国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

グローバル化時代のサブスタンスの社会的布置に関する比較研究

研究期間:2015.10-2019.3 代表者 松尾瑞穂

研究プロジェクト一覧

キーワード

サブスタンス、関係性、生社会性

目的

人類学においてサブスタンス(身体構成物質)に関する研究は、主に親族研究のなかで行われてきた。特に、生殖の観念の文化的多様性に関する民俗生殖理論や、生物学的生殖に限定されない人の関係性についての議論は、自然/文化、生物学的/社会的次元の二元論を前提とする親族(研究)を批判的に乗り越えようとするものである。ところが、今日、サブスタンスは、科学技術や医学の発展、グローバルな経済市場やトランスナショナルな移動の増加という現象の最前線で、資源として取引され、流通されるようになっており、従来の親族研究の射程を超えた新たな重要性を帯びるに至っている。遺伝子やゲノムといった新たなサブスタンスが、個や家族、集団のアイデンティティ形成や社会化のあり方に影響を及ぼすさまは、医療人類学を中心に生社会性(biosociality)という点から議論されている。
本研究の目的は、オセアニア、アジア、ヨーロッパにおけるサブスタンスの社会的布置に関する比較研究を通して、グローバル化時代のサブスタンスをめぐる社会動態の包括的な理解をはかるとともに、親族研究と医療人類学で二極化されているサブスタンス研究を架橋するアプローチを提示することである。

2017年度

3年目にあたる本年度は、前年度に引き続きメンバーによる研究報告を目的として1回の研究会を開催する。特にサブスタンスに関わる分野のうち、身体と医療という問題領域を設定し、関連する研究報告を行い、議論を深化させる。また、次年度以降のシンポジウムの開催や成果報告に向けての準備を進める。

【館内研究員】 宇田川妙子
【館外研究員】 澤田佳世、島薗洋介、白川千尋、新ヶ江章友、田所聖志、深川宏樹、深田淳太郎、洪賢秀、松岡悦子、松嶋健、山崎浩平
研究会
2017年5月13日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 第1演習室)
山崎浩平(松阪看護専門学校)「乳とちぎる――インド・グジャラート州におけるつながりの構築・維持・断絶」
新ヶ江章友(大阪市立大学)「日本のLGBTにおける血縁家族とオールタナティブな家族」
全体討論、今後の打ち合わせ
2017年5月14日(日)9:45~12:45(国立民族学博物館 第1演習室)
洪賢秀(東京大学)「韓国社会における遺伝子検査のイメージ」
松岡悦子(奈良女子大学)「東アジアの産後の習俗とsubstance」

2016年度

本研究会は、全体を通してテーマ(事例)と理論からサブスタンスにアプローチしつつ、それぞれの年度で取り組むべき課題を設定し、各個研究の比較を通して検討を行う。初年度は、基本的概念や理論の共有とすりあわせを行った。2年目にあたる本年度は、個々の研究を共同研究の問題意識から問い直し、全体としてサブスタンスに関する理解を深化させることを目指す。前半は親族やつながり(relatedness)に関する研究、後半は医療社会学、人類学に関する研究枠組みを用いながら、それぞれの研究を既存の理論に接合させつつ、さらなる議論の発展を行う。

【館内研究員】 宇田川妙子、深川宏樹
【館外研究員】 澤田佳世、島薗洋介、白川千尋、新ヶ江章友、田所聖志、深田淳太郎、洪賢秀、松岡悦子、松嶋健、山崎浩平
研究会
2016年6月4日(土)10:45~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
松尾瑞穂(国立民族学博物館)「文献解読 Janet Carsten 2001 "Substantivism, Antisubstantivism, and Anti-antisubstantivism"」
栗田博之(東京外国語大学)「「赤ちゃんはどこから来るの?」とのその後」
深川宏樹(国立民族学博物館)「血が否定されるとき-ニューギニア高地におけるサブスタンス紐帯とその切断-」(仮)
全員 ディスカッション
2016年12月17日(土)9:45~18:45(秋田大学 大学会館会議室)
松尾瑞穂(国立民族学博物館)「趣旨説明」「インドにおける血の隠喩―カーストと優生学の交差」
深田淳太郎(三重大学)「戦没者と生者のあいだ:遺骨(サブスタンス)による有/無縁化」
秋田大学鉱業博物館 展示解説、資料熟覧
田所聖志(秋田大学)「地下の油と食べ物の脂を結びつける語りについて:パプアニューギニアの天然ガス開発地での調査から」
宇田川妙子(国立民族学博物館)「サブスタンスのリアリティ」(仮)
ディスカッション、質疑応答
深川宏樹(国立民族学博物館)「文献解読 Mary Weismantel著Making Kin: Kinship Theory and Zumbagua Adoptions」
全員 今後の打ち合わせ

2015年度

本研究会は、3年半の期間に計12回の研究会を開催する予定である。本研究会は、全体を通してテーマ(事例)と理論からサブスタンスにアプローチしつつ、それぞれの年度で取り組むべき課題を設定し、各個研究の比較を通して検討を行う。
1年目(平成27年度)は、2回の研究会を開催する。初回は、研究代表者から全体の概要と基本方針を示し、研究の枠組みとアプローチの検討を行う。2回目は、サブスタンスに関する近年の主要研究に基づき、サブスタンス研究の動向と課題について討論し、メンバー間で一定の知の共有を図るとともに、方法論についての報告を行う。

【館内研究員】 宇田川妙子
【館外研究員】 澤田佳世、島薗洋介、白川千尋、新ヶ江章友、田所聖志、深田淳太郎、洪賢秀、松岡悦子、松嶋健、山崎浩平
研究会
2015年10月10日(土)11:00~17:00(国立民族学博物館 収蔵庫展示準備室)
護符の同定・記述作業
2015年10月11日(日)9:00~16:00(国立民族学博物館 収蔵庫展示準備室)
護符の同定・記述作業
2015年11月7日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 第4演習室)
松尾瑞穂(国立民族学博物館)「研究会の目的と今後の研究計画」
全員 各自研究紹介
松尾瑞穂(国立民族学博物館)「サブスタンス研究の動向」
全員 討論
2016年1月30日(日)13:30~19:00(国立民族学博物館 第4演習室)
島薗洋介(大阪大学)「文献解読 D.Schneider(1968)American Kinship
新ヶ江章友(大阪市立大学)「文献解題 A.Shimizu(1991) "On the Notion of Kinship"」
深田淳太郎(三重大学)「文献解題 清水昭俊(1989)「「血」の神秘」」
全員 「総合討論と今後の研究計画」