国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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米国本土先住民の民族誌資料を用いるソースコミュニティとの協働関係構築に関する研究

研究期間:2013.10-2017.3 代表者 伊藤敦規

研究プロジェクト一覧

キーワード

米国先住民、民族誌資料、日本の博物館

目的

近年のITおよび交通網の整備により、世界の「秘境」は急激に消滅しつつある。現在ではかつての「秘境」に暮らす人々は、研究者に直接問い合わせをすることが可能で、民族学系の博物館にその民族集団に関連する資料情報の提供を求めたり、熟覧や適切な管理を依頼することもある。その意味で、現在、民族学系の博物館や研究者は、対象として設定するユーザー(来館者・資料等の利用者や研究成果の読者)を、来館圏居住者や学界だけではなく、資料を製作したソースコミュニティの人々にも拡大していく必要性に迫られており、それを実施するための協働のあり方を模索することが緊急の課題となっている。本研究の目的は、「調査者・被調査者(米国先住民)との関係」、「知的財産管理」、「所蔵先機関と研究者との協働」を柱として、博物館資料をきっかけとするソースコミュニティの人々と研究者や所蔵先機関との新たな関係性構築のあり方を模索することにある。そのために、米国本土先住民資料を所蔵する日本国内のいくつかの民族学系の博物館を事例として、資料情報のソースコミュニティの人々との共有のための協働に関する思想を、社会学、博物館学、歴史学、社会心理学、文化人類学などを専門とする研究者と所蔵先機関とで検討・考察する。

2016年度

最終年である平成28年度は、2回の研究会を開催する予定である。それぞれ、現代米国先住民をめぐる大学や博物館などアカデミアから発せられた協働に関する思想や実際の協働環境整備の状況を総合的に検討する。本年度は最終年度となるため、これまでの成果報告に関する出版計画の詳細を検討するほか、原稿の読み合わせも実施する予定である。

【館内研究員】 岸上伸啓
【館外研究員】 阿部珠理、大野あずさ、川浦佐知子、佐藤円、谷本和子、玉山ともよ、野口久美子、水谷裕佳、宮里孝生、山崎幸治
研究会

2015年度

3年度目も昨年度に引き続き、対象民族集団、時代、学問領域、トピックごとに分けて研究発表と討議を行なう予定である。また、個別発表と平行しながら、実際に博物館資料を検索したり熟覧したり、ソースコミュニティの人びとを招聘する事務的な手続に関するガイダンスも行う予定である。さらに、本研究会の取りまとめに向けた議論も行なうことも計画している。

【館内研究員】 岸上伸啓
【館外研究員】 阿部珠理、大野あずさ、川浦佐知子、佐藤円、谷本和子、玉山ともよ、野口久美子、水谷裕佳、宮里孝生、山崎幸治、山本真鳥
研究会
2015年10月25日(土)10:00~16:00(国立民族学博物館 大演習室)
玉山ともよ(国立民族学博物館)「現地社会運動への参画という関わり方(仮題)」
伊藤敦規(国立民族学博物館)「ソースコミュニティとの協働資料熟覧――民博と北アリゾナ博物館の事例紹介」
全員「ディスカッション」
2015年11月14日(土)11:00~16:00(国立民族学博物館 スタジオ)
伊藤敦規(国立民族学博物館)「米国先住民ホピによる民博所蔵民族誌資料熟覧の紹介」
伊藤敦規(国立民族学博物館)、ジェロ・ロマベンティマ、マール・ナモキ「ソースコミュニティとの協働資料熟覧」
全員「ディスカッション」
2016年2月11日(木・祝)10:00~18:00(国立民族学博物館 第4セミナー室)
民族誌資料情報収集に向けた取り組みの総合的検討
2016年2月12日(金)10:00~18:00(国立民族学博物館 第4セミナー室)
民族誌資料情報の共有化(データベース構築)に向けた取り組みの総合的検討
2016年2月27日(土)13:00~18:00(南山大学人類学博物館)
南山大学人類学博物館、展示場と収蔵庫の実見
南山大学人類学博物館における資料の知的財産管理に関する検討
2016年2月28日(日)10:00~13:00(南山大学人類学博物館)
共同研究の中間段階における総括
成果出版に向けた今後の研究計画

