国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

もうひとつのドメスティケーション――家畜化と栽培化に関する人類学的研究

研究期間:2016.10-2019.3 代表者 卯田宗平

研究プロジェクト一覧

キーワード

ドメスティケーション、動植物、生業技術

目的

本研究の目的は、人類による家畜化や栽培化にかかわる新たな事例を比較検討することで、それらの現象を整理し、概念枠組みを明確にすることである。ここでいう新たな事例とは、野生性の保持や野生種の利用、反馴化というように、家畜動物特有の性質(非攻撃的性格や馴れやすさなど)を獲得させない動物飼育の事例や栽培化症候群(脱粒性の喪失や無毒化など)を起こさない植物栽培の事例のことである。本研究では、こうした事例を「もうひとつのドメスティケーション」という言葉で表現する。
具体的には、本研究では(1)「もうひとつ」の動植物利用にかかわる民族誌的事実の報告をおこない、(2)複数の事例を比較検討することで、動植物に対する人間の働きかけを類型化する。これにより、対象とする生き物の利用形態の普遍性と特異性を導きだすことができるであろう。そのうえで、(3)従来のドメスティケーションの議論を踏まえながら、本研究の独自性と概念枠組みを明確にする。なお、本研究ではまず生業活動のなかで「手段」として利用される動植物を取りあげる。これは、鵜飼や鷹狩、狩猟、魚毒漁などで利用される動植物には上述の事例が多くみられるからである。その後、ほかの動植物利用の事例に研究対象を拡大する。

2017年度

平成29年度は計4回の共同研究会を実施する予定である。今年度の共同研究では、まず各地の生業活動において「手段」として利用されている動植物に注目する。各研究会では、調査経験が豊富な研究者に動植物利用の実態やその歴史、生業暦、ほかの生業との関係、市場や流通とのかかわり、今後の動向などに関する民族誌的事例を発表してもらう予定である。具体的には、マレーシアにおけるコピルアク生産でのジャコウネコ利用やパプアニューギニアにおける狩猟犬の飼育技術、マレーシアにおける鳴き鳥飼育、魚毒漁で利用される植物利用などの事例である。共同研究会においてこうした事例の発表と共同討論を積み重ねることで、複数の事例間でみられる普遍性と、個々の事例のみにみられる固有性の検討をおこなう。「手段」としての動物利用の検討を進める本年度の共同研究では、「狩猟の対象」や「生業の対象」をおもに扱ってきた従来のドメスティケーションの議論にとらわれない「もうひとつ」の事例をまとめる点に意義がある。

【館内研究員】 池谷和信、野林厚志
【館外研究員】 梅崎昌裕、大久保実香、小谷真吾、小坂康之、齋藤暖生、篠原徹、須田一弘、竹川大介、那須浩郎、広田勲、藤村美穂、古澤拓郎、安岡宏和、山本宗立
研究会
2017年10月7日(土)14:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
卯田宗平(国立民族学博物館)「これまでの研究会の成果を踏まえて」
中島淳(福岡県保健環境研究所)「日本におけるドジョウ文化――その多様性と歴史、品種改良、食文化」
コメンテーター・竹川大介(北九州市立大学・生態人類学)
質疑応答
中田梓音(国立民族学博物館)「接客者と客とのバランス――常連化に向けた接客言語ストラテジーの事例から考える」
コメンテーター・須田一弘(北海学園大学・文化人類学)
質疑応答
2017年10月8日(日)9:30~12:30(国立民族学博物館 大演習室)
今井友樹(工房ギャレット・映画監督)「映画の説明・岐阜県のカスミ網猟を描いた長編ドキュメンタリー映画「鳥の道を越えて」鑑賞(90分)・鳥と人間とのかかわりをめぐる議論(オトリのツグミの飼育方法や鳥をめぐる食文化など)」
コメンテーター・亀田佳代子(滋賀県立琵琶湖博物館・鳥類生態学)
質疑応答
今後の予定確認
2017年12月16日(土)14:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
卯田宗平(国立民族学博物館)「これまでの研究会の成果を踏まえて」
須田一弘氏(北海学園大学・生態人類学)「野性を飼い馴らすことの難しさ――インドネシア西ジャワ州におけるコピルアク生産の事例から」
コメンテーター:梅崎昌裕氏(東京大学・人類生態学)
東城義則氏(国立民族学博物館)「都市公園を中心とした動物保護活動の仕組みとその系譜――奈良公園におけるシカを事例に」
2017年12月17日(日)9:30~12:30(国立民族学博物館 大演習室)
井村博宣氏(日本大学文理学部教授・地理学)「『半天然アユ』養殖の始まり(仮題)」
コメンテーター:斎藤暖生氏(東京大学・植物生態学)

2016年度

平成28年度は合計2回の研究会を実施する。まず、平成28年12月に第1回の研究会を実施し、代表者が本研究の趣旨と今後のプランを説明する。そのうえで、全員が問題意識と概念を共有する。その後、平成29年1月の第2回目の研究会をもって本格的な研究と議論を開始する。

【館内研究員】 池谷和信、野林厚志
【館外研究員】 梅崎昌裕、小谷真吾、小坂康之、齋藤暖生、篠原徹、須田一弘、竹川大介、那須浩郎、広田勲、藤村美穂、古澤拓郎、安岡宏和、山本宗立
研究会
2016年12月17日(土)14:00~19:00 (国立民族学博物館 大演習室)
卯田宗平(国立民族学博物館)「共同研究会の趣旨説明と問題意識の共有」
共同研究会メンバーの自己紹介と研究展望
須田一弘(北海学園大学)「野生のジャコウネコ利用について」
藤村美穂(佐賀大学)「宮崎県の山村における狩猟犬の飼育について」
竹川大介(北九州市立大学)「山師がもつ自然に対する考え方や態度について」
小谷真吾(千葉大学)「パプアニューギニアにおける狩猟犬と人とのかかわりについて」
梅崎昌裕(東京大学)「腸内細菌とドメスティケーションについて」
安岡宏和(京都大学)「ピグミーの農耕化と野生ヤムの利用について」
小坂康之(京都大学)「外来植物のドメスティケーションについて」
野林厚志(国立民族学博物館)「人類社会における排泄物の利用について」
山本宗立(鹿児島大学)「鹿児島の花岡胡椒の栽培化と遺伝的な変化について」
山本紀夫(国立民族学博物館)「奇形に対する考え方と多様な品種保全とのかかわりについて」
斎藤暖生(東京大学)「ハビタットの改変について」
篠原徹(滋賀県立琵琶湖博物館)「カブの品種保全について」
質疑応答
相馬拓也(早稲田大学)「イヌワシ――モンゴル西部アルタイ山脈における鷹司とイヌワシとのかかわり」
質疑応答
2017年1月28日(土)14:00~19:00(国立民族学博物館 大演習室)
卯田宗平(国立民族学博物館)「前回の共同研究会での指摘を踏まえて」
広田勲(岐阜大学)「自己紹介と展望」
那須浩郎(総合研究大学院大学)「植物考古学からの視点」
質疑応答
竹川大介(北九州市立大学)・南香菜子「人はどのように鷹を理解するのか――鷹狩の調教における「慣れ」と「狩り」のプロセス」
質疑応答
卯田宗平(国立民族学博物館)「ウミウ――「手段」としての動物と鵜匠とのかかわり」
質疑応答