には、まず本研究の趣旨と基本的な比較の枠組み、ならびに日本を含む東アジア、東南アジア、オセアニアの海域を対象とした研究の現状や概容の確認を目的とする研究会を2回おこなう。第一回目は11月に開催を予定しており、本共同研究の目的と方向性、各メンバーの発表内容等を検討するほか、下記の表を踏まえ、対象とする各地域の研究事例を報告し、さらなる議論を行う計画である。第二回目は2013年2月前後に予定しており、参加メンバーによる事例報告を踏まえ、さらなる議論・検討を予定している。
基本的な方向性としては、まず各メンバーが、下記表の位置づけに従い、物質文化ないし資源利用の様式・分布からみた海域ネットワーク社会の生成・再編(e.g. たとえば「東アジアの物質文化・考古学的時間」)について事例報告または問題提起をおこない、参加者からコメントを受ける。そのうえで研究組織全体が海域ネットワーク社会の地域間の異同について共同討議を行う。主に検討を予定しているトピックは、物質文化については漁具(漁法)、船と船具、農具や加工具、調理具、副葬品、装飾品を巡る移動や海を越えての広がり、資源利用については海産資源、動物資源、森林資源といった自然資源の利用と海を越えての交換や交易などを検討している。

  東アジア 東南アジア オセアニア
物質文化 考古学的時間 考古学的時間 考古学的時間
民族誌的時間 民族誌的時間 民族誌的時間
資源利用
(自然資源の利用と交換・交易)
考古学的時間 考古学的時間 考古学的時間
民族誌的時間 民族誌的時間 民族誌的時間
【館内研究員】 印東道子、飯田卓
【館外研究員】 赤嶺淳、秋道智彌、片桐千亜紀、島袋綾野、鈴木佑記、田中和彦、長津一史、橋村修、山形眞理子、山口徹
研究会
2012年11月11日(日)13:00~18:30(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎「共同研究会の目的、方法、今後の計画、メンバー紹介」
長津一史「東南アジア海域研究が拓く可能性――海民論と境域論を手がかりに」
総合討論
2012年11月12日(月)10:00~12:30(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎「東南アジア海域からオセアニア海域世界の海民とネットワーク社会:先史時代における事例の検討」
総合討論
2013年1月29日(火)10:00~18:00(国立民族学博物館 第4演習室)
小野林太郎「第二回テーマの趣旨と発表者の紹介」
片桐千亜紀「沖縄諸島における更新世~完新世期の人類史と資源利用」
田中和彦「フィリピン諸島における更新世~完新世期の人類史と資源利用」
山口徹「オセアニアにおけるサンゴ礁の発達と人類の資源利用史」
総合討論
研究成果

本年度の主な研究成果としては、二回の共同研究会の開催があげられる。このうち1回目の共同研究会は2012年の11月11日から12日にかけて開催し、研究代表者である小野より本研究会の目的や方法、今後の計画について各メンバーに紹介した上でメンバー紹介を踏まえながら、各メンバーがどのようなテーマ、方法、時間・空間軸より本研究に貢献できるかを検討することができた。また1回目の共同研究会では、民族誌的な時間軸の事例としてメンバーの長津による研究事例の紹介と総合討論を行い、対する考古学的な時間軸の事例として小野による研究事例の紹介と総合討論を行った。
また2回目の共同研究会は2013年1月29日に開催し、この研究会では考古学的時間軸による各海域の資源利用に関する研究事例の紹介と総合討論を目的とし、沖縄海域に関する事例としてメンバーの片桐、フィリピン海域の事例として田中、オセアニア海域の事例として山口による研究発表を踏まえた上で、各海域における共通性や独自性について検討することができた。