社会・文化人類学における中国研究の理論的定位――12のテーマをめぐる再検討と再評価
キーワード
中国研究、人類学理論、学説史
目的
中国社会を対象とする人類学的研究は20世紀前半より本格的にはじまり、日本、欧米、中国国内の研究者によりさまざまな研究が展開されてきた。早期には「未開」社会とは異なる複合社会の研究を推進する舞台として期待され、1960年代になるとアフリカ研究との比較の対象として民族誌が著された。ところが、その後の中国研究は「独自」の路線で議論を進めるようになったため、同じ東アジア研究ですら対話が難しくなり、人類学において半ば「孤立」した立ち位置に置かれるようになっている。だが、中国をめぐる人類学的研究を振り返ると、国家‐社会関係論、ポリティカル・エコノミー論、個‐全体論、存在論など、現代人類学の先駆けともいえる議論が早期から展開されてきたことに気づかされる。本研究は、中国研究で多くの蓄積がなされてきた12のテーマ(親族、ジェンダー、コミュニティ、エスニシティ、宗教、風水、生態、食、芸術、観光、メディア、都市)をとりあげ、その理論史を整理することで、人類学一般の理論と対話をなすことを目的とする。
2019年度
本研究は、2年半の計画でおこなう。12のテーマを担当するのは、各々のテーマを専門とする人類学者であり、それぞれ次の2点に留意した研究発表をおこなう。第一に、各テーマにおける主要な議論・論争を軸とし、日本語・中国語・英語で刊行された文献の学説史をまとめること、第二に、その学説史を中国研究以外の関連文献と比較・検討し、各時代に応じた議論の意義と重要性を発見すること、である。後者はとりわけ1990年代以降の人類学の動向を意識し、複合社会研究としての中国研究でどのような理論・視点・方法論が提示されてきたのかを議論する。さらに、各々のテーマを個別化することなく全体的に捉えるため、中国の人類学的研究をめぐる通史、及び全てのテーマにかかわる総括の発表を入れる。これらを考慮して、研究会は毎回2日連続(実質的に年4回)の開催とし、以下のスケジュールで進める。
2019年度:[第1回]趣旨説明と全体の指針の提示(河合)、中国人類学の歩みと背景(中生)、都市・景観人類学(河合)。
【館内研究員】 | 韓敏、奈良雅史 |
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【館外研究員】 | 阿部朋恒、稲澤努、川口幸大、川瀬由高、小林宏至、櫻田涼子、田中孝枝、中生勝美、丹羽朋子、藤野陽平、堀江未央、横田浩一 |
研究会
- 2019年11月30日(土)14:00~18:00(国立民族学博物館 第1演習室)
- 河合洋尚(国立民族学博物館)「趣旨説明」
- 参加者全員「共同研究員自己紹介・研究計画」
- 2019年12月1日(日)10:00~15:00(国立民族学博物館 第1演習室)
- 中生勝美(桜美林大学)「中国の人類学展望――学史と現状から」
- 河合洋尚(国立民族学博物館)「中国都市の人類学――都市性と都市景観をめぐる研究動向」