国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ネオリベラリズムのモラリティ

研究期間:2017.10-2021.3 代表者 田沼幸子

研究プロジェクト一覧

キーワード

ネオリベラリズム、モラリティ、グローバリズム

目的

本研究の目的は、ネオリベラリズムの現れ方の多様性、特にモラリティの意味付けと実践を現地の文脈や当事者の視点から解き明かすことによって、今日の世界における生を民族誌的現実に即して知らしめ、具体的な課題を明らかにしつつ、ありうべき社会の可能性を探るための議論に貢献することにある。
ネオリベラリズムは、その言葉を知ろうと知るまいと、関心があろうとなかろうと、私たちの生活を覆いつくしつつある。しかしその現れ方は、場や受け取る側の歴史や政治経済的状況、及び文化によって様々である。本共同研究では、世界各地で長期フィールドワークを行ってきた30~40代の研究者たちが、それぞれの地域と対象の人々の詳細な事例に関する情報と知見を交換し、ネオリベラリズムの世界におけるモラリティを具体的な事例を通じて理解することを試みる。

2017年度

ギアツが「反=反相対主義」において述べたように、人類学者がある視点や立場をとるのは、主義主張ありきではなく、調査で得た事実からである。同様に、長期調査を元に歴史的・人類学的に当該地や人々を研究してきた本研究会の研究者は、民族誌的事実から、ネオリベラリズムのモラリティについて報告する。
参考となるのは、善悪二元論の枠組みが日常的な会話で用いられ、それを鑑みつつも、古文書や公的な歴史、インタビューを元に一枚岩ではない人々の世界観を再構成したグレーバーの“Lost People”である。植民地化前から現地の貴族階級による他集団への奴隷化が行われていた当該地では、旧貴族を「悪者」とする言説が日常で聞かれる。しかし、聞き取りを通じて、誰が旧貴族か否かさえ曖昧なことが明らかになっていく。
本研究会のメンバーも同様に複雑な事例を扱ってきた。各自の発表を通じて、ネオリベラリズムがフィールドの人々の中で共感や反発を誘発しながらも新たなモラリティを形成しているという枠組みの妥当性を検討したい。研究発表の会合の日程は以下である。
平成29年度 初回 全体会合 研究代表者が趣旨および概要の説明を行い、メンバー全員が研究会の基本方針を確認する。その際、ギアツやグレーバーの民族誌の批判的検討を行い、ネオリベラリズムの世界におけるモラリティの分析枠組みについて議論を行う。

【館内研究員】 相島葉月、八木百合子
【館外研究員】 伊東未来、猪瀬浩平、酒井朋子、佐川徹、佐久間寛、佐々木祐、中川理、深澤晴奈、宮本万里
研究会