国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

生物・文化的多様性の歴史生態学―稀少動物・稀少植物の利用と保護を中心に―

テーマ区分:環境 1 環境問題と生物多様性

代表者:池谷和信岸上伸啓

研究期間:2016.7-2019.3

 

プロジェクトの目的・内容

現代文明と環境とのかかわりを考える際に、稀少生物の保護や生物多様性の維持は、地球環境問題のなかの中心的な課題であるといわれる。今回のプロジェクトでは、先史から現在までの人間・環境関係の歴史生態学的アプローチを軸にして、稀少動物・稀少植物の利用、絶滅、保護の変遷とそこでの問題を把握することを通して現代文明と環境との関係を考えることが目的である。また、本研究は、寒冷地(極北)、島嶼・海洋(オセアニア)、砂漠(アフリカ)、森林(アマゾニア、熱帯アジア、日本)、内水面(中国)などの世界各地の環境特性へのヒューマンインパクトの歴史を把握することから、地球、大陸、地域レベルでの動物・植物と人間社会との相互関係について考える試みでもある。
なお、近年の歴史生態学の研究動向は、以下の文献を参照されたい。このなかで日本の事例や日本人による研究成果はまったく引用されていない。しかしながら、今回のプロジェクトによって民博の研究を発信し、国際的な研究の中に位置づけることで、世界のなかの民博の地位を向上させることができると考える。

William Balee 2006 The Research Program of Historical Ecology. Annual Review of Anthropology. Vol. 35: 75-98.

 

期待される成果

稀少生物の保護や生物多様性の維持については、生態学を中心にして法学、政治学、経済学、地理学、社会学など多様な学問分野から研究が蓄積されてきた。一方で、歴史生態学の視角は、近年の環境人類学において盛んになってきた研究領域である。
本プロジェクトでは、今回のテーマに関して最前線の研究者を集めて国際シンポジウムを開催し、その成果を英文論集として刊行することから、英語圏の環境人類学の研究に貢献するのみならず、生物多様性の問題を広く学際的に論じる際の基本文献になることが期待される。とくに、これまで日本語で数多く出版されてきた民博研究者を中心とする生態史研究(世界の焼畑や牧畜などの生業の生態史、ニホンオオカミやニホンカワウソの絶滅過程とその要因)も視野に入れることで、この分野の研究のなかでの国際発信に役に立つと考えている。

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