国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ネットワーク型博物館学の創成(2015-2019)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(A) 代表者 須藤健一

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、世界の民族学関係の博物館が所蔵する資料を、その資料のもともとの製作者や所有者、すなわちソース・コミュニティの人びとと共有化し、いわば人類共有の財産として活用するため手法とシステムを考究・開発し、そのシステムの実際の運用と理論化を進めることで、ネットワーク型の新たな博物館学を創成しようとするものである。
この目的の達成のため、本研究計画では、国立民族学博物館をひとつのハブ(拠点)として、民族誌資料を大量に収蔵する世界の主要な博物館(以下、拠点博物館とよぶ)との間で資料情報共有のためのネットワークを構築するとともに、それら拠点博物館が所蔵する資料のソ-ス・コミュニティならびにコミュニティ博物館と、資料の共同管理と活用に向けた規範・手法とシステムを考究・開発する。さらにそのようにして開発された手法・システムの理論化を進めることで、ネットワーク型の新たな博物館学を創成する。

活動内容

2017年度実施計画

第3年次にあたる平成29年度には、研究分担者・連携研究者が博物館学関係の国際会議・国際学会大会に参加することを通じて、世界の諸博物館とのネットワーク構築を進めるとともに、各研究分担者、連携研究者が、拠点博物館の研究者と連携をとりつつ、担当する対象コミュニティのコミュニティ博物館の研究者との間で共同研究を実施する。活動の具体的な内容は、以下の通りである。
・研究分担者・吉田憲司と園田直子らがICOM(国際博物館会議)デンマーク大会およびウィーンの世界文化博物館で開催されるASEMUS(アジア・ヨーロッパ博物館ネットワーク)理事会に参加し、関係博物館・研究機関とのネットワーク構築を図る。
・拠点博物館に関しては、とくにカナダ、ブリティシュ・コロンビア大学人類学博物館との間で、ソース・コミュニティとの資料情報の共創・共有化システム開発に関する共同プロジェクトを推進する。また、これまでに関係を構築した欧米の各拠点博物館との間で、資料情報共有化に向けた環境整備を進める。
・一方、民族誌資料のソース・コミュニティとしては、カナダ北西海岸先住民(担当・岸上伸啓)、南部アフリカ・バントゥ系諸民族(担当・吉田憲司、亀井哲也)、オ―ストラリア先住民(担当・久保正敏)、オセアニア島嶼部諸集団(担当・須藤健一、林勲男)、マレーシア・オランアスリ(担当・連携研究者・信田敏宏)、東ティモール・パプア系諸集団(担当・阿部健一)、台湾原住民(担当・野林厚志)、日本・アイヌ民族(担当・佐々木史郎)を対象に、当該コミュニティの博物館の資料所蔵・保管状況を把握するとともに、その充実に向けた、コミュニティの人びとの参加プログラムの策定を進める。
・国内では、拠点博物館とコミュニティ博物館を結ぶ情報共有システムの開発を進める。

2016年度活動報告

(1)博物館とのネットワーク化と共同研究 須藤健一は、2016年6月に現代アボリジニ・アートの企画展開催を通じて、オーストラリア国立博物館とネットワークの構築を行なった。吉田憲司と園田直子は同年7月、ICOM(国際博物館会議)ミラノ大会に、また、吉田は同年5月にIUAS(国際人類学・民族学科学連合)のドブロニク大会に参加し、各国の博物館とネットワーク形成について協議した。岸上伸啓は同年8月と9月にカナダのカナダ歴史博物館など4館およびイギリスの大英博物館等2館と先住民展示に関するネットワーク化を行った。また、カナダUBC人類学博物館とデータベース共有のための共同研究を開始した。日高真吾(協力者)は、同年9月に米国西海岸にあるアジア美術博物館など4館でネットワーク化の協議を行った。阿部健一は東ティモール国立博物館とネットワーク化を行った。
(2)ソースコミュニティとのネットワーク化と共同研究 佐々木史郎と齋藤玲子(協力者)は、アイヌ文化の継承者らとともにアイヌ文化展示およびデータベース構築について共同研究を行った。信田敏宏(協力者)は、2016年9月にマレーシアの国立博物館およびオラン・アスリ関連の博物館において協力のあり方について議論した。亀井哲也は、同年8月~9月に南アフリカ共和国でンデベレ人社会の現地調査を行うとともに、ウィットウォータスランド大学美術館でネットワーク化について協議した。野林厚志は、同年12月に台湾の台北市と台東県でソースコミュニティと博物館との間の学術資料の情報共有化の現状と仕組みについて調査を行うとともに、ネットワーク構築を行なった。
(3)情報共有システムの開発 久保正敏は、博物館所蔵アーカイブズ資料の情報化のために、簡易なデータベース・システムを作成し、それを共有しながらデータ付加を行えるシステムを構築するための稼働実験を行った。

2015年度活動報告

本研究は、世界の博物館、とくに民族学博物館が所蔵する資料を、その資料のもともとの製作者や所有者、すなわちソース・コミュニティの人びとと共有化し、いわば人類共有の財産として活用するための手法とシステムを考究・開発して、そのシステムの実際の運用と理論化を進めることで、ネットワーク型の新たな博物館学を創成しようとするものである。
計画初年度にあたる平成27年度には、拠点博物館となる世界の主要博物館のうち、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館、英国の大英博物館、オックスフォード大学ピットリヴァーズ博物館、イーストアングリア大学セインズベリー芸術センター、ニュージーランド・テパパトンガレワ博物館、南アフリカ・ウィットウォ-ターズランド大学美術館、ザンビア・リヴィングストン博物館、台湾・順益台湾原住民博物館、国内では北海道大学アイヌ・先住民研究センターとのあいだで共同研究を実施し、各博物館の所蔵品管理の状況を精査したうえで、資料とその情報の共有化に向けたシステム作りをおこなった。
また、民族誌資料のソース・コミュニティとしては、米国・ホピ、カナダ・クワクワカワクゥ、南アフリカ・ンデベレ、ニュージーランド・マオリ、台湾・各原住民および日本国内のアイヌの各コミュニティにおいて、コミュニティ博物館の資料所蔵・保管状況、拠点博物館とコミュニティ博物館の関係に関する予備調査を実施し、所蔵資料の情報の充実のために必要な作業を特定するとともに、コミュニティの人びとの参加プログラムの策定要件の抽出をおこなった。