2014年度

本年度は4回の開催を計画している。予定している発表者と仮題は以下の通りである。
第一回
 1)山﨑幸治(アイヌ資料調査結果のソースコミュニティとの共有について)
 2)岸上伸啓(民博企画展(グリーンランド展)でのソースコミュニティや所蔵機関との協働関係)
 3)川浦佐知子(トライブ大学付属博物館による史跡化活動)
第二回
 1)大野あずさ(現代史研究におけるインタビュー調査と成果公開・現地還元)
 2)佐藤円(史資料の利用に関する倫理的問題)
 3)野口久美子(トライブ政府のために働くという関わり方)
第三回
 1)谷本和子(ナバホ博物館における被災資料・被災資料情報管理)
 2)水谷裕佳(米国先住民研究へのNAGPRAの影響)
 3)藤巻光浩(先住民アートショーの審査員としての関わり方)
第四回
 1)阿部珠理(協働の思想におけるヴァイン・デロリア・ジュニアの影響)
 2)宮里孝生(民族学博物館における知財問題)
 3)山本真鳥(博物館所蔵映像記録と利用をめぐる知財問題)
 4)玉山ともよ(現地社会運動への参画という関わり方)
 平成25(2013)年度は、3回の研究会を開催した。

【館内研究員】 岸上伸啓
【館外研究員】 阿部珠理、大野あずさ、川浦佐知子、佐藤円、谷本和子、玉山ともよ、野口久美子、藤巻光浩、水谷裕佳、宮里孝生、山崎幸治、山本真鳥
研究会
2014年5月31日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
山崎幸治(北海道大学)「アイヌ資料調査結果のソースコミュニティとの共有について」
岸上伸啓(国立民族学博物館)「民博企画展(「未知なる大地 グリーンランドの自然と文化」)でのソースコミュニティや所蔵機関との協働関係」
全員「ディスカッション」
2014年6月1日(日)10:00~13:00(国立民族学博物館 大演習室)
川浦佐知子(南山大学)「NAGPRAと先住民の記憶」
全員「ディスカッション」
2014年7月12日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
大野あずさ(大阪経済大学)「現代史研究におけるインタビュー調査と成果公開・現地還元」
佐藤円(大妻女子大学)「史資料の利用に関する倫理的問題」
全員「ディスカッション」
2014年7月13日(日)10:00~13:00(国立民族学博物館 大演習室)
野口久美子(同志社大学)「トライブ政府のために働くという関わり方」
全員「ディスカッション」
2014年10月4日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
谷本和子(関西外国語大学)「Association of Tribal Archives, Libraries, and Museumsの活動動向」(仮題)
水谷裕佳(上智大学)「先住民および博物館の立場から見たNAGPRAの限界」
全員「ディスカッション」
2015年1月17日(土)13:00~16:30(野外民族博物館 リトルワールド(愛知県犬山市))
宮里孝生(リトルワールド)「民族学博物館とソースコミュニティとの連携」
リトルワールド収蔵庫実見
2015年1月18日(日)10:00~16:30(野外民族博物館 リトルワールド(愛知県犬山市))
阿部珠理(立教大学)「協働の思想におけるヴァイン・デロリア・ジュニアの影響」
全員 ディスカッション
リトルワールド展示場実見

2013年度

初年度は、研究員のこれまでの研究を民族誌資料(物質文化)との関係で捉え直す各論発表を行い、主に米国本土先住民研究および各位の専門分野でのソースコミュニティの人々との関係性構築のあり方を把握することを主眼とする。また、研究員全てがこれまでに民族誌資料(物質文化)を専門として研究を行ってきたわけではないので、国立民族学博物館や野外民族博物館リトルワールドなどを会場としながら、実際の資料を確認しながら研究会を開催する。これらで重点的に検討するのは、現在約550が米国連邦政府によって承認されている先住民トライブ毎に異なる文化、歴史、政治、経済状況や生活環境などの相対化と、汎インディアン的な要素(連邦法、トライブ博物館の運営など)の把握である。その際必要な場合は、上記の課題に詳しい研究者を特別講師として招聘して、意見の交換を行う。

【館内研究員】 岸上伸啓
【館外研究員】 阿部珠理、大野あずさ、川浦佐知子、佐藤円、谷本和子、玉山ともよ、野口久美子、藤巻光浩、水谷裕佳、宮里孝生、山崎幸治、山本真鳥
研究会
2013年11月24日(日)13:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
伊藤敦規(国立民族学博物館)「民族誌資料を活用する研究者とソースコミュニティとの協働関係構築の可能性」
全員・これまでの研究活動の紹介と共同研究会への展望
全員・全体討論
2013年11月25日(月)10:00~15:00(国立民族学博物館 大演習室)
伊藤敦規(国立民族学博物館)「国立民族学博物館が所蔵する米国先住民資料について」
全員・展示場及び収蔵庫の実見
全員・日程調整・題目選定など
2014年1月28日(火)9:00~15:00(国立民族学博物館 収蔵庫)
Atsunori Ito (National Museum of Ethnology), Jim Enote (A:shiwi A:wan Museum and Heritage Center), Octavius Seowtewa (Jewelry Artist and Zuni Religious Leader), Robert Breunig (Museum of Northern Arizona), Koji Yamasaki (Hokkaido University, Center for Ainu and Indigenous Studies), and Ken'ichi Sudo (National Museum of Ethnology) "Collection Review on the Zuni origin objects at the Japan National Museum of Ethnology"
2014年1月28日(火)15:00~18:30(国立民族学博物館 大演習室)
全員 国際ワークショップ「伝統知、記憶、情報、イメージの再収集と共有――民族誌資料を用いた協働カタログ制作の課題と展望」の内容確認
2014年1月29日(水)13:00~19:30(国立民族学博物館 第4セミナー室)
国際ワークショップ「伝統知、記憶、情報、イメージの再収集と共有――民族誌資料を用いた協働カタログ制作の課題と展望」
Ken'ichi Sudo (National Museum of Ethnology) "Opening Remarks: Brief overview of Minpaku Collection and Foresight"
Atsunori Ito (National Museum of Ethnology) "Introduction"
Nobuhiro Kishigami (National Museum of Ethnology) "Info-forum Museum Project at the National Museum of Ethnology, Osaka, Japan"
Atsushi Nobayashi (National Museum of Ethnology) "Documenting Information Heritage on the Indigenous Taiwanese"
Jim Enote (A:shiwi A:wan Museum and Heritage Center) "Creating Collaborative Catalogs Project of AAMHC"
Octavius Seowtewa (Jewelry Artist and Zuni Religious Leader) and Jim Enote (A:shiwi A:wan Museum and Heritage Center) "Collection Reviews for the Source Community"
Robert Breunig (Museum of Northern Arizona) "MNA's Collection Management with Source Communities"
Shota Fukuoka (National Museum of Ethnology) "Information Museum as a Place of Formation and Sharing of the Ethnographic Knowledge"
Koji Yamasaki (Hokkaido University, Center for Ainu and Indigenous Studies) "Ainu Objects in Oversea Museums"
Atsunori Ito (National Museum of Ethnology) "Closing Remarks"
2014年2月10日(月)11:00~18:30(国立民族学博物館 大演習室)
伊藤敦規(国立民族学博物館)「ズニ博物館のこれまでの活動」
Jim Enote(ズニ博物館館長)「世界の民族学博物館を衛星化する――トライブ博物館による民族誌資料情報の一元管理の試み」
Jim Enote(ズニ博物館館長)「民博ビデオテーク『インディアン・ジュエリーの現在』講評」
全員「総合討論」
研究成果

2013年度には3回の研究会を開催した。第1回研究会では、本研究の趣旨と基本的な比較の枠組みや論点を確認した他に、展示場や収蔵庫を実見した。2回目と3回目の研究会では、国際化とより広い視野に基づく議論の展開を図った。
第2回共同研究は、民博の国際ワークショップ(『伝統知、記憶、情報、イメージの再収集と共有――民族誌資料を用いた協働カタログ制作の課題と展望』)と本共同研究会とを連動させて実施した。前者の開催経費で特別講師として3名を米国から招聘した。米国ニューメキシコ州のズニ博物館のジム・イノート館長、ズニの宗教指導者であるオクテイビアス・シオゥテワ氏、アリゾナ州フラッグスタッフ市の北アリゾナ博物館のロバート・ブルーニグ館長である。28日には民博が所蔵・保管するズニ資料を収蔵庫で熟覧し、山﨑幸治准教授(共同研究員・国際ワークショップ共催)、須藤健一民博館長、岸上伸啓副館長(共同研究員)、筆者らが、外国人招聘者とズニの宗教儀礼具の今後の取扱いなどについて意見を交わした。29日の口頭発表とディスカッションには、共同研究のメンバーだけではなく、関連プロジェクトとして民博の2つの機関研究も連名した。民博教員や館外の機関研究のメンバーらが60名以上集い、様々な角度から民族学博物館が所有する民族誌資料の協働管理に関する議論を行うことができた。
第3回研究会では、特別講師として上掲の日本滞在中のズニ博物館長を招聘し、ズニ博物館の活動などを発表してもらった。また、国立民族学博物館ビデオテーク番組『インディアン・ジュエリーの現在』(ビデオテーク番組番号1706)の上映と講評会を実施した。イノート氏によるビデオテークの講評として、本共同研究会の目的の一つである協働の思想の検討という観点からは、撮影の事前に被写体に対して行った趣旨説明や、肖像権等の取扱いについての文書での許諾取得といった点について高い評価が得られた。